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いつも癒しをくれたおばあちゃんとポータブルトイレ

寝たきりで、笑顔のかわいらしいおばあちゃんがいた。
ショートカットで、丸顔でニコニコしていた。
そして、帰るときは、寝ながら、手を振って「また、来ておくれ~」
と言ってくれる。

いつもヘルパーを暖かく迎えてくれた。
ヘルパーさんたちの間では、「癒し処」と言われていた、おばあちゃんだった。

そんな、寝たきりのおばあちゃん。ミッションは、おむつ交換だ。
ふと、ベッドの横を見ると、ポータブルトイレがある。
最初は、寝たきりなのになぜ(・・?と思っていた。

ある時に、「便が出るから、申し訳ないけど、トイレに座らせてくれないか?」と言われた。

「えぇ~!立てるの?」とびっくりだった。
寝たきりなので、足の筋力はほぼ、ない。

ポータブルトイレの介助をするときは、別室にいる、息子さんに協力をしてもらい、息子さんと2人で支える。

おばあちゃんは、生まれたての小鹿のように、足をブルブルさせながら、くるっと一回転しながら、ポータブルトイレに座る。

便だけは、ポータブルトイレでないと、できないらしい。
それを、思うとポータブルトイレの存在は、偉大だな!と思った。

息子さんも、「ポータブルトイレに座ると、背中がまっすぐになるから、本人も力みやすいし、便を出しやすいみたいです。寝たきりのまま、じっとするよりは、こういう機会でも立位をさせてもらえたら助かります」と言っておられた。

それを、思うとトイレ行って、座って排せつをするのは、便秘予防にもなるし、やっぱ大事だなと改めて、思う。
施設になると、足がフラフラで、日中オムツになると、トイレに連れて行くのは、転倒のリスクが高くて、難しいけど、在宅介護は、家族さんが許せば、本人の意思は割と、尊重される。

家族さんは、本当に大変だけど、本人の意思が尊重されやすいから、在宅介護のいいところかもしれない。

寝たきりでも、なんとか踏ん張って、ポータブルトイレに座るおばあちゃん。ポータブルトイレの介助をした時は、一層「ありがとう!助かった!」と感謝をしてくれて、こっちも嬉しくなる。

ミッションが終わって、おばあちゃんから、「また、来ておくれ~!」といつものように、言ってくれて、「また、来ますね~」と私が言って、帰る。

自然と笑顔がこぼれるおばあちゃんでした。

それから数日後、別の人が訪問に行くことになり、2週間ほどそのおばあちゃんの訪問がなかった。

日が空いて、今日、久しぶりに、「癒し処」のお宅だなぁ~(*´▽`*)と楽しみにしていたら、直前に「救急搬送されてキャンセルになりました」と事務所から言われ、その数日後にお空へ旅立ちました。

「また来ておくれ~!」と言ってくれた時は、元気そうだったけど、やっぱりお年寄りは、何があるか分からないし、介護はこういう急なお別れを何度も経験するのが、悲しいところだ。

いまは、天国で元気に自由に、歩き回っていたらいいなぁと思う。

 


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