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介護施設で、行方不明事件騒動の話

「道子さん(仮名)がいない!トイレに連れて行こうと、部屋にいったら、いないんです!」と。
私が、出勤すると、職員のAさんがあわただしく事務所に来て、介護主任に報告する。

働いている介護施設で、認知症の道子さん行方不明騒動が起きた。

「利用者さん、いなくなったんですか?」と、出勤したばかりの私は、いまいち脳みそがうまく働かず、事務所に入ってきた、別の職員Bさんに、冷静なトーンで聞いた。
「そうみたいで、いま大変な状況です」と、Bさんも、冷静なトーンで返す。

その時の職員は、5人。
道子さん、捜索にありとあらゆる、場所を探した。もちろん、外に続く勝手口や窓は、すべて鍵がかかっている。

認知症のある方の部屋・しっかりした人の部屋に入って、「ちょっと、人を探してて、クローゼットとトイレ見させてもらっていいですか?」と言って、探させてもらった。

しっかりした人は、「なんや、また、人がおらんくなったんかい?」と。
いやいや、何回もあるように、言わないでくれ~と思いながら、探させてもらったが、いなかった。

空き部屋が2室あって、1部屋は鍵が閉まっていて、もう1部屋は鍵が開いていた。なので、鍵が開いている空き部屋をくまなく探したが、いない・・・( ;∀;)

介護主任が、青ざめた様子で、「玄関からだれか出て行った?」と聞くと、
Bさんが、「私は、食事の時からずっと、食堂にいました。食事の時は、道子さん、いたし、玄関から誰も出ていなかったんで、絶対、外には出ていません!」と答えた。

玄関開けたら、そこはすぐに食堂なので、だれか、出て行ったら、きっと、Bさんが、気づく。
だから、それを、聞いてみんな安心した。

でも、そうすると、疑問は残る。「これだけ、探しているのに、なんで、どこにもいないの?」と。

みんなが、すべての部屋を探しつくして、途方に暮れているときに、若い職員の「見つかりました!」という声が施設内をこだまする。

なんと、鍵がかかっている空き部屋にいたのだった。
若い職員が、鍵を開けて、鍵のかかっている空き部屋をあけると、トイレに座っている道子さんがいた。

空き部屋は、みんなが探している時に鍵がかかっていた。
そこは、もとから、鍵がかかっていると思い込んでいたが、実は、道子さんが、入って、道子さん自身が、鍵をかけていた。

職員全員、「こんな盲点があったとは・・・」と驚いていた。
普段は、空き部屋には鍵がかかっていない。なので、空き部屋に鍵がかかっていることに、あれ?と気づきそうなもんだけど、だれも気付かなかった。

唯一、気づいたのが、若い職員の子だった。「なんで、空き部屋に鍵が閉まっているのかな?と不思議に思って・・・」と。
見つけた若い職員の子は、みんなから、尊敬のまなざしを向けられていたのは、言うまでもなかった。

とりあえず、外に脱走して、大事にならなくてよかった!と、そこにいたみんは、胸をなでおろした。

事件の騒動の道子さんは、「えへへ(∀`*ゞ)ヘヘ」と笑っていた。


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