今回のプログラムについて④

「ドゥシークとベートーヴェン、他」

ドゥシークについてはまだ知らない部分が多く、今も勉強中という感じですが、もっと演奏される機会が増えても良いのに、と思っています。
技術的にはそこそこ難しいですが、ベートーヴェンのソナタよりは気軽に弾ける印象です。

さて、ベートーヴェンとドゥシークの共通点について書いてみましょう。

2人は同時代を生きて(厳密にはベートーヴェンの方が10歳若い)、それはちょうど古典派からロマン派へ移っていく時期でした。
感情的、感覚的な表現を音楽にさらに求めていきました。
初期の作品と後期の作品の違いは、つまるところこの点であり、ベートーヴェンにもドゥシークにも言えることです。

また、ピアノソナタを生涯にわたって書き続けているという点も、2人ともピアノという楽器、ソナタというジャンルの可能性を突き詰めていったことを示していると思います。

そして、ベートーヴェンのピアノソナタの変遷と、ピアノという楽器の発達が深く関係していることは、よく取りあげられることですが、実はドゥシークもそうでした。
ドゥシークはピアノ製作者であるジョン・ブロードウッドと親交がありました。
彼は、ドゥシークの作品を演奏するのに必要な音域や音響の拡大を実現しました。
ベートーヴェンほどではないですが、音楽史上のピアノの発達にドゥシークも一役買っていたかもしれません。

そんなドゥシークのピアノソナタですが、プラハのリサイタルで弾いた作品61「悲歌」は、かなりロマン派寄りの作風で、個人的にはメンデルスゾーンやシューマンのような感じがします。
今回のリサイタルで弾く作品77は、古典派寄りの作風ですが、内声の動きが複雑だったり、旋律が高音の声部以外に登場したりと、構造をよく把握しないとただの音の塊になってしまう、そんな作品です。
2曲ともプラハ留学中に勉強しましたが、作品77のソナタはステージで演奏する機会がないまま、今に至ります。
なので、ようやくプログラムに組み込めて、ステージで演奏できるというのが感慨深いです。

ドゥシークの研究はそこまで進んでいないので、作品や楽譜について分からない部分もまだあります。
今後演奏する人が増えていけば、研究の需要が増えて、よりいろいろな事が明らかになるでしょう。
逆に、研究が進んでいろいろな事が分かると、演奏する人が増えるかもしれません。

何はともあれ、ドゥシークの作品を一度聴いてみて欲しいです。
きっと魅力を知ってもらえるはずです。

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