宗谷いぶき

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最近の記事

怪談「体育館裏の倉庫」

女性教員のNさんが、以前、勤めていた高校には七不思議があった。 もちろん、生徒間で噂されていたものだ。 七不思議の一つに、体育館裏の倉庫に関するものがあった。 その倉庫というのは外から見るよりもずっと広く、中には教室がある。 その教室には、かつて失恋して自殺した女子高生の霊がおり、訪れた人と入れ替わる。入れ替わった人は、次の人が来るまで倉庫から出られない。 Nさんはそんな話を聞いて、ちょっと興味を持った。 そこで校内点検のとき、彼女は倉庫を含む場所の担当を買って出

    • 怪談「上半身」

      派遣会社で働くMさんはその日、契約を切られた。 先方のいうことを聞いてみると、どうにも理不尽に思え、無性に腹が立った。 失意のうちにアパートの自分の部屋まで帰ってくると、電気がついているのに気づいた。 夏の終わりである。夜は完全な暗闇の中、眠るのだし、朝出かけるまでの間、点灯した記憶はない。 肩かどこかでスイッチに触れて、気づかないまま出ちゃったのか。 クーラーをつけ、着ているものを脱ぐ。カーテンを開ける……と、そのとき、窓の外を何かが横切った。 一瞬の間である。

      • 怪談「うなじの矢」

        大学生のKが、夏だというので肝試しに行った。 車で三十分ほどの場所に寂れた集落があり、古い神社がある。 その神社は、昔は村人たちに信仰されていたが、今では誰も参拝しなくなり、荒れ果てているという。 夜、訪れると恐ろしい目に遭うという噂があった。 その程度の心霊スポットで、地元の人にしか知られていない。ネット上にも情報はない。 ある晩、Kは友人のTを誘い、車に乗り合わせてその神社に向かった。 着いたときには日付が変わる頃だった。神社周辺は深い森、暗くて静かだった。た

        • 旧・藻岩辺駅駅舎

          藻岩辺には、かつて鉄道の終着駅が存在していた。 国鉄の最寄駅に接続する簡易鉄道で、藻岩辺鉄道として昭和2年開業、近隣住民に親しまれた。 輸送中心に活躍していたのだが、国道等の整備によってしだいにさびれ、昭和36年12月31日をもって廃線となった。 画像の駅舎は、藻岩辺駅のもの。木造のシンプルな構造で、正面入り口の左右に待合室と切符売り場があった。廃止後は地元の企業が土地と建物を買収、倉庫として使用されていたが、老朽化が進み、特に保存しようという動きもないまま平成17年に解体さ

          怪談「子供の足音」

          今春大学を卒業し、割と名前の知られた企業に入社したAさんから聞いた話。 福利厚生がしっかりしている会社ということもあり、五月の連休もカレンダー通り、研修のときにそう聞いていたAさんは、ひとりで旅行する計画を立てた。 だが、ネットで宿泊先を探し始めたときにはもう、どこも予約がいっぱいか、料金が予算以上のところばかりで、なかなか思うようなところが見つからない。 あきらめかけていると、古建築の鄙びた旅館が見つかった。 画像を見ていると、ステンドグラスのはまった応接間があったり、猫脚

          怪談「子供の足音」

          高齢者の性

           高齢者にも性衝動があり、恋愛もする。当然と言えば当然なのだが、一方では年齢を重ねるにつれて性的欲求がなくなっていく、と考える人もいて、ときに性愛につながる行為、言動を高齢の家族が見せた場合、とまどう人も多いという。  高齢者福祉施設では実にさまざまな問題が持ち上がっているそうである。入所者間のトラブルもあれば、施設職員とのトラブルもある。  入所者同志が性行為を行っているのが確認されたが、片方が認知症で同意があったとは考えられなかったケース。  施設職員が仕事として行

          高齢者の性

          藻岩辺のジオラマ

           「藻岩辺」はオホーツク海沿岸にかつて存在した集落の字名。  明治時代に開拓、発展。初めに人が定住したのは明治19年、伊藤子之助。駅逓の管理人であった。  当時、北海道には開拓のため多くの人々が移住してきており、藻岩辺は漁業と農業を主な産業として発展した。しだいに木造の家や倉庫が増え、学校や神社などが建設された。  ジオラマは時期を明治末に設定し、古地図をもとに製作したもの。  藻岩辺の住民は団結力が強く、自然と共生しながら、冬季の積雪、低温や交通の不便さを初めとする困難に立

          藻岩辺のジオラマ