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妄想デートのはなし

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憧れデートの妄想をものすごい熱量で語っています
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記事一覧

君の部屋の合鍵を手にするはなし

「はい、これ」 仕事に向かう彼の手から、銀色に光るひんやりとしたそれを手渡される。 「家出る時にこれ使って。そのまま持って帰っていいよ」 寝惚けまなこの私の頭は彼の言葉を上手くのみ込めず、ただ静かに頷き玄関の扉が閉まるのを見送った。 手のひらにちょこんとのった見慣れぬ鍵の感触をたしかに認識するようになって初めて、合鍵を渡されたのだと気付いた。 私が、彼の部屋の合鍵を、持つ 心の中で一言ずつゆっくりと呟く。 別に同棲しようと言われたわけでも、ましてやプロポーズをされ

真夏の蜃気楼から逃げ出すように

「夏のプレイリスト作っておいてよ」 来週のドライブデートに備え、彼に夏のプレイリストをリクエストする。 私の夏のドライブプレイリストはちょっぴり湿っていて帰り道の夕暮れ時みたいだから。 毎日じりじりと焼かれるような暑さだと、外へデートに行くのも億劫になる。けれど、君はそんなのお構いなしでどこかへ出掛けたいと言う。 私は日焼けするのも、暑い中マスクをしなければいけないのも嫌だから 「ドライブしよう」 と提案した。 「いいね」 君はどこかへ行きたいくせに、行きたいところが

ゴールデンウイークは私を車で連れ去って

君と一か月以上会えない日々が続いている。 休日は電話したり、たまにビデオ通話をしたりするけれど、すればするほど会いたい気持ちだけが風船ガムを膨らませるように大きくなっていく。 たぶんもう弾けてしまう。 私たちは一緒には暮らしていない。 お隣に住んでもいなし、歩いて行ける距離でもない。 君の元へ行くには電車で一時間くらい。 近くはないけど遠すぎるわけでもない。 なのに会えない。 会いたい。 ゴールデンウイークは君の仕事が休みだから、私を迎えに来てよここまで。 車なら3密は避

アイススケートに出掛けよう

冬になると無性にアイススケートをしたくなる。別に屋外リンクでしたい訳じゃないのに。どちらかといえば夏でも滑れる屋内スケート場に行きたいのに。 スケートデートに想いを馳せるのはいつだって寒くなってからだ。 君は運動音痴ではないけど、ウィンタースポーツは苦手で。私は運動音痴だけど、ウィンタースポーツは中々に得意。 乗り気じゃないのを承知で「ほら、スケートに行きますよ〜」とぬくぬく丸まる君に後ろから抱きついて、こたつから引っ張り出そうと試みる。もちろん私が引っ張り出せる訳もな

夜のって枕をつけて背伸びしたデートを君と

「夜の」という言葉はどんなに大人になっても私を魅了する。 夜の動物園 夜の美術館 夜の水族館 夜の散歩 夜のおやつ 夜の逃避行 幼い頃はサンタクロースを一目盗み見ようと夜更かしを試みたけれど、何度やってもいつの間にか眠ってしまっていた。 朝起きると、サンタさんとトナカイさんに用意したお菓子が減っていて、お手紙がなくなって代わりに両親の筆跡とは異なる返事が残っていた。サンタクロースの実存の片鱗に触れられた気がして、嬉しく、でも自分の目で確かめられなかったことに悔しい思いを抱

雨の日にも会いたい、あなたに

雨の日のデートです。mosoです。 明日の天気予報は一日中雨。一か月振りの日中からのデートだというのに。 HUNTERのお洒落長靴は持っていないから、どこのブランドか分からない長靴を履いていこう。あぁ、でも足が蒸れるかな。まぁ脱がなければバレないか。 私は傘を指すのが下手だから家から駅までの十分ほどの時間でスカートにまだら模様を作ってしまう。ピンクがところどころ濃いピンクになっていく。雨の日の電車の中は湿ったニオイに満ちていて気分がなんとなくじめじめする。今日はせっかくの

レインボーブリッジを歩こう

梅雨って七月に入ったらすぐに明けるものだと27歳になっても相変わらず思ってしまう。今年の夏は冷夏になるのだろうか。 蒸し暑くなる少し前の季節がいい。夜風がまだほんの僅かに冷たく感じるくらいの。 日が沈む前、田町で待ち合わせをしてレインボーブリッジを歩いて渡るのだ。コンビニで飲めないお酒を買っちゃう。空きっ腹にお酒は良くないか。でもまぁいいや。スミノフ片手に芝浦を目指していく。 風が強く吹いていて、車もごうごう音を立てて駆け抜けていくから君の言葉を何度も聞き返す。諦めたよう

土曜は昼過ぎまでベッドにいたい

mosoシリーズです。いざ。 付き合って1年半。毎週末というわけではなく、月に1回~2回は互いの家に泊まるようになって3ヶ月。 君はたいてい金曜日は誰かと飲んでくるから、私はひとり金曜ロードショーを見ながら、スーパーで値下げシールが張られたポテトサラダとから揚げをつまみぼんやり夜を過ごす。時計の針は11時半を指すか、指さないかのところだ。画面を下に向けていた携帯電話をひっくり返し、ロック画面を確認するけれど変化なし。 ほんの少しだけいじけて、お風呂の支度をし、念入りに髪と

あの滝みたいな花火を見にいきたいの

「あのさ、前話したナイアガラの滝みたいな名前のすっごい花火が見られる花火大会どこだっけ?」 「うーん、色々あるけど、ゆちゃんが言ってるのはたぶん新潟の長岡花火じゃない?行く?」 こういう私の些細な言葉やワガママなお願いにちゃんと向き合って欲しい。フットワークが軽くて、思い立ったが吉日!でわくわくすることにスッと飛び込んでいける人。 何の気なしに言い出したことを覚えていてくれて、調べてくれて、行くよ!ほら!忘れ物あったら向こうで買えばいいよって、くしゃっと笑うの。 最高の