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電車に乗ってる時の視線の先には何がある?後頭部が紡ぐ壮大なストーリー

今日は久々の出社で、電車に乗る。
いつも乗る総武線快速のシルバーのボディは色が劣化したような薄い剥げたブルーとクリーム色のラインが走る。思い起こせば高校時代から長いことお世話になっている。

朝の総武線快速は、相も変わらず、バズった人気店のあんバターサンドのように人でパンパンだ。
溢れた中身をぎゅうぎゅう押し込んでくれるところまで一緒だ。

せめてもの救いは晴れてくれたこと。雨の日のあのなんとも言えない生臭い匂いとサウナのような息苦しさはもう罰ゲーム以外のなにものでもない。

まさかその匂いの原因側になる日が来るなんて、時が過ぎるのは早いものだ。

総武線快速に揺られて千葉から東京まで出る。

荒川を越える景色が広がる瞬間と、錦糸町付近でチラ見せしてくれるスカイツリーがテンション上がる。

そんな車内でふと思う。「みんな電車に乗っている時の視線の先には何があるんだろう?」

ぱっと上を見上げると電車の中は視線の取り合い。広告、広告、広告。
激しい色使いと太っいフォントが車両という狭いリングの中で殴り合っている。世の中にそんな抜く毛ってある?とツッコミたくなるくらい脱毛の広告が並ぶ。なんなら、最近は電車の中でTVが始まる時代だ。それでもなお、手元のスマホには誰も敵わない。圧倒的チャンピオン。

ただ僕は、そのどれにも視線は奪われない。僕の視線を奪うのはいつだって人の後頭部だ。

心を鷲掴みにして離さない。
これはもう美容師だった時の癖が今にも残っている。

朝の後頭部には、寝癖が物語るそれぞれの日常という名の壮大なストーリーがそこにある。

お酒が残っただるい体。眠い目を擦って、無理やり体を持ち上げる。洗面所までやっと辿り着くと、疲れ果てた自分の顔に10年後の自分を重ねて、ため息。はぁー。

しかし、テンションの低い自分はここまで!ここからがテンションの上げどころ。自分の1日はここで決まる。スイッチを入れる。

朝の洗顔を終わらせて、つっぱる肌に水分を与えたら油分でフタをすることを意識して、化粧水、美容液、乳液、クリームの順にたっぷり染み込ませる。下地を塗っていざメイク。

春も終わって、夏に入る手前のこの時期、どんな色がいいかなぁって悩む。イエベの肌に彩りと元気をくれるオレンジのシャドーで決まり!最後はオレンジに相性バッチリのコーラルピンクのリップを合わせて。

メイクが終わったら今度はヘア。ここが勝負どころ。
前髪の完成度が私のご機嫌度合いを決める。

折れないように太めのコテで慎重に、毛先にゆるくワンカール。よしっ!とつい声が出る。その勢いで毛先を遊ばせる。ここまできたらあと少し。いつものシャツに着替えてスーツに袖を通す。玄関のドアを開けて外に出る。もう夏が飛び出しちゃってる日差しに、気持ちが少し高鳴るのを抑えて、電車に乗る。

僕はそんな朝のルーティンをこなしてきたであろう人の後頭部が気になる。

とても気になる。

ばっちり朝の支度をしてる人でも、後頭部まで見れてる人はほぼいない。
そんなところに日常のストーリーがあらわれる。ちなみに、寝癖は表面だけではない。根元が本丸。くっきり残っている。どんな寝相かをくっきり形状記憶している。全然動かない人なんだろうなぁ。ずるずる下のに降りてったんだろうなぁ。パートナーの腕枕に温もりを感じつつ、首痛いってなってすーって抜けたんだろうなとか、想像は無限に広がっていく。

そんなことを朝の電車の中で考えてしまう自分のひねくれたクセの強さにため息が出る。はぁー。

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