見出し画像

【要約】キャリアの心理学/渡辺三枝子

キャリアコンサルタントの講座に通学する前に、予習として読んでみました。個人的な要点を抜粋してまとめています。

<絵文字の意味>
💡…気づきのメモ

~今回の個人的刺さりポイント~
・サビカスのキャリア構築理論が自らの経験と重なるところがあった
・ジェラットの右脳を活用する方法(夢やビジョンを持つ)に共感。ホールのキャリア成功の使命モデルにも通じる。
・過去に経験した休職というトランジションがこれから目指したいキャリアに新たな視点で統合(ホールのいうアイデンティティの統合、シュロスバーグのいうトランジションの統合)された
・ハンセンの包括的(バランスのとれた)な人生の実現は自分の価値観と一致している(人生の調和)

Ⅰ.キャリア心理学の基礎理論

1.キャリアの概念に不可欠な4要素

(a)人と環境の相互作用の結果
・職業や職務への「個人の働きかけ」に焦点が当たっている

(b)時間的流れ
・一時点での出来事や行為、あるいは現象を指す言葉ではなく、必ず「時間的流れ」「時の経過」が内包される
・いま経験していることを、過去と未来という時間軸のなかの経験として理解する

(c)空間的広がり
・個人の行動は具体的な空間(環境や場)を舞台として繰り広げられる

(d)個別性
・自立性、主体性の生かされる働き方、自己決定、自己選択という概念は、人間の「個別性(固有性)」を認める姿勢から導かれる

2.キャリア行動理解における4つの代表的なアプローチ

(a)  特性論からのアプローチ
・個人特性と仕事特性の適合(マッチング)によって職業選択を証明しようとするもの
・個人のもつ特徴と職業が必要とする要件との一致度が高ければ、成功の可能性や満足度が高まると予想
・マッチングを測るためのパーソナリティテストや職業分類が用いられる
・個人が自分自身ならびに職業に対する客観的理解を深めるのに有効

(b)  精神力動からのアプローチ
・直接観察できない欲求や動因、さらには無意識に特に着目
・幼少期の体験(親の養育態度含む)を最重視し、それが職業選択に影響を及ぼすと考える

(c)  学習理論からのアプローチ
・キャリアにおける意思決定の要因として、遺伝的特性や環境に加えて、学習経験の影響が特に重視される

(d)  発達論からのアプローチ
・職業選択の一時点にとどまらず、生涯にわたるキャリア発達の解明に焦点を当てている
・変化する自己と状況の中で、人と職業のマッチングの過程は決して完全には達成されず、断念と統合の過程こそキャリアだと考える

3.社会構成主義

 ・言葉は、各個人がこれまで社会で生きてきた経験に裏打ちされて意味づけられている(=社会的に構成されたもの)
 ・たった一つの単語であっても、各個人によって異なる意味をもつ可能性があることを常に意識する必要がある
→ 各個人が使う言葉の意味をきちんと尋ねて確認することが対話の基本

Ⅱ. 9人の代表的なキャリア理論

1.ドナルド・スーパー

出所)Make Career
https://www.make-career.site/career-counsellor-donald-e-super/

(1)キャリア発達は「自己概念」の形成と、その実現が達成される過程
■自己概念
・個人が自分自身をどのように感じ考えているか、自分の価値、興味、能力がいかなるものかということについて、「個人が主観的に形成してきた自己についての概念」(主観的自己)と「他者からの客観的なフィードバックに基づき自己によって形成された自己についての概念」(客観的自己)の両者が、個人の経験を統合して構築されていく概念

(2)人と職業の適合性に注目
・主観的に認知した自己および環境についての概念だけでは現実的な職業選択および職業適応という行動にはなりえない

(3)ライフ・スパン
・人生の発達段階を描写し、仕事とその環境や状況に適応するライフコースに焦点を当てる
・人生構造は、一度構築されても固定的ではなく、発達的なコースを進みながら、ときに再構築を必要とする
・キャリア発達は、暦年齢にゆるく関連した予測可能な発達的課題、あるいは年齢との関係を持たず不連続で予測不能な適応課題によって促される

