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【27話】幼馴染みの想いで話(唯と梨紗ちゃん)

今回は、前回【26話】の続きです。 

続 ライブへの情熱

「唯 いよいよね」
「そうだね 梨紗ちゃん」
「唯 緊張してる」
「してないよ ワクワクして楽しいよ 梨紗ちゃんは どーお」
「私は少し緊張してるわよ」
「してないでしょう 梨紗ちゃん 目がキラッでしてるよ」
「そっ そうかしら 唯にはすぐ分かってしまうわね」
「そりゃ そうだよ」
「じゃあ いくわよ」

1曲目:ロマンス(岩崎宏美)唯バージョン

ラブリーキュート な唯 ちゃんが、観客に向かってペコッとお辞儀をして、ニコッとします 。
そして、アイスビーテイー な梨紗ちゃんの、エレクトーンでのハードなイントロが始まります。
すると、突如変貌する唯ちゃんは、ハードに縦横無尽に動き回り、中高音からの力強く且つクリアーに歌い出します。
もう唯ちゃん、ノリノリです。
梨紗ちゃんの、力強く流れるようなベース音、ベースペダルを両足で操作しています。
真骨頂は、ラストのサビの繰り返し、唯ちゃんの一番の見せ場です。

「あなたお願いよ 席を立たないで 息がかかるほど そばにいてほしい
あなたお願いよ 席を立たないで 息がかかるほど そばにいてほしい」

これがワンセット。
1stセットはオリジナルキーで、2ndセットは半音上げ、3rdセットは更に半音上げ、普通ならここでオリジナルキーにもどしてエンディングに入るのですが、梨紗ちゃんからのアイコンタクトで、4thセットで更なる半音上げを、そして一気にオリジナルキーに戻して、観客を指さし、

「~あなたが」

で、ピタッと演奏が止る。
あえて、「好きなんです」は言わず含みを持たせる、終わり方です
静まるホール、唯ちゃんがペコッとお辞儀をして、ニコッとします 。
そして、大きな拍手が響き渡ります。

2曲目:そよ風の誘惑(オリビア・ニュートン・ジョン)

梨紗ちゃんのピアノから、静かに始まるイントロが奏でられます。
唯ちゃんは、マイクスタンドのマイクを、両手で包み込むようにしてニッコリとして、クリアーな高音と裏声を適宜に入れて、歌い上げて行きます。

「There was a time when I was
                            in a hurry as you are I was like you~」

そして、曲の中盤から後半にかけて、徐々に盛り上がるところで、唯ちゃんは、マイクをスタンドから外して、片手に持ち直します。

「Have you never been mellow
   have you never tried to find a comfort from inside you
      Have you never been happy just to hear your song
        Have you never let someone else be strong」      

唯ちゃんのボーカルと、梨紗ちゃんのピアノが一体化して、エンディングへと向かっていきました。

3曲目:ベートベン交響曲第7番第4楽章エルガー行進曲 威風堂々 第1番  梨紗バージョン

ベートベン交響曲第7番第4楽章(ピアノで演奏)と、エルガー行進曲 威風堂々 第1番(エレクトーンで演奏)を繋ぎ合わせて5分以内に収るように、また曲もロック調にアレンジした曲です。

今日の梨紗ちゃんは、ノッテいます。
梨紗ちゃんのノリは、唯ちゃんのそれとは異なり、静かにノリます。
表情が虚ろになり、冷たさが増し、あくまでも軽くゆっくりと、首を縦に横に振ったりします。
唯ちゃんが言うには、

「あ~あ 梨紗ちゃん また どっか行っちゃったよ 
               唯の所に戻ってくるんだよ~」

だそうです。

拍手喝采で終えた梨紗ちゃんと唯ちゃん、お辞儀をして、無事大成功で初ライブが終了しました。

気になる次の人

そして、次の人の演奏が始まりました。
どうも、高校生ぐらいの男の人です。

「次の人 学生服着てるんだよ 高校生かな 梨紗ちゃん」
「そうね あの制服だと中学じゃないかしら 私達より学年上だと思うわ」
「アコギだけでやるみたいだよ 何するんだろうね」
「プログラムには クラップ(Clap )ムード・フォー・ア・デイ(Mood for a Day)ってあるわよ イエス(YES)の曲ね」

「イエス・・唯はラウンドアバウト(Roundabout)しか知らないんだよ」
「私もよ」
「始まるよ 少し見るんだよ」
「そうね・・・・上手ね・・どんな人か気になるわね」
「左手 忙しいね」
「こんな曲も あったのね」
「拍手沢山 もらえるといいね 梨紗ちゃん」
「そうね 唯 そろそろ行こうか」
「そうだね もう唯お腹ペコペコだよ」

拍手の心配は、全くいりませんでした。
そのテクニックに、拍手喝采だったのです。
唯ちゃんと梨紗ちゃんよりも。
この男の人、そのうち出会うことになります。

唯ちゃんと梨紗ちゃんは、その後も小規模なコンサートに出場しました。 その中には、老人施設の慰問や保育園などの、ボランティア的なものもありました。
ポップ系以外にも、クラッシック・演歌・アニメ・童謡等その場に合った曲を演奏したそうです。
活動は、中学3年生の、1学期中間試験前まで続き、高校受験勉強のため中断しました。
二人の活動は、意外にも学校内で知る者は、いなかったようです。

そして、高校合格後、高校1年の春にバンド結成することを目指し、楽器店のメンバー募集掲示板に、張り紙をしました。

「メンバーの募集です 募集だよ ギター、ベース、ドラムです だよ
下手な人はいりません、上手な人でお願いします お願いだよ」

と、これで本当に来るのでしょうか。
いきなり、ハードル上げてしまいました。
唯ちゃんと梨紗ちゃんの実力からしたら、致し方ないかと思いますが。
張り紙には、店長さんの計らいで、唯ちゃんと梨紗ちゃんの写真が入ってたそうです。
もちろん、梨紗ちゃんは嫌がりましたが、唯ちゃんと店長さんに、無理やり説得させられてしまいました。

さて、高校1年の春に、バンドが結成されるのでしょうか。
唯ちゃんはともかく、梨紗ちゃんが納得出来るような、上手な人が入ってきてくれるのでしょうか。

この話は、また近いうちに、想いでを語って貰いましょう。
また、次回に、お会いしましょう。

【索引】 【登場人物】

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#東雲 #しののめ #小鳥遊 #たかなし #ライブ #バンド


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