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【ドラマ】男性優位社会よオサラバ〜職場のあらゆるハラスメントへのアンチテーゼ〜

女性への差別発言が問題になっています。元・内閣総理大臣の森喜朗さん。確かに前時代的な考え方のまま年齢を重ねると、なかなか考え方もアップデートできないと思うんです。

そのような人が自国のトップを張っていた現実と国際的なやりとりも少なくないであろう東京オリンピック・パラリンピック組織委員会会長を務めているのには危惧してしまうわけですが、今回はそんな差別主義的な考え方に対するアンチテーゼな作品を紹介します。

タイトルは『ザ・モーニング・ショー』です。Apple TV+のオリジナル製作ドラマで、鑑賞できる環境は限られているんですが、近年観たドラマでも特に衝撃を受け、どハマりして一気見した作品。現状Apple TV+は作品数が少ないんですが、今後かなり伸びるコンテンツになるのではないかと予想しています。

他の動画サブスクとの比較をまとめたnoteも執筆しているので、合わせてご覧ください!

①『ザ・モーニング・ショー』予告動画とあらすじをチェック!

まずは物語の世界観を感じていただくために、予告動画とあらすじを紹介します!

朝の情報番組『ザ・モーニングショー』のニュースキャスター、アレックス(ジェニファー・アニストン)は、15年共にキャスターを務めてきたミッチ・ケスラー(スティーヴ・カレル)が性的暴行の疑いにより解雇されたことを視聴者に向けて配信しなければならない立場に置かれる。そして友人(ミッチ)にかけられた疑惑を検証し、自身の契約再交渉のため局と格闘することに――。ミッチの後任に抜擢されるリース・ウィザースプーン演じるブラッドリーとの関係はいかに。朝のニュース番組の舞台裏にある情け容赦ない世界をコメディタッチに描く。職場における女性と男性、女性と女性の間で繰り広げられるパワーの競り合いがテーマ。(海外ドラマNAVIより引用)

爽やかな朝の情報番組を舞台にしていながら、やや不穏な空気感。あらすじにもあるとおり、スティーヴ・カレル演じる人気キャスターが性的暴行を理由に解雇されてしまうというスタートを切るのです。

カレル目的で鑑賞を始めた私はいきなり衝撃を受けました。「カレルいないじゃん!」と。もちろん物語にはガッツリ絡んできますので、カレルホリックの方々は落胆せずとも大丈夫です。コメディ俳優としての印象が強いカレルですが、今回は映画『フォックスキャッチャー』のジョン・デュポンのような闇を抱えた人物を明るく演じています。一応、『フォックスキャッチャー』の予告動画を貼り付けておきますね。

特に面白い!と感嘆したのは、あらすじの締めの一文「職場における女性と男性、女性と女性の間で繰り広げられるパワーの競り合いがテーマ」という部分。

これが実にリアルに描かれており、企業などの組織で働く人であれば、身に覚えのある共感ポイントがたまらなく多いです。

ハラスメントに関わる要素が散りばめられており、強く描かれているのはセクハラやパワハラ問題。「これはセクハラ?」「これはパワハラに当たるよねぇ」みたいに絶妙な線引き具合が身近でも起こっていそうという想像力をかき立てられます。

②魅力的なキャラクターと豪華俳優陣に魅了される!

映画やドラマで欠かせないのは魅力的で個性的なキャラクター。物語に引き込まれる緻密な脚本はもちろん大事ですが、愛着が湧く作品にはお気に入りのキャラクターができるものです。

次に魅力的な俳優陣と作品内での役割を紹介していきます!

・アレックス・レヴィ(ジェニファー・アニストン)

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TVドラマ『フレンズ』で大ブレイクしたベテラン女優のジェニファー・アニストン。ブラッド・ピットの元奥さんとしても有名ですね。

本作の主人公の1人で、朝の情報番組”ザ・モーニング・ショー”の看板キャスターのアレックス・レヴィを演じます。

番組の看板キャスターでありながら、ベテランということでキャリアの岐路に立たされています。いかにして自分のポジションを守り抜くか、を必死になって悪戦苦闘する姿にはキャリアの中堅にあるような方々には響くキャラクターなのではないかと思います。

芯が強く、職場でもリーダーシップを発揮する一方で、エピソードが進行するにつれて弱さを垣間見せる人間くささも魅力の一つです。番組を解雇されたもう1人の看板キャスターのミッチ・ケスラーとの関係性も注目してほしいポイントです。

・ミッチ・ケスラー(スティーヴ・カレル)