■マキシ・サイクル
・生涯を通じた一連のライフ・ステージ。自己概念の実現が達成される過程。
成長段階(0~14歳)、探索段階(15~24歳)、確立段階(25~44歳)、維持段階(45~64歳)、解放段階(65歳以上)という5つの段階で構成

■ミニ・サイクル
・マキシ・サイクルにおいて、ある段階から新たな段階へと進むための意思決定の過程であり、新たな成長、再探索、再確立といった再循環(リサイクル)が含まれる
・あるステージから次のステージへキャリアが移行するとき、または病気や傷害、雇用主による人員削減、必要な人的資源の社会的変化、または社会経済的ないしは個人的出来事によって、個人のキャリアが不安定になるたびに起こる
💡自分の場合は、メンタルヘルス疾患による休職が原因で発生した

・生涯キャリア発達は階段状の直線的な変化だけではなく、ミニ・サイクルを経ながら、らせん状に発達していく
・どのライフ・ステージにおいても、環境と個体の要求にうまく対処できるかどうかは、これらの要求に対処する個人のレディネス(対処するために個人がどの程度準備できているか、すなわち、キャリア成熟の程度による)
※成人期のキャリア発達は、青年期のそれと比べると実質的にはるかに多様性に富む(キャリア適応力:成人期のキャリア決定の準備(レディネス))

(4)ライフ-キャリア・レインボー
・ライフ・スパンのアプローチをさらに明確にした概念モデル
・人が生涯に果たす役割は少なくとも6種類(子供、学習する者、余暇人、市民、労働者、家庭人)あり、それらの役割は少なくとも5種類の生活空間(家庭、学校、地域社会、職場、施設)において演じられる
・人生で主に演じるそれぞれの役割の重要性は、「情意的側面(思い入れの程度)」と「行動的側面(時間やエネルギーの投入の程度)」および「認知的側面」の3要素によって多重的に決定される

出所)mazrica times
https://times.mazrica.com/column/about-life-career-rainbow/

(5)アーチ・モデルの構築
※理論的にはライフ-キャリア・レインボーと変わらない
・左側の大きな礎石は人を支える心理学的、気質的側面。右側の礎石は社会を支える要素(経済的資源、経済構造、社会制度・設備)。
→ 社会的要因は人に作用し、人は自分が成長し社会の構成員として機能するとき社会に作用する
・アーチの要石は自己であり、意思決定をする人自身

出所)キャリコンスタディ
https://careerconsultant-study.com/super-life-career-rainbow/

2.ジョン・ホランド

出所)特集●ホランドの職業選択理論
http://www.koyoerc.or.jp/assets/files/349/07.pdf

(1)VPI(職業興味検査)の開発
・大学生を主たる対象として開発された心理テスト
・160の職業名に興味の有無で回答させ、結果は6つのパーソナリティ・タイプ(RIASEC)と5つの行動傾向尺度の合計11点の尺度得点(パーセンタイル順位)で解釈できるように構成されている
・日本版では、パーソナリティタイプの代わりに「職業興味領域」という名称を用いている

【背景】
★差異心理学(興味の測定とパーソナリティの類型論)
・職業興味とパーソナリティとが非常に関連深いと考えた
・人は比較的数少ないタイプに分類できる(大部分の人の興味や特性、行動は数種の枠で大別できる)
人と環境との交互作用の成果は、発達過程を通して徐々に個人のパーソナリティ・タイプの形成という形で具現化される
・18歳~30歳の間に、個人を特徴づけるタイプが決まる
・成人期頃までに形成されたパーソナリティ・タイプは、それ以降は「安定する」ため、一般的には変更させるのは困難

【6つの理念(抜粋)】
①職業の選択は、パーソナリティの表現の1つである
④同じ職業に就いている人々は似通ったパーソナリティの特性及び発達史を有している
⑥職業満足、職業上の安定性や業績は、個人のパーソナリティとその人の働く環境との一致の程度に依拠する

■差異心理学
・個人の性質や能力などの違いを研究する心理学で、差異から法則を明らかにしようとする

■類型論
・人間の行動や思考に見られる個人差を大ぐくりに捉えて、いくつかの典型的なタイプに分類することによって、複雑な人間のパーソナリティを整理しようとする立場
・いくつかの典型的なタイプに分けて、その特徴を捉えようとする手法

cf. 特性論
・個人の行動特徴を、測定可能な「特性(trait)」によって記述しようとするアプローチ
・人のパーソナリティが「特性」と呼ばれる要素の集合体であるとみなし、その特性の組み合わせ方によってパーソナリティ全体を捉えようとする方法
※特性…様々な状況において共通して示される行動傾向。どのような場面においてもその人らしさとして把握できる行動傾向。

