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母性のアスレティックトレーナー・父性のS&Cコーチ

*この記事は音声配信「母性のAT父性のSC」を文章化し再編したものです。

専門分野によって情のかけ方って変わる。基本的な違いみたいな部分を書いていこうと思う。

先日ニュージーランド人のS&Cコーチと雑談をしていた。その中で洋の東西を問わず、スポーツ現場ではフィジオといわれている理学療法士、アスレティックトレーナーやS&Cコーチというのは、その専門職によって「典型的なとる基本的姿勢、情のかけ方が違うよね」という話で、ひとしきり盛り上がった。

理学療法士とは

リハビリテーションの専門家。神経系の麻痺であったり運動そのものに障害があったりする場合や手術後にリハビリをしていくのがもともとの専門分野。

スポーツ現場にも理学療法士が存在し、神経系のアプローチから体を動かしやすくしていく。機能的なものを改善をしていくプロフェッショナルという捉え方でいいだろう。

アスレティックトレーナーとは

皆さんが一般的にイメージするトレーナー業。テーピングや治療するといい方をするとちょっと語弊があるが「予防の専門家」。怪我の後のケアをしたり物理療法なども受け持つ。

アスレティックトレーナーの中に、鍼灸師や柔道整復師という国家資格を有している方も多い。その場合は治療も本格的にできることとなる。

正確には違うのだが、現場ではメディカル、などと呼ばれることもある。スポーツ現場では毎回お医者さんがいらっしゃらない状況の中でいうと1番医学的なポジションだ。怪我した!頭打っちゃった!という時に真っ先に呼ばれるのがこのアスレチックトレーナーだったりする。

S&Cコーチとは

我々のようなS&Cコーチというのは、それに対して基本的な怪我がないというか、制限がない選手たちを対象としている。そこからさらに最大筋力やパワーを上げる、というところの専門家となる。

科学的見地からGPSなども駆使して、今よりより良いパフォーマンスが出るように怪我の防止等の観点も含めて鍛えていこうという専門家だ。


トレーナーの専門性によって異なる性質

「トレーナー陣」と一言で括られることが多いものの、このように専門性が分かれているため、異なる性質を持っているのは、意外と知られていない。

前述のS&Cコーチとの会話の中で、たまたまうまい比喩が思いついた。
「Yuji、上手いこと言うね!」とお褒めいただいたのが、

「母性のアスレティックトレーナー、父性のS&Cコーチ」というフレーズだった。

ATの母性

アスレティックトレーナーというのは、選手に接する時間が最も長いポジションだ。選手もリラックスして、いろいろな話をするため、身体的なことだけではない悩みを聞くことも多い。個々の性格を1番把握しているわけだ。

一人ひとりと関係が深く、情にも厚くなりがちである。選手の事を考えたときに、痛みやケガで五分五分の状況となると、無理をさせたくない傾向が強い。やめておけ!というのが基本的な姿勢になりやすいものだ。

可能性は大きくないものの、大きな怪我につながり長期化したらどうするんだ、と心配する。

悪い意味ではなく、
「ハンカチは持ったか?」、「弁当ちゃんと持って食べているか?」、「最初の外出でそんな遠くまで行って1人で夜9時過ぎたら危ないじゃないか!」

…そんな母親像とも重なるのが、アスレティックトレーナーの基本姿勢に近いと思う。

父性のSC

対して父性のS&Cコーチはどちらかというと、いい加減というか「可愛い子には旅をさせろ」みたいな考え方が一般的だ。

ある程度本人はやりたがっているのだし、挑戦してみて失敗しないと実際に何ができるかわからないじゃないか、というニュアンス。

「やってみることが大事だ」、「転び方がわからないと困るだろ。転んだことがない子をいくら注意してもしょうがない」、「その上でサポートすればいいじゃないか」

というのがS&Cコーチの基本的な姿勢と考えると、まず間違いない。

ピタッと交わることが少ない情のかけ方

どちらの立場においても、子供のような選手に対して情をかけて、自分なりに必死に考えてサポートしている。しかしお互いにとるべき基本的姿勢というのが違う。

子供の進路について話し合う両親をイメージしてもらうと、わかりやすいだろう。

守ってあげたいというアスレティックトレーナー、攻めさせて経験を積ませたいと思うS&Cコーチ、という構図の出来上がりだ。

当然、アスレティックトレーナーとS&Cコーチというのがフラットな立場で話し合いをすると、大体まとまらないというか、ちょっとずれてしまう。

「なんでそんなこの状況で無理させるのだろう」とアスレティックトレーナーは思うだろうし、S&Cコーチは「なんでそんなに甘やかすの」、「本人の為ならないじゃないか」みたいな感覚になる。

これが面白いなと思うのだ。


お互い専門性による思考の傾向をつかんでおこう


弘田雄士というS&Cコーチはどうだろう。

自分自身を考えてみると中性的なアプローチと言えるかもしれない。S&Cの割には威厳がなく、アスレティックトレーナー的だったり、理学療法士的なところもあるのではないかと思っている。

しかし、当然だがプロとして実務をこなしているアスレティックトレーナーと比べるといい加減である部分も大いにある。

やはりそれぞれの専門家において、価値観のすり合わせとは難しいものだ。

だが、それもまた良いのかなと個人的には感じてもいる。大事なことは「自分の見ている角度や自分の考えているベター策というのが当たり前ではない」という事を知っておくことだと思うからだ。

自分が見る角度こそが当たり前で、ど真ん中の思考だと信じてしまうのは非常に危険だ。

それぞれの立場から考えた上で、組織やチームとしてどこを落としどころにするのか。

・選手のキャリアや今後のこと
・チームの現状

複合的に考えた上で、気持ちを込めて最善と思われるもの。いくつかある選択肢の中のベストに近いベターを皆で共有していけるかということが大事なのだ。

お互いの性質の違いが理解できていて、各専門分野による思考の偏りが見えていれば、最初から話し合いは建設的になっていく。ぜひ頭に入れておいてほしい。

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