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甲高い声が特徴的のコメディ俳優スティーヴ・カレル。『40歳の童貞男』や『フォックスキャッチャー』が代表作です。アカデミー賞主演男優賞ノミネート経験もある演技派。

作品のキーマンで、この人なしには本作は成立しません。性的暴行の”疑い”を掛けられたというのがポイント。ニュースやSNSでも話題になりますが、”合意の上”の線引きがどんなものなのか。本作を見ると、その一人よがりな合意の基準について考えさせられます。

作中は現在進行形のエピソードと過去エピソードが交互に流れるため、番組の看板キャスターとして全盛を奮っていたミッチの姿を見ることができます。対照的に、現在パートのミッチは、解雇されたことにより数億規模のギャラをもらう大スターからの転落具合を見事に表現しています。

果たしてミッチは性的暴行を行なっているのか、被害者は誰なのか、複数の証言をもとに彼の責任の所在について追求していきます。新キャスターとして就任するブラッドリーとの駆け引きも楽しみの一つです。

・ブラッドリー・ジャクソン(リース・ウィザースプーン)

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『キューティ・ブロンド』や『メラニーは行く!』などのラブコメでブレイクした女優で、デヴィッド・フィンチャー監督の『ゴーン・ガール』をプロデュースした製作面での実績も十分。ただキャリアの浮き沈みが激しく、本作のブラッドリー役はまさにリース・ウィザースプーンのための役柄だと思わせるほどです。

リース演じるブラッドリーは歯に衣着せぬ発言が持ち味である一方、その分仕事でのトラブルも絶えません。転職を繰り返すキャリアの安定しないレポーター・記者でありながら、とある炎上動画をきっかけに”ザ・モーニング・ショー”の報道局長に目をつけられるわけです。

とにかく全身全霊でブラッドリーを演じるリースに好感が持てます。ラブコメをあまり積極的には観ないので、個人的には関心の薄い女優でしたが、本作で一気に好きになりました。

作中ではキャスターとして相棒になるアレックスとぶつかってばかりなんですが、彼女らの絆が深まっていく模様がとても感情移入しやすく、感動するポイントの一つです。

・コリー・エリソン(ビリー・クラダップ)

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舞台『コースト・オブ・ユートピア』でトニー賞演劇助演男優賞の受賞実績があり、私の大好きな作品『君が生きた証』で息子の存在により複雑な胸中を抱える父親を好演した印象が強い俳優です。

本作では、一見トラブルメーカーのブラッドリーに目をつけたキーパーソンの一人。”ザ・モーニング・ショー”の報道局長を務め、さらなる昇進を目論み暗躍しようとしています。

ブラッドリーの良き理解者でありながら、彼女を利用しているようにも見え、最後まで悪役なのかどうなのか分かりづらいところが逆に魅力でもあります。デキるビジネスパーソンの風貌で、働く男としての魅力に溢れています。

クラダップは第72回エミー賞で本作の助演男優賞を受賞しており、彼の演技力が改めて認められ認知されました。作品を通して存在感は段違いのキャラクターです。

・チップ・ブラック(マーク・デュプラス)

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おそらく日本での知名度は低い俳優で、私も本作鑑賞まで知りませんでした。ただ兄ジェイ・デュプラスが映画監督で、自身も映画監督、プロデューサー、脚本家、俳優と複数の顔を持つ才能にあふれた人物です。

本作では番組プロデューサーという立ち位置で、”ザ・モーニング・ショー”を仕切る立場にありながら、上司の命令に背けない板挟みになっている人物。

つまり、いわゆる”ザ・中間管理職”の立場で、序盤はキャスターにも上司にも忖度する自分のない人物として描かれており、正直嫌いなキャラクターでした。しかし、エピソードが進行するにつれて、現状の自分の立場や番組のあり方に疑問を持ち、徐々に自らの意思で道を切り開いていくようになります。

個人的には一番嫌いなキャラクターから後半には一番好きなキャラクターになった愛着ある登場人物です。現実社会にもこういう人いるんですよ、本当に。だからこそ放っておけないところがあるのです。

・ハンナ(ググ・バサ=ロー)

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良質な作品に次々と出演している期待の若手女優で、近年ではエドワード・ノートン監督・製作・主演の『マザーレス・ブルックリン』への出演が印象深いです。

端正な顔立ちで、本作の花形。しかもかなりのキーパーソンです。作中では、出演交渉責任者という役割を与えられており、若手ながら仕事へのプロ意識を強く持ったやり手ビジネスウーマンとして描かれています。

