届くはずのない声だとしても
このnoteを亡くなられた彼に捧げます。
最初はnoteを書こうかすごく迷った。言葉にすると、すごく安っぽくなってしまうと思ったからだ。でも書くことで、誰かが彼に思いを馳せられますように。僕が彼をいつでも思い出したり、また彼と会えたりできるように。ふとした時でいいので、彼が僕を天国から見てくれますように。そんな思いで、書いてみます。
彼というのは会社の先輩であり、同じ人事チームの仲間でもある。また少しの期間ではあるけれど、色んなことを語り合った友人でもある、というのはかなり恐れ多いが、僕は勝手にそう思っている。
2019年9月28日、そんな彼が36歳という若さでこの世を去った。
僕がその訃報を聞いたのは、旅行先の金沢で、いっしょに旅行に行った仲間と離れて、ひとりでコンビニに出かけたときのことだった。
彼とは2年弱の付き合いになる。僕がいまの会社に2年前の7月に転職して、当時病気で休職中だった彼が戻ってきたのが1ヶ月とか2ヶ月後だったと思う。
第一印象は穏やかで、人当たりが柔らかく、しっかり目を見て挨拶してくれる礼儀正しい男。そんな印象だった。
初めて出会ったとき、僕らのチームは、女性2人と僕と彼。彼が復帰するまで、僕は女性2人といっしょに仕事をしていた。
特に困ったことはなかったが、それでもやっぱり同性だから話せることや同性だから何も言わなくてもわかってくれるものがあるのは事実で、貴重な同性の仕事仲間が戻ってきて、すごく嬉しかったことをいまでも鮮明に覚えている。
仕事で絡むこともあり、いっしょにランチに行ってお互いの仕事の相談をし合ったり、ふとした休憩に付き合ってもらってミスチルやお酒が好きという共通点や、家族の話、彼の病気の話や彼の友人の話をしたり、天気が悪いとお互いに体調崩しがちでお互いに心配し合って励ましあったり、ちょっとした冗談を言い合ったり、とにかくいろんな話をした。
彼は僕のどんな話も否定することなく、心をオープンにして聞いてくれて、ときには僕にはもったいないぐらい褒めてくれて、彼といるときは居心地がよかった。
お互い気を遣いすぎて、お互いに敬語すぎたので、側から見たら他人行儀でギクシャクしてるように見えたのかもしれない。でも僕にとっては紛れもなく、仲のいい先輩であり、同僚であり、友人だった。
さて、訃報を聞いたときに戻ろう。
正直言って、コンビニに向かう途中、訃報を聞いたときは、彼の死は全然受け入れられなかった。信じられなかった。テキストで訃報を知ったということも影響していたのかもしれない、彼の死を信じたくなかったのかもしれない。
「コンビニに行ってくる」と旅行仲間には言って出てきてたので、「10分ぐらいで戻らないと」と思いつつも、彼とはいま向き合わなければいけないと直感的に思った。仲間には申し訳なかったが、黙って、宿泊先の庭園に赴き、時間を取って、彼に思いを馳せることとした。
彼と過ごした日々を思い出していたら、涙が止まらなかった。もっと話せばよかった、もっと色んなことをすればよかった、そんな後悔が湧き出てくる。
いつも家族や友人、知人が亡くなると湧き出てくるあの無力感。そして悔しい気持ちと悲しい気持ちで心の中がぐちゃぐちゃになった。
1時間ぐらいは外にいただろうか。
それでも気持ちの整理は出来なかった。涙が出ては、涙を止めようと遠くの海や島などの景色を見て、でも止まらなくて。
側から見たら、黄昏ていたようにしか見えなかったと思う。実際に旅行仲間は、旅館のベランダから僕のことを見つけて、黄昏てると思ったようだ。黄昏てる様子を盗撮した写真が送られてきたが、なかなかシュールだった。
本来このnoteに載せるべきじゃないだろうが、きっと彼もあの屈託のない笑顔で、「髙見さん、なにしてんすか!旅行楽しんでくださいよ!」ってツッコんでくれると思うだろうから、載せておく。
(ちなみに黄昏るというのは日本語的には間違いらしいが、大目に見てほしい)
何度も目をこすったり、深呼吸をしたりしていたから、仲間も僕が泣いていたのには遠目でもさすがに気づいたようだ。
チェックアウトの時間が迫り、まだ彼に思いを馳せたかったが、部屋に戻ろうとすると、ベランダから「たかみー!」と手を振ってくれた。
みんなの弾けるような笑顔に一瞬、反応に困ったが、寂しさとか悲しみとかが混ざった複雑で難しい気持ちになっていたので、肩の荷が少し下りた気がして、救われて、その安堵感からまた泣きそうになった。思いっきり作ったぎこちない笑顔で手を振るのが精一杯だった。感謝しかない。胸が鷲掴みにされた。