(2)6角形モデル
※VPIの6つのパーソナリティ・タイプ(RIASEC)

出所)note「【人物解体新書】活躍したいならば環境を選べ!自らの可能性を広げるために適した環境があることを知っていますか?」/鈴木さくら
https://note.com/rogc_j_labo0926/n/n465069d9effe

・基調をなす第1次的仮定と、それを補足する第2次的仮定がベースにある

【第1次的仮定】
①大多数の人は、現実型、研究型、芸術型、社会型、起業型、慣習型の6つのパーソナリティ・タイプのうちの1つに分類される
②我々の生活環境の特徴も、現実的、研究的、芸術的、社会的、起業的、慣習的という6つの環境モデルで説明されうる
③人々は、自分持っている技能や能力が生かされ、価値観や態度を表現でき、納得できる役割や課題を引き受けさせてくれるような環境を求める
④人の行動はパーソナリティと環境の交互作用によって決定される

【第2次的仮定】
①一貫性
・6タイプ間の関連は心理的類似性を意味し、タイプ間の関連の一貫性は6角形モデルで示される
・2つのタイプ間の距離と心理的類似性は反比例する
②分化
・個人及び環境をタイプで明確に区別できる程度は、個人及び環境によって異なる
③同一性
・個人の同一性:自分の職業目標や自己知覚(興味、能力、才能などについて)の明確かつ安定した像を所有している
・環境の同一性:ある環境や組織が長期間にわたって、安定した、統合された明確な目標や任務などを所有している
④一致度
・それぞれのパーソナリティ・タイプは、それぞれに符号し、調和する環境モデルを求める
⑤凝集性
・6タイプは互いにまったく独立しているのではなく、理論的に見て内的関連性を持つ
・その凝集性は6角形を使って空間的に表現でき、タイプ間の心理的類似性はタイプ間の距離と反比例する

【パーソナリティ・タイプの発達】

出所)GCDF/キャリコンとしての備忘録
https://nn-lifelog-cc.hatenablog.com/

~子供と親~
子供の初期の活動がその後の長期間の興味や能力に影響を与える
・初期の経験が、自己概念や特徴的な性格特性、行動傾向の形成に大きな影響を及ぼす
・親の態度やパーソナリティ・タイプ、生得的特徴などが、環境的機会を左右するとともに、子供が将来乗り越えなければならない何らかの欠陥ともなる
・子供や親の態度や生得的な資質などによって与えられる経験の機会と内容を超越することで、独自の自己概念を形成できる

~興味による分化~
・興味のある領域に関係した活動により関心を持ち、その結果それを経験する機会も増えるため、ますますその興味の傾向は強まる。逆に興味を持たない領域に関係する活動や経験は避けられるため、ますます興味がなくなる。

3.マーク・サビカス

出所)キャリアのこれから研究所
https://future-career-labo.com/2020/10/30/mizuno01/

(1)キャリア構築理論
・職業行動への主観的な意味づけを強調
・過去から現在の経験に対する意味づけを踏まえ、今後の職業人生に自分らしい意味を見出していく、この一連の過程が個人にとってのキャリアとなる
・キャリアを構築する主体である個人や、個人が経験に与える意味に着目

【3つの視点】
(a)特性における個人差
・どのような職業が自分に合っているのかといった職業行動における「what」の側面(職業パーソナリティ)
(b)発達課題と対処方略
・どのようにして職業を選択し適応していくのか、つまりどのようにして職業上の発達課題に対処するために態度や能力を発達させるのかといった職業行動の「how」の側面(キャリア・アダプタビリティ)
(c)心理力動的な動機付け
・なぜ自分はその職業を選択するのか、なぜ働くのかといった職業行動の「why」の側面(ライフテーマ)

