今回のプログラムについて②

「ハイドンの“ピアノ”ソナタについて」

厳密には、ハイドンのピアノソナタは、ピアノのために書かれたのではありません。
今回のチラシに「ソナタ」としか書かなかったのは、それが理由です。
実際には、作曲年代によってチェンバロのためであったり、フォルテピアノのためであったりします。
自分のこだわりとして、ハイドンの演奏にあたっては当時の様式を大事にしたいので、現代の鍵盤楽器の象徴のような「ピアノ」という言葉を避けたかったのです。
また、ハイドンの作品の場合、ホーボーケン番号によってジャンルごとに作品が整理されているため、Hob.XVIは鍵盤楽器のソナタだと判別できるので、「ピアノ」と書かなくても良いと判断しました。
もちろん、ピアノリサイタルで演奏するのですから、十中八九ピアノソナタですが。

さて、今回のリサイタルでは、Hob.XVI:32のソナタを演奏するのですが、この曲に魅力を感じたきっかけは、以前の投稿にも登場したグリゴリー・ソコロフの演奏でした。
音色やアーティキュレーションが絶妙にコントロールされた演奏で、派手さは無くても聴く人をぐっと引き込む力がありました。
このソナタは規模が小さめの作品で、繰り返し無しで演奏するとあっという間に終わる印象です。
繰り返しについては、「楽譜に書いてあるから」というだけの理由で行うのが嫌で、過去のリサイタルでハイドンを取り上げた時は繰り返し無しで演奏しました。
繰り返しをするなら、ある程度の即興性を盛り込むのが当時の様式なのではないかと思うのです。
そして、今回初めて繰り返し有りで演奏することに決めました。
繰り返しの後どんな変化をするのか、注目していただきたいです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?