旅行から帰ってきた次の日に彼のお通夜で、すこやかに眠る彼と会って、お別れを言うことができた。でもいまだに彼が亡くなった実感が湧かない。(お通夜の前に外出してて、その予定も長引いて、急いで家に帰って、久しぶりにスーツを着ようとしたらカビてて、スーツ買ってたら遅くなってごめんなさい。もっとゆっくり彼と過ごしたかった。でもこんなエピソードも彼なら笑い飛ばしてくれそうだ)
お通夜の会場には彼の好きなミスチルの曲が流れ、彼の幼少期からの写真、会社の名刺など彼の思い出の品が飾ってあった。
お通夜に来られた方は彼と対面し、みんな泣いていたが、みんな彼の話をしながら涙を流しながらも、彼の思い出話で笑顔を見せていたのが印象的だった。不謹慎かもしれないが、その様子が、人を愛し、人から愛される彼らしい温かみのあるお通夜だった。
彼の好きなところは挙げだしたらキリがない。
・柔和なところ
・他人に対して気遣いができ、物事を多面的に考えようとするところ
・責任感もこだわりも強いところ
・屈託のない笑顔をするところ
・礼儀や道理を重んじるところ
・家族や仲間思いが強いところ
・病気に向き合い、前向きに自分の人生を歩んでいたところ
彼は結婚されていたが、9月27日の結婚記念日は必ず奥様と過ごすと、奥様とした約束を果たし、その翌日に亡くなった。かっこよすぎだよ。いつまでも彼は自分らしく生きるために、走り抜けていたように思える。
僕は彼と出会えて幸せだった。男から見てもカッコいいと胸を張って言える男だよ。
彼ともっと話したかった。最終出社となってしまったあの日、会社付近ですれ違ったとき、簡単な挨拶だけじゃなくて、話せばよかった。何もしなかった後悔、何も出来なかった無力感、そんな思いはいつまでも尽きることはないだろう。
僕は、僕が大切にしたいと思える人を大切に出来ているだろうか。時間は有限で、お金よりも時間の方が大事だ。僕は彼と同じように自分が大切にしたい人を大切にし、人を愛せる人になりたい。
長ったらしくなってしまったので、最後に彼が好きなミスチルの歌詞と彼へのメッセージを綴って、このnoteを終わりにしたいと思う。
届けたい 届けたい
届くはずのない声だとしても
あなたに届けたい
「ありがとう」「さよなら」
言葉では言い尽くせないけど
この胸に溢れてる
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"永遠のさよなら"をしても
あなたの呼吸が私には聞こえてる
別の姿で 同じ微笑みで
あなたはきっとまた会いに来てくれる
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Mr.Children / 花の匂い
まずは長い闘病生活、本当におつかれさまでした。訃報を聞いたときは、「早すぎるよ、ふざけんなよ。なんでだよ。」ってやり場のない気持ちを口にして、ごめんなさい。
あなたは強い人だから辛い顔をあまり見せなかったけど、僕らにはわからない苦労がたくさんあったと思います。お通夜のあといろんなこと思い出したり、考えすぎて、熱出しちゃってごめんなさい。
あなたがホワイトプラスという会社をすごく好きだったことは十分伝わっています。僕もこの会社が好きだからあなたから受け継いだ想いやモノを、さらに前に進ませることができるように、僕なりに頑張ります。頑張りすぎないようにって言われそうですけど笑。
この先、会社は月日とともに色々と変化していくでしょう。でもあなたと一緒に働いたという事実は誰も奪うことができないし、あなたのように誠実な人たちの集まりであることもおそらく変わらないし、変えるつもりもありません。
だから心配しないで、ゆっくり休んでください。また酒飲みに行きながら、くだらない話も生前できなかった話もしましょう。
あなたのご友人とも話したいので、生前よく行っていたご友人のお店も今度会社の仲間と行ってみます。会社でのあなたの話を、落ち着かれたら、奥様にも話させてください。
まだ心の整理もついていないし、あなたの穏やかな笑顔で「髙見さん」ってまた話しかけてくれる気がしてて、だから「さよなら」って言葉を贈るのはなんか違くて。
だからこうだろうな。
「また会いましょうね」
そんな届くはずのない声だとしても
あなたに届けたい。この声、届け。
髙見唯樹
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