(a)職業パーソナリティ
・キャリアに関連した能力、欲求、価値観、興味によって定義される
個人-環境適合理論(P-E fit)に基づくホランドのモデルを高く評価しているが、個人の主観的な経験の意味や独自性を把握することは困難だと指摘。また、興味は変化するプロセスであり、安定した特性ではないとし、カウンセラーは職業適性や仕事上での成功を予測する指標として、興味を他の指標よりも優位であるとみなすべきではないとしている。


■個人-環境適合(Person-Environment fit)理論
・個人と環境とのマッチングを、ダイナミックなプロセスとして捉えようと試みた理論
・ディビスとロフカスのTWA(Theory of Work Adjustment)とホランドの6角形モデルとが主流をなしている
・個人が望むものと環境が望むものが一致しているか否かという視点から個人と環境の関係を考える理論的枠組み

【3つの前提から成り立つ】
①個人は自分の特性に合った環境を探し求める
②個人と環境の一致の程度が、個人と環境双方にとっての重要な結果と関連する。両者の適合が大きければ大きいほど、よりよい結果がもたらされる。
③個人と環境の一致は双方向的なダイナミックなものである。個人が環境に働きかけることによって環境を変化させることもあれば、環境が個人に働きかけることによって、個人を変化させることもある。・個人が自分に合った職業を探し求め、選択を行う主体は個人にある

・個人と環境に不一致があった場合には、不一致は個人に対する動機付けとして働く
・TWAでは、個人が環境との一致を獲得し、維持していこうとする試みを「適応スタイル」と呼ぶ


(b)キャリア・アダプタビリティ
・多様な役割を担う職業人が、その役割を果たし職業生活に成功と満足を得るには絶えず変化する社会環境へ適応することが求められる
・カウンセラーは、クライアントを見る際、社会自己という2つの観点を持つ必要がある
 - 社会:社会がクライアントにどのようなことを期待し要請しているのか
 - 自己:その要請に対してクライアント自身がどのように対処しようとしているのかという適応の問題

【発達課題とトランジション】
・社会環境が激しく変化する今日では、それぞれの発達段階の間にあるとされたトランジションは、各発達段階の中においても起こりうるものであり、また予測が困難な変化を伴って生じる
トランジション(ある状態から別の状態への移行)は、「連続的で予測できる変化」だけでなく、「不連続で予測困難な変化」も含む
・個人がトランジションに際して、変化を通じて『成長』できるという気づきを持ち、意思決定をするために自己や職業に関する情報を『探索』し、様々な行動を試みることによって安定した仕事を『確立』し、積極的にその仕事の役割を『維持』する。最後にはさらなる成長を目指して自発的に仕事を変わる準備をするために、今の仕事への関わりを『解放』していく。このアプローチで変化に対処するならば、個人はさらに効果的に適応することができる。(※ドナルド・スーパーの項を参照)

【キャリア・アダプタビリティの重要性】
・安定性を前提とした個人-環境適合モデルや職業発達モデルだけでキャリアを理解することは困難であり、機動性という変化を常態とするキャリア構築の概念として重要性を主張
・キャリア・アダプタビリティとは、現在および今後のキャリア発達課題、職業上のトランジション、そしてトラウマに対処するためのレディネスおよびリソース
・変化する様々な環境の中で人々は、職場や社会環境から要請されている発達課題に取り組むだけでなく、予測できないトランジションや、それに伴う精神的ショックへも対処する必要があり、これらの対処行動を可能にするための態度や能力を予め向上させておくことが求められている
・絶えず変化する環境の中で、自らも変化し適応を繰り返すダイナミックなプロセスを通じて、その都度自らの可能性を拡大させながら、自己概念を発達させ実現を目指していく。「ありたい自分になる」ための方法(how)こそが、キャリア・アダプタビリティ。

【キャリア・アダプタビリティの4次元】

出所)清泉女学院大学におけるキャリア教育の実践 に関する一考察/小泉真理・川北泰伸
https://core.ac.uk/reader/230242220

関心、統制、好奇心、自信という4つの次元から構成される
キャリア質問…人々が自分のキャリアを考える際、自らに問いかける内容
キャリア問題…その問いに対する否定的な反応
アダプタビリティ次元…その問いに対する肯定的な反応
キャリア構築のABC…各次元は、それに関連する「態度と信念」、「能力」で構成される。これらの頭文字がABC。個人が発達課題やトランジション、トラウマに対処する際のレディネスとリソースを表しており、これらにより具体的な「対処行動」が形成される
関係性の見方…個人がABCを「関心」から「自信」へと順次発達させていくとき、その個人にとって、社会や他者との関係性も順次発達したものになることを示す
・キャリア介入…「キャリア問題」を抱えている個人に対して、どのような介入をしたらよいかを表す

