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星芒鬼譚37「よろしい!じゃあ、まずは基本の正拳突き千本!!!」

「もう~!京都見どころ多すぎ!全然見切れないんだけど!!」

清水寺を出たところで、アマニータがへろへろになりながら言った。
荷物を抱えたフランケンが後ろからのこのこついてくる。

「さすがにこの日程で名所を回りきるというのは無理があったかもしれませんね」

さらに後ろを、きょろきょろ周りを見回しながらマルコが歩いてくる。

「いーじゃん、帰る日先延ばしにすれば」

のんきな声にアマニータが噛みついた。

「そういうわけにもいかないから困ってるんだっつの!」
「え、そーなの?」

フランケンはタブレットでスケジュールを確認しているらしかった。

「帰ったら今度は魔女集会に出掛けなくてはなりませんから。九尾に邪魔されなければ完璧だったのですが」
「へえ、お前結構忙しいのな」
「アンタと一緒にしないでよ、暇人」
「誰が暇人だよ失礼だな」
「ホントのことでしょ」

そんなやりとりをしながら石段を下りきると、土産物屋が立ち並ぶ清水坂に着いた。
アマニータは急に頭を抱えた。

「そうだ、魔女集会のお土産どーしよ。やっぱ無難に八ツ橋?」

マルコが店先に置いてある生八ツ橋の箱を手に取り、表と裏とを交互に見た。

「でもあんま日持ちしなさそうだぜ。あと個包装じゃないっぽい」
「アンタ意外とそういうとこしっかり見てんのね。あー悩ましいわー!」

ああでもないこうでもないと言いつつ土産物屋を覗きながら歩いていると、古びた朱塗りの門の前を通りかかった。

「あーっ!ねえ、あそこいい感じ!写真撮ろ!!」

門の奥に色とりどりの玉が吊り下げられているのを見つけて、アマニータが駆け寄った。
スマートフォンの角度を変えているうちにこれぞという角度を見つけたらしく、アマニータはフランケンを手招きした。
マルコはその様子を少し離れたところから見ていた。勝手に入ろうとして邪険にされるのはわかっている。
しかし、フランケンがアマニータとよろしくやっているところなんて見たいわけもなく、吊り下げられている鮮やかな玉の群れに目をやった。絵馬のようなものだろうか。たしかに写真には映えそうだ。

「ちょっとマルコ!アンタも入るの!」

突然アマニータの声が飛んできて、マルコは驚いて振り返った。

「え?俺も入っていいのか?」
「決まってんでしょ!早くしなさいよ!!」

面食らいながら、お、おう…と答えると、マルコはアマニータの左側に加わった。
珍しく三人の写真が撮れた。
突然のことで上手く笑えていたかはわからなかったが、シャッターを切ったあと、アマニータとちらりと目が合い、一瞬笑ってくれたのでどうでもよくなった。
今、狼の姿になって良ければ、尻尾をちぎれるほど振りたかった。

「よし!いい感じ~!さ、お土産買うよ~!!」

インスタを更新し終えたアマニータが、乱暴にマルコの腕を掴んで歩き出した。
フランケンがムッとしたのを感じて、マルコはなんとなく優越感に浸りながら引っ張られていった。

***

「え!?稽古をつけてほしい!?!?」

銀角の声が山一帯に響き渡った。

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