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星芒鬼譚28「お前がどうしてもってんならしかたねー。とことん付き合うさ」

一瞬でも力を抜いたら、意識を手放してしまいそうだった。
執拗なまでに追い込まれ、腹を蹴られ下がった顔を殴られて、夏美はすでにぼろぼろだった。
呼吸がいっこうに整わない。
そこへさらに追い打ちをかけるように武仁の二本の短刀が襲いかかってくる。
あれじゃ躱しきれない、と光太郎が思ったとき、夏美の目の色が変わった。
右の短刀を躱し、左の短刀を薙ぎ払うと次の瞬間には武仁の喉元に薙刀の切っ先をつきつけていた。
体が勝手に動いていた。
相手は仲間だというのに、今、自分は本気で斬ろうとしていたのだ。
自分の闘争本能に戸惑う夏美を見て、武仁はにたりと笑った。
のぞいた犬歯が牙のように鋭く光った。

「ほら、斬ってみろよ。できるだろあんたなら!」

夏美の瞳が揺れた瞬間を武仁は逃さなかった。
薙刀を弾くと、腹に渾身の蹴りを入れた。夏美の体が後ろの柱へ叩きつけられる。
油断した。いや違う、迷ってしまった。
夏美は小さく呻いた。悔しかった。
ははは、と武仁は心底楽しそうに笑った。
光太郎が叫ぶ。

「もういいやめろ!全部俺のせいなんだ!だったら俺が、」
「馬鹿野郎!」

夏美のかすれた恫喝に、言いかけた言葉を飲み込む。

「全部お前のせいなわけないだろ…」

半身を起こした夏美は肩で息をしている。
俺のせいだろうが。武仁が裏切ったのも、お前がそんなになってるのだって。
そう言いたかったが、声が出なかった。

「そうやって何でもかんでも一人で背負うな」

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