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【奈良教育大学硬式野球部】~指導の方針と具体的なアプローチ~

奈良教育大学硬式野球部の監督として復帰させていただき、約3ヶ月が立ちました。今回は、自分の中で明確な方針を持って指導することが出来ています。その方針と具体的なアプローチについて共有したいと思います。

プレ-の質=情報量×思考量×行動量

 奈良教育大学硬式野球部では、目の前の試合に勝利することを目標に日々練習しています。もちろん、勝利至上主義では無く、勝利追求主義です。そのため、チームが勝つために必要なことも指導者は考える必要があります。
 チームが勝つために、僕はチーム全体のプレーの質を高めることが重要であると考えています。これはどれだけ根性があっても、高校生がプロ野球選手には勝てないように、プレーの質に差がある限りは勝てません。そのため、プレーの質を高めるということは野球選手にとって最も重要です。
では、プレーの質を高めるためにはどのような練習が必要なのでしょうか?ここで良く言われるのが「質と量」のどちらが大切かということです。この問いに対する僕の考えは、「どちらも大切」です。質の高い練習を圧倒的な量をこなすことが最短だと思います。これについては、成功曲線が参考になると思います。(図)どれだけ良い練習をしてもいきなり効果が出るということは無く、時間をかけて量をこなして初めて効果を発揮します。

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https://ay8.jp/success-curve-simple-answer

 さらに、ここで重要なことは、質の高い練習とは、どのような練習か?ということを考えることです。僕が考える質の高い練習は、多くの情報から自分なりに考えて仮説が立てられている練習です。つまり、論理的に効果が証明出来る練習です。こうした論理的に効果が証明出来る練習をするためには、多くの情報を仕入れ、その情報を基に自分なりに考え尽くす必要があります。つまり、質の高い練習は、情報量と思考量によって決まります。これらをまとめると、プレーの質=情報量×思考量×行動量という式で表すことが出来ると思います。しかし、実際はこれほど単純ではなく、情報を仕入れ考え抜いた練習を量こなしてもプレーの質が高まらないこともあります。これには、個人差があり、自分の体に合うフォームはなかなか見つからないので、仕方がありません。そのため、この時に重要なことは、練習量をこなしながらも、情報を仕入れること(情報量)と考えること(思考量)をやり続けるということです。これらの量がそれぞれの質も高めていきます。(質量転化の法則)
これが僕の考える野球がうまくなるための正しい努力です。これを日々選手にも伝えています。
下のスライドは僕のイメージです。

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傾聴力と主張力

 プレーの質を高めるためには、上記した「情報量×思考量×行動量」のループが大切であると考えています。しかし、これが重要だということを選手に伝えるだけでは、指導としては不十分だと思います。なぜなら、これをこなすためには、能力が必要であるためです。これをこなすためには、どのような能力が必要かをさらに言語化し、選手に身に着けさせる必要があります。

このことについて、私は【傾聴力】と【主張力】の2つの能力が重要であると考えています。この2つの能力については、Jリーグチェアマンの村井満さんが、2005年にJリーグに入った選手の中で活躍した選手(岡崎選手、本田選手、西川選手)の指導者やクラブ関係者に「どういう能力が優れていたか」というアンケートを取り、特に優れていたという能力です。この能力以外にもサッカーに関することなども含めて50項目以上あったらしいですが、差があったのはこの2つの能力みたいです。https://sports.yahoo.co.jp/column/detail/201609160006-spnavi
つまり、長くスポーツ界で活躍する選手は、成長するためにどうすればいいかを人に聞く力(傾聴力)があり、さらに聴いたことを自分の中に落とし込むことができ、なおかつ言われた通りにやるだけでなく「俺はこうしますよ」って主張できる力(主張力)もある選手であるいうことです。これらのことから、傾聴力と主張力はスポーツをする上でとても重要な能力であることが分かります。

