今回のプログラムについて①

「ハイドンとの出会い」

ピアノのレパートリーとしてよくとりあげられる古典派の作曲家といえば、モーツァルトやベートーヴェンが大多数を占めていて、それに並んでハイドンの名前は知られているものの、「ハイドンといえばこのピアノ曲!」というのはなかなか思い浮かばないのではないでしょうか。
僕にとっては、前述の3人の作曲家の中ではハイドンの作品が一番魅力を感じます。
しかし、よく知られているハイドンのピアノ曲って何だろう?と考えても、ソナチネアルバムに載っている曲くらいしか挙げられません。あとEs-durの2曲のソナタですかね。
それでも、モーツァルトやベートーヴェンのように、一般の聴衆でも知っている代表作は、ハイドンにはあまりにも少ないです。

実は、初めてのリサイタルの時に、ハイドンのソナタを弾きました。
その時は、リサイタル全体のバランスを取るために、比較的軽めの古典派の作品を入れたくて選んだので、特にハイドンを入れたかったわけではありませんでした。
学生時代もハイドンは弾いたことがなかったくらい、縁遠い作曲家でした。
しかし、実際に勉強していくうちに、その時代の様式や演奏の習慣を知ることになり、それがハイドンに魅力を見出すきっかけになりました。
楽譜から何をどう読み取るか、実際にどう演奏するか、それをレッスンしてくださった先生には大大大感謝です。

そして、そういう音楽なのだと知ると、海外の著名なピアニストでも演奏スタイルがそれぞれ異なり、当時の様式を守る人と、より現代向きの演奏をする人とに、大きく分かれることが分かります。
そこで僕の心を射止めたピアニストは、グリゴリー・ソコロフでした。
もともと他のレパートリーを聴いて知っていたし、すごく素敵で好感の持てる演奏をする印象でしたが、ハイドンを聴いた時に「これだ!」と思いました。
これまで好きなピアニストがいなかった僕にとっては、衝撃でした。
ソコロフの弾くハイドンは、おそらく誰が聴いても素敵だと感じると思うのですが、ハイドンの様式について知ったうえで聴くと、もうとんでもないです。やばいです。

もちろん、ハイドンに限らず、モーツァルトやベートーヴェンにもそれぞれの演奏の様式はありますが、自分にとってそれまでになかったアプローチのしかたを知ったきっかけがハイドンだったのです。
何よりも、留学する前にこれを知れたのは本当に良かったです。
留学中の勉強でもとても役に立ちました。

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