物語の序盤こそ、あくまで脇役という立ち位置ながら、中盤以降にエピソードが加速していくにあたって潤滑油的な存在です。1シーズン全10話構成のエピソードですが、ノンストップで続きが気になるように起承転結の”転”で重要な人物。

③人間の欲と現場の慌ただしさがリアルな世界観を映し出す

作品は全10話構成で、1話あたり50分〜60分。近年のヒットするドラマの傾向として、エピソードが8話〜10話程度で1シーズンが完了するものが多い気がします。

それこそ海外ドラマブームの火付け役である『24 -TWENTY FOUR-』はタイトルの通り24話構成で、スピンオフも含めるとなんと10シーズンが製作されています。ほかにも『プリズン・ブレイク』『HEROES/ヒーローズ』『LOST』『ブレイキング・バッド』などは20話程度が当たり前。

本作『ザ・モーニング・ショー』に限らず、『ストレンジャー・シングス』などのヒットしたドラマは10話程度で1つのシーズンが完結するように作られています。趣味が多様化している現代において、短期で集中的に魅力ある作品を製作することは大前提となっているのかもしれませんね。

そんななか、本作はかなりの密度でスピーディにテレビ番組の舞台裏を描いていきますが、息つく暇もないほど物語にのめり込んでしまいます。

前述したキャラクターの魅力は一つの要因ですが、”現実を模倣した物語”として他人事には思えないんですよね。それこそ「セクハラの境界線は?」「性行為に合意を得ていたか?」など、被害者と加害者の認識の違いが分かりやすく、そして生々しく描かれます。

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物語の根幹はセクハラ問題をテーマにしていますが、パワハラ問題に関しても同様です。権力者の声ひとつで不利益を被る弱者である部下たち。オーナー企業にはよくありそうですが、社長のひと声で仕事内容や制度がいきなり変わって戸惑う社員がいるとか。表ではいい顔している権力者も、裏では何をしているか分かりません。本作ではそのような悪びれずに平気で嘘をつく大人が点在しているのです。

社会で働くようになって数年経った、ビジネスの良いところも悪いところもある程度わかってきた人や企業の中間管理職で板挟みになっているような人、職場のセクハラ問題に鬱憤の溜まっている人、などなどにはかなりオススメしたい作品です!

人間は誰しも不完全。だから許容することってすごく大事だと思うんです。本作ではアレックスやブラッドリーなど、主役として活躍するキャラクターたちも人間としての弱さや欲を見せる部分もあります。完全なるヒーローとして描かれるのではなく、不完全だからこそ魅力的な人間として描かれるからこそ共感を生むのではないでしょうか。

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主演の二人ジェニファー・アニストンとリース・ウィザースプーンはプロデューサーとしても名を連ねており、ハリウッドにはびこるセクハラ問題にも関連する作品として本作への強い思い入れを感じ取ることができます。

本作の製作総指揮で10話のうち3話で監督も務めたミミ・レダーは、日本で2019年に公開された『ビリーブ 未来への大逆転』でも監督を務めています。女性で初めてアメリカ合衆国最高裁判事となり、史上初の男女平等裁判に挑んだことでも有名なルース・ベイダー・ギンズバーグを主人公にした伝記映画。

大ヒット映画『ディープ・インパクト』で名を馳せた彼女ですが、前述の『ビリーブ』と本作において男性優位社会である現代社会に異を唱えようという意思を感じます。

きっと女性には共感を、男性には意識変革をもたらすような傑作だと断言できます。たくさんの魅力的なキャラクターを目的にするでもよし、だけど今回のnoteで何か感じるものがあれば是非とも本作を観ていただきたいです。

以下、Filmarksのレビューです。

④シーズン2の製作と配信も決定!

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もともとシーズン2は2020年11月に配信開始予定でしたが、新型コロナウィルスの感染拡大のおかげで昨年3月に撮影が中断。同年10月より撮影を再開したという嬉しいニュースが流れてきましたが、配信開始は2021年11月と少し先になりそうです。

ジュリアン・ムーアやグウィネス・パルトローらハリウッドを代表する女優たちも本作のリリースを待ちわびている声もあるようで、ハリウッドではかなり影響力があるようです。

シーズン2の配信まで時間があるので、興味を持った方は今のうちに鑑賞してみてはいかがでしょうか? Apple製品を購入した方は3ヶ月以内であれば1年間無料で利用ができるという特典もあるので、この機会にサービスを利用してみましょう!

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