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京都公演覚え書き その② 舞台は畳

芝居屋ゆいまの「読み語り『父と暮せば』」京都公演の上演場所をお貸しいただいた法光寺さんには、本当にお世話になりました。
住宅街にあるお寺にやたら声の大きい人間がワイワイ集まって仕込みやらリハやらバラシやら…お騒がせをいたしました。

今回の舞台設営では、会場が法光寺さんの本堂、というのが肝でした。

学園座時代から、舞台を作るときは、床より高さを出すために箱馬を並べた上にコンパネを置き、その上にパンチを敷いていました。

 【用語解説】
箱馬…平台の土台(脚)として使われる箱型の台
コンパネ…コンポジットパネルの略。様々な素材による複合パネル。厳密にいうと意味は異なるが、コンパネ=合板=ベニヤ板と混同して使っている演劇関係者は多い(と思われる)
パンチ…ニードルパンチカーペットの略。舞台に用いる場合にはグレーか黒のものが多い

昨年8月「那須塩原市図書館みるる」での初演時は、岩渕健二がずっと使ってきた畳大のコンパネ3枚を並べた、高さ約30㎝の舞台を使いました。

「那須塩原市図書館みるる」公演 仕込み風景(2023.08.04)

京都公演の舞台もその大きさを基本と考えていましたが、役者である岩渕に群馬から京都まで車で運ばせるのは負担が大きいので、舞台の資材は京都で調達することに。

しかし、法光寺さんの本堂は全面畳敷き。直接重いものを載せると畳が傷んでしまう……

畳の上に敷物を敷いて、その上に箱馬を並べてコンパネ載せれば?
いや、そもそもそんな箱馬やコンパネはどうやって調達するの!?
箱馬の代わりにビールケースか農業用コンテナを伏せて並べたらいい!
ビールケースって、メーカーによって高さが違うよ!?
(有志の会メンバー酒販店にて調査)
農業用コンテナ買ったとして、6個は要るでしょ?終演後はどうするの?
コンパネの調達と搬入搬出はどうする?
……京都公演キャスト&スタッフのグループLINEで熱い議論(というか、「どうする?」「こうする!?」の応酬)が繰り広げられました。

コンパネの代わりに畳を使うというナイスなアイデアが出て、法光寺のご住職のお知り合いの畳屋さんから古い畳をご提供いただけることに! しかも搬入搬出までしてくださるなんて! 畳屋さんには本当に感謝、感謝です。ありがとうございました!

あとは、舞台の高さを出す箱馬に代わるものは? 本堂の畳を傷めない工夫は?…と考えをめぐらせていた頃、まがりのりこ(演出)は、ちょうど放送中のNHK大河ドラマを視聴しておりました。

主人公は紫式部、平安時代の貴族社会を描く「光る君へ」。
藤原道隆と妻の貴子が室内で話をしている場面……道隆と貴子はそれぞれ1枚の畳の上に座っていました。
寝殿造の板張りの床の上に座る敷物としての「置き畳」…これだ!とひらめきました。

舞台のスペースには畳だけを並べて置こう!
舞台の高さは畳1枚分の厚みだけでいい!

会場全体の奥行は4間(約720㎝)だから、奥行1間(約180㎝)の舞台を30㎝も高くしたら却って圧迫感が出てしまうだろう。
「みるる」で役者が台に腰かけていた場面をなるべく立って読むようにすれば、後ろのほうのお客様にも役者の胸から上は見えるはず。
並べた畳がズレないように、100均で売ってるメッシュ状の滑り止めを畳の隅に敷こう。

仕込みの際、畳屋さんに予備も含め4枚搬入いただいたので、舞台のスペースには4枚とも敷いて、舞台の幅を半間大きくしました。

上手(かみて 舞台の向かって右側)の袖は本堂の物置のスペースを利用しました。
下手(しもて 舞台の向かって左側)側にあった物置の窓をふさぐことができず、ほんのり光が入っていましたが、開演直前に会場を暗転したとき、期せずして光が障子に透けて、なんとも昭和の住居感が醸し出されました。これは怪我の功名。

暗転時…肉眼では全体的にもう少し明るく見えていて、いい雰囲気でした

舞台設営に限らず、この京都公演はいろいろと制約のある中でベストを探る取り組みでした。が、言うなれば、まぁ、あれが限界でした。

でも、諦めず、無理もせず、の着地点を見つけられた、と思っています。

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