~キャリア・アダプタビリティのある人~
1.職業人として、自らの未来について「関心」を持つ
2.職業上の未来に対して、自らが「統制」をしている
3.自らの可能性と未来のシナリオを探索することに、「好奇心」を発揮している
4.自らの願望を実現するために、「自信」を持っている

①キャリア関心
・自らの職業上の未来に関わる関心
・未来志向、つまり未来に備えることが重要である、という感覚を意味
・計画的な態度(現在、直面している職業上の課題やトランジションだけでなく、将来行わなければならない様々な選択に気付かせる)、及び経験が連続するという信念(過去から未来へと経験が連続しているという信念を持つことで、現在の活動を自らの仕事上の願望やビジョンという未来の可能性に結びつけて考えることができる)によって、人々は計画能力を向上させたいと思い、この計画能力により、目指すべき未来に向かって具体的な活動の準備を始めることができる

②キャリア統制
・人々が自らのキャリアを構築する責任は自分にあると自覚し確信することを意味
・未来を自分自信が所有しているという信念、また偶然を待つのではなく主体的な選択によって未来を創造すべきであるという信念により、人々は自らの人生に責任を持つという感覚を生じる

③キャリア好奇心
・自分自身と職業を適合させるために、好奇心を持って、職業に関わる環境を探索することを意味
・新しい経験を受け入れようとする信念、また自分の可能性や多様な役割を試すことに価値があるという信念により、人々は新しいことに挑戦し未知なる世界へ冒険してみようという行動を起こす
・自己や職業に関する知識を増やし、自己や職業をさらに力する能力を向上させる働きを持つ
→ 現実的で客観的な職業選択が可能となり、自分自身と職業の適合性が図れる

④キャリア自信
・進路選択や職業選択を行う際に必要となる一連の行動を適切に実行できるという自己効力感を意味
・職業選択では、様々な複雑な問題が発生するが、これらを解決するには自信を持って問題に取り組むことが必要
・仕事や家庭、地域などでの日常的な活動において生じる問題を解決できた、という体験に基づく自信の積み重ねによってもたらされる
・自分が周囲に役立っていると認識することは、自己受容や自尊心を高め、「キャリア自信」をさらに強化する

(c)ライフテーマ
・職業にかかわる行動に駆り立てる動機や価値観
・個人が何のために行動するのか、行動する意味は何か、ということを表すと同時に、社会に貢献するために何に取り組むかということも含む
→ 他者にとって重要なことに取り組んでいるという確信は、アイデンティティ(自己の一貫性)を明確にし、社会的な意味および関係性の感覚を促進するため、自己概念にとっても重要なもの

・個人が職業行動に意味や方向性を与える解釈や人との関わりのプロセス
・解釈や人との関わりのプロセスはキャリアストーリーの中で語られ、キャリアストーリーは個人にとって意味ある選択や役割に適応するために個人が用いるライフテーマを明らかにする

【キャリアストーリー】
・個人が直面した発達課題や職業上のトランジションなどが語られたもので、なぜ個人がそのような行動をとるのか、またそのように行動することの個人的な意味が含まれる
・昨日の自分がどのように今日の自分になったのか、どのように明日の自分になっていくのかを説明するもの
・語られた内容は個人にとっての真実(物語的真実)であるため、歴史的な事実と異なるかもしれないが、「物語的真実」があることによって、個人は変化に直面したときに柔軟性を持ちながら一貫性を保つことができる
キャリアストーリーにまとまりを与えるものがライフテーマ
→ 変わる状況にただ単に反応するだけでなく、自らのライフテーマに基づくことによって始めて、適応に意味と方向性を与えることができる。ライフテーマは、自己の一貫性を維持させる原動力。


