今回のプログラムについて⑦

「リストとの出会い」

両親の影響で、家でクラシック音楽を聴くことは元々多かったので、リストの音楽も馴染みがありました。
やはり「ラ・カンパネラ」は小さい頃から聴いていて、当時無謀にも弾きたいと思って、楽譜を買ってもらいました。
すぐに無理だと分かって、弾くのは諦めたのですが…

僕は音大に進学するのを決めたのが高校3年生になる直前くらいだったので、それまでピアノは趣味として習っていました。
ただ、縁あって小学5年生の時から武蔵野音楽大学の附属音楽教室に通い始めたため、趣味といえどしっかり音楽教育を受けていたと思います。
初めてちゃんとリストを演奏したのは、音楽教室在籍中の中学生の頃でした。
「2つの演奏会用練習曲」の「森のざわめき」から始まり、その後すぐに「小人の踊り」も弾きました。
初めて触れる作品にワクワクしたのと、それまで自分が弾いていた曲との難易度の差に驚いたのと、入り混じった気持ちでした。
結果的に何とか無事にステージで演奏できたことで、自信になったことは今でも覚えています。

大学に進学してから、またリストを弾く機会が巡ってきました。
大学3年生の前期試験で「超絶技巧練習曲」から1、2、10番を演奏したのですが、この選曲になった経緯があります。
その年度に入ってから学内のオーディションの準備に没頭していて、試験のことを後回しにしていたら、6月に入ってもまだ曲が決まっていないし、候補曲もない状態になってしまったのです。
先生に相談して、いろいろ候補を選んでもらって、最終的に出てきたのが前述の3曲でした。
僕は、本番に向けて時間をかけて準備するタイプなので、その時の試験はかなり不安でした。
初めから準備期間がいつもより短いと分かっていたので、曲が決まった瞬間から一気に譜読みして、なるべく早く形にしました。
その中で、参考にと先生が勧めてくださった音源が、ベレゾフスキーとシフラの演奏でした。
好みは分かれると思いますが、「リストとはこう弾くのだ!」と言わんばかりの演奏で、当時の僕は2人の演奏からだいぶ影響を受けました。
何はともあれ、とりあえず試験を乗り切ったのでした。
この年は他にもたくさんの事があり忙しかったのですが、「超絶技巧練習曲」を勉強したことで自分の演奏は変わりました。

そこから定期的にリストを好きになるタイミングが来ますが、実際に演奏するチャンスは長いこと巡ってきませんでした。
ようやく2016年になって、リサイタルのプログラムで取り上げたのですが、この時はいわゆる名曲を揃えたので、組み合わせをあまり意識せずに選曲しました。
実はそのリサイタルは、自信喪失した時期を経て演奏活動に復帰するためのものだったので、音楽への情熱を思い出させるような作品を集めたのです。

そして、今度のリサイタルでは「伝説」を演奏することにしました。
ずっと演奏したいと思っていた曲だったし、今回のプログラムに上手く組み合わせられると思ったからです。
思えば、何かの節目の度にリストを弾いてきたようです。
今回は長野デビューという節目、ということで…

今後もリストの作品がプログラムに登場することはあると思います。
弾きたい曲はまだまだ尽きません。

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