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 そして、この傾聴力と主張力が高い選手は、前述した「情報量×思考量×行動量」のループを常に回せていると思います。人の話を聴く能力が高いということは、それだけ情報を仕入れることが出来ます。そして、それを自分に落とし込んで主張出来るということは、それだけ考えているということです。後は行動するだけですが、ここまで情報を仕入れて、考えられている人は自然と行動にも移せていると思います。ここは、卵が先か鶏が先かみたいな話になりますが、能力が上がると習慣化が出来るのか、習慣化によって能力が上がるのかは分かりません。このことから、習慣と能力の両方にフォーカスして指導していくことが必要であると思います。

思考量に対するアプローチ

「情報量×思考量×行動量」のループ【傾聴力】と【主張力】の2つについて書いてきました。これらを選手一人一人がどれだけ意識して、野球に向き合えるているかがとても重要です。そのためのアプローチとしては、思考量にフォーカスしていきます。理由は、思考量が一番可視化しにくいためです。「考えろ」と言っても、本当に考えているかは分かりません。そのため、指導者からのアプローチによって具体化していく必要があります。さらに、情報量が少ないと思考は出来ません。そして、思考をしっかりと出来ていれば行動にもつながリます。つまり、思考量に対するアプローチは、情報量のチェックと行動量のチェックにも繋がります。
具体的なアプローチについて、奈良教育大学硬式野球部で取り組んでいる実践例を2つ紹介します。

実践例① 0秒思考

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「0秒思考」とは、マッキンゼーの赤羽雄二さんが書かれた本の中で紹介されている世界最強のメモ方法です。メモのとり方は、とにかくシンプルで横書きのA4用紙に1分間で4~6行、各行20~30文字でメモを書くだけです。これにより、自分の考えを深めることと可視化することが出来ます。
詳しくはYoutubeで紹介されているので、時間のある方はご覧ください。

【ゼロ秒思考①】思考を整理して悩みを解決するメモ術(Think Fast)
https://www.youtube.com/watch?v=qyI8Fx-sgW8
生産性が数十倍になるメモの方法!7分で学ぶ『ゼロ秒思考』
https://youtu.be/L6xf_qmhffc

奈良教育大学硬式野球部では、このメモを毎日の練習前のミーティングで行っています。タイトルの写真がその様子です。
メモをする内容は以下の3つです。
・今日練習する目的は?
・今日は何を試すか?
・選手でお題を設定
1つ目のお題では、何のために野球をしているのかを確認します。練習を日々こなしていると、つい練習をしている目的を忘れてしまうことがあります。しかし、目的を忘れてしまうとモチベーションが下がってしまいます。そうならないためにも、毎日思考を整理することが大切です。
2つ目のお題は、野球に対する情報の整理です。仕入れた野球の情報を自分なりに整理して、日々の練習に落とし込んでいきます。これにより、毎回の練習に意図を持って取り組むことが出来るようになります。
最後は選手が日替わりでお題を設定します。お題を考えるということは、普段から問いを持つという習慣が無いとなかなか出来ません。こうした習慣を身につけるためにも、お題を考えるということはとても重要です。
このように、0秒思考を取り入れることで、情報の整理と練習(行動)の目的の確認につなげることが出来ています。

実践例② 1on1ミーティング

 2つ目の実践は、1on1ミーティングです。この実践は今週にオンラインですることが出来ました。僕(監督)と1対1で20分ほど話をしました。写真はミーティング内容をジャムボードにまとめたものの一例です。時期としてはリーグが近かったので、リーグでの目標などについて色々と選手の話を聞くことが出来ました。僕の感想としては、選手が色々なことを考えながら野球に取り組めていることに感心しました。その一人ひとりの考えを尊重しながら、チームとしての形にしていきたいです。
これは、僕と選手の両方が傾聴力と主張力を鍛えるためのトレーニングであると思っています。僕自身がどれだけ実践できるかが、チームの上限を決めると思うので、僕自身が一番意識して取り組んでいきたいです。

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まとめ

奈良教育大学硬式野球部での指導の理念と具体的なアプローチについてまとめました。「情報量×思考量×行動量」のループ【傾聴力と主張力】の2つがキーワードです。この2つをまずは僕がどれだけ実践出来るか、身に付けられるかが求められます。僕の理想のリーダーシップは「挑戦者のモデル」であることです。
これからも選手と一緒に成長していきます。

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