★キャリア構築理論のまとめ
過去から現在にわたって私たちが直面する発達課題やトランジションが、苦痛に満ちた否定的感情を伴った経験であったとしても、それらを自らの成長や新たな可能性を開く機会と捉え、勇気や希望という肯定的感情をわき上がらせながら新たな意味や価値を見出し、自らのライフテーマに関連付け具体的な目標へ転換するといった対処ができるならば、私たちはキャリア構築に向けて、さらに前進することが可能になる。そのとき、この発達課題やトランジションが、自分にとって真に意味ある経験であったと思える。

💡まさに自分の場合は「休職を経て人生が変わった」ことが当てはまる。
メンタルヘルスを悪化させて休職したとき、積み上げてきたキャリアの崩壊を感じ、自信を喪失した。しかし、「家族のためにも二度と再休職したくない。自分の弱みに向き合って変わりたい。」という想いを持ち、せっかく与えられた休職の時期を有意義な時間にしたいという意味づけができた。
そして、「①リワーク施設に通いながらストレスマネジメント力を向上させ、復職レポートを完成させ、体調が安定したこと」、「②自己理解コーチングを受け、本当にやりたいこと、人生のビジョン(ライフテーマ)を確立させたこと」によって、はじめはネガティブに捉えていた休職を、人生の転機となった発達上のプラスの経験として今は肯定的に捉えられている。

4.ハリィ・ジェラット

出所)Los Altos Town Crier
https://www.losaltosonline.com/people/obituaries/h-b-gelatt/article_f46e9250-f47d-11eb-a2f7-3b8166bb5970.html

(1)キャリア発達における意思決定アプローチ(前期理論)
①前期理論Ⅰ 主観的可能性
【予測システムと価値システム】by ブロス
・予測システム:選択肢それぞれがもたらす結果の起こりうる可能性を判断
・価値システム:各選択肢の結果の好ましさを判断
→ 2つのシステムから決定基準ができあがり、決定する
but このシステムを通じて人間は実際「一貫して」「合理的に」決定を行うことができるのか?
→ できないのであれば、予測システムと価値システムの両システムから算出された基準に基づいて、合理的に決定を行えるように援助するガイダンスが必要だと考えた
⇒ 価値システムにおける人間が陥りやすい誤りに注目
= キャリアにおける意思決定に当たっては、自分の興味に関連しているからこそ、望ましいものに思えてくる主観的可能性が採用されやすい
→ 客観的なデータを「燃料」として意思決定に活用する枠組みが必要
= 誤りに満ちがちな主観的可能性に縛られやすい「フリー・チョイス」を進行させることを目指す
・客観的なデータを与えることにより、主観的な思い込みでは、自分には無理だと考えていた選択肢にも、可能性があることを気付かせることもできる
・主観的な思い込みで狭められていた選択肢の範囲よりも、より幅広い範囲の中から選択できるようになる

②前期理論Ⅱ 連続的意思決定プロセス
【探索的決定と最終的決定】by クロンバックら
・探索的決定:個人が選択肢を絞っていくような決定
・最終的決定:最終的にキャリアを落ち着かせる決定
→ 探索的決定から最終的決定へと連続的にスムーズに進行するためにはどうすればよいのか、それを援助するにはどうすればよいのか?
⇒ 連続的意思決定プロセスを提唱(スムーズに探索的決定から最終的決定へと意思決定が進行するプロセス)

出所)てくてく/キャリアコンサルタント試験の学習帳
https://exam.teqteq.net/posts/97

~連続的意思決定プロセスのステップ~
①全選択肢に気付く
②十分な情報を得る
③情報の関連性と信頼性を検討する
④価値システムから、それぞれの結果を評価する

(2)左脳だけでなく右脳も使った意思決定(後期理論)
①積極的不確実性

・変化の激しい労働市場においては、与えられた情報が必ずしも、ある個人が職業生活をまっとうするまで真実であるとは限らず、本人自身の興味・価値観も、様々な経験を積むうちに変化するかもしれない
→ 1つの直線を指し示すような前期理論では補いきれない。。。
⇒ 前期理論を補うものとしての新たな2つのガイドラインを提示

(a)情報は限られており、変化し、主観的に認知されたものである
(b)意思決定は、目標に近づくと同時に、目標を創造する過程でもある
※最終的決定はありえず、いつも探索的決定。変化する自己と状況の中で、マッチングの過程は決して完全には達成されず、断念と統合の過程こそキャリア。職業選択は人生という大構造の中に組み込まれるべきプロセス。

