特別養護老人ホームで口腔ケアを嫌がられたおばあちゃんの話
初めての介護の仕事は、利用者様の口腔ケア。
そして、一発目の口腔ケアは、全力拒否されて終わった。
介護の仕事デビューは、20代の時。
最初に選んだ仕事先は、昔ながらの特別養護老人ホームだった。
その頃から、お年寄りは好きだったし、人に優しくする仕事もいいなぁ(*´▽`*)と思いながら、初めての介護現場。
朝食が終わった利用者様が1階の食堂からエレベーターで、2階へ運ばれていく。
そして、車いすがズラズラと並べられていく。
まるで、団地にある駐輪場の自転車みたいに並べられていた。
そして、車イスに座っている人たちの視点は、どこか上の空だったり、独り言を言っている人もいた。
ほとんど、重度の認知症の人か、病気の影響で天井をぼんやりと見ている人ばかりだった。
けど、中にはあてもなく、目の焦点があわずに、ただ徘徊している人もいた。
そんな衝撃の光景に、呆然とする暇もなく、先輩から口腔ケアスポンジの歯ブラシとうがいガーグルを渡され、「じゃあ、いまから、口腔ケアするから、歯磨きしてあげてね」と言われた。
利用者様の名前も分からないままに、目の前のリクライニングの車イスに座ったおばあちゃんに、口腔ケアをしようとした。
そのおばあちゃんは、とても小さくて可愛らしかった。
同時に人は年をとるとこんなに背が縮むんだ!と衝撃を受けた。
推定身長120センチくらいかな。
かわいらしいし、声をかけてみたいという好奇心を発動させた、数分後どえらい目にあった。
「口腔ケアしますね」と基本の声かけをすると、かわいらしい外見とは裏腹に、突然大きく目を見開き、「しゃ~」と言う声にならない怒りの表情を浮かべ、私を全力でにらみ、小さな手で私の口腔ケアに、えらく抵抗した(;O;)
当然のごとく、私はあたふたした(;´・ω・)
そのあと、ベテランさんが、「この人、島野さん(仮名)人見知りが激しいから、今日来たあなたでは無理よ!」と笑いながら、言われた。
心の声がつぶやいた。(そういうことは、先に言ってよ。せんぱい…( ;∀;))
島野さんは、なんでもない時はかわいらしいけど、抵抗するときは、蛇のような声をあげて、面相も恐ろしい顔つきにかわる。
お年は、98歳のご長寿のおばあちゃんだった。
繰り返しいうが、丸顔で本当に小さくてかわいらしいおばあちゃんだった。
でも、怒ると怖い。
きっと、若いときは気が強かったのだろうと勝手に想像してみた。
でも、お気に入りにの職員には、うれしそうな顔をする。
お気に入りの職員が島野さんに声をかけると、大きくうなづいたり、小さな手を出して職員の体をポンポンとたたいて、「あんた、好き」と言っているようだった。
声はだせないけど、表情豊かで喜怒哀楽がはっきりしているおばあちゃんだった。
はじめての口腔ケアデビューは、衝撃的だったけど、小さな体で、一生懸命、感情表現をしている島野さん。
声は出ないけど、思いは伝わる。非言語的コミュニケーションが上手なおばあちゃんだった。
ちなみに、私がその特養で働いている間、以後は、口腔ケア・食事介助をしても、嫌がることはなかったけど、笑顔もなく、
顔文字で言うところのいつも、(ー_ー)こんな表情だった。
私が接する時は・・・
98歳のご長寿おばあちゃん島野さん。
感情表現だけでなく、心許す人間とそうじゃない人間の線引きもはっきりされておられました。
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