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星芒鬼譚38「お前らは揃いも揃って!!」

京極がいつものように外の階段でカプリコを齧っていると、ポケットのスマートフォンが震えた。
部下の賀茂からの着信だった。

「もしもーし」
『京極さん!すみません!何日もお休みいただいてしまって!!』

声からすると元気なようだった。
近隣住民を避難させるために鬼火を大量に出現させたことが原因なのか、住民たちの避難が完了したところで賀茂は急に意識を失って倒れ、京極が慌てて病院に運び込んだのだった。
命に別状はなく眠り続けているということだったが、ようやく目を覚ましたらしい。

「月曜には退院できるってことなので、一応報告をと思いまして」

賀茂は病院の中庭にいた。
点滴類が外れ晴れて自由の身となり、京極に連絡をしなくてはと急いでここに来た。病棟では通話禁止だからだ。
数日ぶりに浴びる日の光は、眩しいけれど気持ちよかった。

『おう、そうか。よかったな』
「あと、京極さんですよね?両親に連絡したの」
『あー、まぁ一応な』
「もう、しこたま怒られましたよ!元々の呪力が少ないんだから無茶するんじゃないって」

実家に顔を見せるのはまだ先にしようと決めていた。もっと立派に警察の仕事をできるようになってからにしようと。
だから、こんな形での再会は賀茂にとっては本意ではなかった。
久しぶりに会った両親は、少し小さくなっていた。
叱られるとは思っていた。もちろん叱られたが、それ以上に褒められ、抱き締められた。
力のない、できそこないの自分のことも、大切に思っていてくれたことは、頭ではわかっていたつもりだったが、なんだか涙が出た。
思い出したら鼻の奥がツンとして、賀茂はスマートフォンを耳に当てたまま上を向いた。

『はは、そりゃ悪かったな』
「ほんとですよ!でも…ありがとうございます」

京極は、賀茂の声色から何かわだかまりが消えた様子なのを察した。
食べ終わったカプリコの包装を、よれよれのコートのポケットに押し込む。

『あ、お礼にカプリコ持っていきますね』
「いやなんでカプリコ?もっと他にあるでしょうよ」
『箱で持っていきますから。じゃあ、おつかれさまです!』

一方的に電話が切られた。
京極の頬がふっと緩んだ。またうるさくなるだろうことが、なんとなく嬉しかった。

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