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星芒鬼譚10「…己の分を知るが良いわ」

晴明の傍らには薄紫の装束の華奢な女性がたたずみ、鉄扇を携えたもう一人の男ーーー蘆屋道満の足元には、派手な格好の野良猫のような少女がしゃがんでいた。

「式神と…管狐か」

玉藻は目を細める。

「こいつらには心の迷いなんてものありませんからねぇ」
「そゆこと!あんたの得意技は通用しないぜ」

道満の言葉にのっかるように、少女は得意気に言った。

「あるじ様、いかがいたしましょう」

華奢な女性が、構えながら晴明の指示を仰ぐ。
少女と道満は目を合わせた。
玉藻は女鬼にちらりと目線を送った。かちゃりと女鬼の刀が音を立てる。
晴明の指が玉藻を示さんとしたとき、すでに女性は装束を翻して動き出していた。業火を操り飛んで来る刀を牽制する。
少女は袖口から素早く取り出した暗器を投げ、道満は襲いかかる女鬼の刀を鉄扇で弾き返す。
思わず呼吸することも忘れて見入っていた光太郎だったが、はっと我に返った。

「今のうちに撤退だ!行くぞ」
「はい!」

武仁がひよりに手を貸しながら立ち上がる。
玉藻が横目で三人を睨み付けた。

「煩いぞ、子狸共」

白銀の刀がひよりに襲いかかる。
すんでのところで光太郎が受け止めた。
が、さっきのかすり傷が鈍く痛んだ。力がうまく入らない。光太郎の顔が歪む。

「うわああああ!」

光太郎があっと思ったときには、武仁は短刀で玉藻に斬りかかっていた。
二本の刀がそれを制する。
道満が顔色を変えた。

「イヅナ!」

イヅナと呼ばれた少女は小さく舌打ちし、武仁を押さえている刀に向かって暗器を投げたが女鬼に弾き落とされてしまった。

「光太郎さん逃げてください!」

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