今回のプログラムについて③

「ドゥシークとの出会い」

今回のプログラムの中で、ほとんどの人が知らない、または認知していない作曲家がドゥシークだと思います。
しかし実際は、ピアノをある程度学んだ人なら目にしたことがあるはずなのです。
チェコ語ではヤン・ラディスラフ・ドゥシークという名前ですが、日本ではドイツ語のヨハン・ラディスラウス・ドゥセックという呼び名の方が広く定着しているようです。
ドゥセックといえば、ソナチネアルバムに作品が載っている作曲家の一人です。
なので、ソナチネアルバムまでピアノを進めた方なら見たことがあるはずです。
ソナチネアルバムをお持ちの方は今すぐ楽譜を確認してみましょう。

さて、僕もそのソナチネアルバムで初めてドゥシークの曲を弾いたのですが、小学生の頃で、どれが誰の曲なのかなどということは全く気にしていなかったので、それがドゥシークの曲だと気付くのは大人になってからです。
プラハ留学中に、リサイタルプログラムを作るにあたってチェコの作品だけで組もうと思った時に、古典派の作曲家はいないかと探した結果、見つけた作曲家の一人がドゥシークでした。
結局プラハのリサイタルでは、ドゥシークのソナタ作品61「悲歌」を演奏しました。
ただ、何か不思議な魅力があり、またプラハで師事した先生がとても熱心に指導してくださったので、ドゥシークの作風や演奏様式を勉強することができました。

ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンのいずれとも異なる作風で、作品の質はこの三者に引けをとらないのに、歴史に埋もれてしまっているドゥシーク。
それを知ることができたのは、自分にとって大きな収穫でした。
チェコ音楽といえば、スメタナやドヴォジャークをはじめとする、いわゆる「国民楽派」が知られていて、確かにチェコの民族的特徴を最もよく表している音楽と言えます。
ただ、音楽という分野においては、チェコという国(地域)は優れた人材を多く輩出していて、音楽史上とても影響力があったのです。
それを気付かせてくれたのがドゥシークの作品であり、一つのリサイタルプログラムをチェコの作品だけで構成することへの可能性を広げてくれたのです。

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