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広報うちこの特集「おだこうアオハル地域未来」が最高だったという話

今年は大丈夫かな? 毎年この時期になると気になっていること――
小田分校の新入生の数です。
2月29日、愛媛県内の高校入試の志願者数が新聞に掲載されました。
小田分校の志願者は、なんと37人。去年の18人から倍増です。
もちろん学校関係者の皆さんの尽力のたまものですが、その陰で頑張っていた広報担当者を私は見守っていました。

今年の『広報うちこ』で一番好きだった記事—— 
「おだこうアオハル地域未来」。

私が長年一緒に紙面を作ってきたK保永さんの作品です。
今回はこの紙面に込められている担当者のすてきな思いと、特集づくりに大切なマインドをお伝えしたいと思います。

2023年7月号の特集「おだこうアオハル地域未来」

【なぜ小田分校が気になるのか】

小田分校は山間の小規模校で、生徒数が減ったことにより令和2年4月から分校化されました。今も新入生が3年連続で31人以下になると募集が停止されるという状況ですが、独自の起業家育成プログラムを実施するなど、その魅力は減るばかりかどんどん増しています。ほんと関わる人たちみんなが驚くほど、とてもすてきな学校です。私も一度特集の取材をさせてもらい、大ファンになっています。

私が担当した2019年12月号の特集

とにかく生徒みんなが一生懸命でかわいい!
今の仕事でも少し関りがありますが、何事にも前向きで目の前にある課題を楽しみながら全力でやっている姿に、いつも自分の高校時代を反省させられます(笑)

【伝えたい担当者の熱意】

町の人たちに寄り添った紙面を作りたいと奔走しているK保永さんですが、この特集は今まで以上になんとか地域の力になりたいという熱意が伝わってきました。
驚いたのは取材している人の数です。紙面上のインタビューで10人の生徒や住民が登場していますが、それ以外にも関係する職員や先生、地域の人々など10人くらいにじっくりと話を聞いたりアドバイスを求めたりしています。

高校の魅力化で県外から生徒を募集する高校は増えていますが、「地域に残らない子が3年間いるだけでは何にもならない」という声もあるようです。でも20人もの話を聞いた彼女は、小田分校は違うとすぐに気付きます。「話を聞いた人みんなから『来てくれた生徒に対する純度100%の優しさと感謝の気持ち』が伝わった。こんな人たちに囲まれて、きっと来た生徒たちは幸せ。心から小田の人たちはすごい!」と思ったそうです。

【取材ノートに溢れる言葉】

K保永さんの取材ノートには、こんな言葉が残っていました。

「小田分校が残るにしても残らないにしても、今いる子どもたちを大切にしたい」
「地域の温かさが伝わるだけで十分」
「親御さんの喜ぶ声がうれしかった。それだけで小田に来た意味がある」
「ここでやり直し、頑張ることで夢をかなえようとする子どもたちの思いを伝えてほしい」
「学校だけを残せばいいというわけではない」などなど――。

10数ページにわたり、地域の人たちが語った生徒への思いが溢れています。
そして紙面を読むと、登場していない人々の思いにも向き合い、一生懸命に伝えようとしていることが、文章だけでなく写真やレイアウト、紙面全体から伝わってきました。

小田の人々の温かさが伝わる紙面

【温かい思いは伝播するんだ】

紙面には登場していない関係者の一人、M岡君が広報紙の感想を聞かせてくれました。K保永さんには「地元の子どもたちにこそ、今の小田分校の魅力を伝えてほしい」とアドバイスをしていたそうです。

M岡君は「町外から来る生徒の保護者は学校のことも、学校以外の生活も心配。特集では学校のパンフレットでは伝わらない、リアルな暮らしぶりが垣間見えるのがとても良かった。地域の人たちの言葉や表情を見て、安心してくれた保護者も多かったはず」と話します。

学校側も県外でPRする際に広報紙を使ってくれていたそうです。在校生も自分の母校の後輩に広報紙を紹介してくれるなど、地域や学校の良さを伝えたいという思いが伝播していました。

小田出身の生徒が登場するページはレイアウトも良かったですが、互いに刺激を受けながら、楽しく学んでいる様子がそれぞれの言葉から読み取ることができます。大学生になった川倉君のインタビューも感動でした。まさに地元の子どもたちにこそ知ってほしい、新しい小田分校の魅力が詰まっていたと思います。

生徒たちのインタビュー記事はぜひ読んでほしい

伝えたい広報マインド

M岡君の感想はこんな風に続きます。
「学校側が伝えたいこと、保護者側が心配していること、その間にあるリアルな生活を支える人々のこと。すべてがマッチングした紙面だった——」
関係者ではありますが、一般の読者から自然に出るそんな言葉が、この特集のすばらしさを物語っています。

大切なのは、学校関係者にも生徒にも、それを見守る地域の人たちにも寄り添うこと——。ですが、口で言うほど簡単ではありません。たくさんの人々の思いを聞けば聞くほど背負う思いは大きくなります。その思いを限られた時間、限られた紙面で伝えることは本当に難しいです。働き方改革の波も押し寄せてるしね……

それでも思うのは、心のこもった紙面を届けられるってすてきだな、ということです。
小田分校の志願者数が昨年から倍増して37人になったことは、関係者の努力のたまものですが、その皆さんの一生懸命な思いや流した汗、純度100%の優しさを伝えられるのは、広報担当者だと思います。

忙しくても、紙面から心をなくさない。

大変だけど大好きな人たちの思いを届けたいと、一生懸命に取材で走り回る彼女に、私は拍手を送ります!

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