不確実性を積極的に受け入れて、将来に向かって意思決定を創造するためには、客観的で合理的なストラテジー(前期理論)だけでなく、主観的で直感的なストラテジーを統合して用いていかねばならない
→ 想像力、直感、柔軟性が重要になる
= 「左脳だけでなく、右脳も使った意思決定」
・情報を「燃料」として取り入れるだけでなく、情報を選択や行動にあわせてアレンジしたり、アレンジし直したりすることも意思決定には必要
⇒ 連続した(個人と環境との)相互作用の中で、個人が現在と過去の状況をどのように理解し、自己に対するそれらの意味づけをどのように行うのかといったことにも焦点が当てられるようになった
★常に自分のキャリアを振り返り、探索し続けることによって、新たな意思決定に柔軟に主体的に関与していくことが重要

・依然、意思決定は、情報収集、選択肢の絞り込みというステップを踏むのであるが、その際に合理的・認知的な側面(前期理論)だけでなく、夢や創造性といった側面がむしろ重要な時代になってきた
・未来の予測が不可能な現代においては、夢やビジョンを持つことこそが、その不確実性を歓迎し(積極的不確実性)、未来を創造していく原動力となりうる
💡ビジョンや夢はブレない。不確実性によってそのための手段や目標が変わることはあっても。

5.ジョン・クランボルツ

出所)受験ネット
https://xn--uor874n.net/careerconsultant-krumboltz-schein-07-4947

■社会的学習理論(by バンデューラ
※心理学における「学習」…ある経験によって、新しい行動を獲得したり、今までとは異なる行動をとったりできる(行動を変化させることができる)ようになること
・他人を介して、社会的行動が獲得される過程に焦点を当てた理論
・直接経験による学習に加え、観察学習を強調
・学習における予期の重要性に注目し、自己効力感を提唱

(1)行動の獲得:学習
①直接経験による学習

・スキナーのオペラント条件づけの考え方に基づく
・オペラント条件づけは、弁別刺激(きっかけ)→反応→強化子(みかえり)という3項の関係(=3項随伴性)から成立すると考える
・弁別刺激:反応が生ずる機会を与える刺激
・強化子:反応の後に続き、反応を増加させる機能をもつ刺激。反応の後にそれが続くことによって反応が増加する「正の強化子」と、反応の後にそれが消去したり、呈示が遅延することによって反応が増加する「負の強化子」がある。

cf. レスポンデント条件づけ
・無条件刺激と条件刺激を対呈示(2つの刺激を一組にして実験動物に体験させる方法)するという手続き
無条件刺激:自然に起こる無条件反射のきっかけとなる刺激
条件刺激:ある条件反射のきっかけとなる刺激

②モデリングによる学習=観察学習
・モデリングの過程には、注意過程、保持過程、運動再生過程、動機づけ過程の4過程がある

出所)運動学習科学研究所
https://nagoya-hml.com/11-2/

(a)注意過程
・無数にある情報のうち、どの情報に注目し選び取るのかという過程
モデリング刺激と観察者の特質の双方の影響を受ける
 ※モデリング刺激…モデルとなる人やその行動の特徴が中心となる

(b)保持過程
・注意過程で選択されたモデリング刺激が象徴的な形で記憶に留められる過程。表象形(現在の瞬間に知覚してはいない事物や現象について心に描く像)には、イメージ言語の2つがある。
= 映像的な形でイメージとして記憶に保持されることもあれば、それを言語的に記号化して記憶に保持されることもある
リハーサル(モデル刺激を心の中で再演してみたり、実際にやってみたりすること)をするかどうかが保持過程には影響を与える

(c)運動再生過程
・保持過程で記憶にとどめられた象徴的表象を実際の行動に変換する過程
・うまく行われない場合は、保持されていた象徴的表象が適切でないことが考えられる。また、たとえ象徴的表象が適切であっても、必要なスキルが欠如している場合には、モデルによって示された行動と一致した行動を再生することは不可能。

(d)動機づけ過程
・そこまでの過程で習得した行動を実際に遂行するかどうかを決定する過程
・観察者は自分にとって好ましい結果をもたらすであろうと予測をしたときに、習得した行動を遂行する。予測には、観察者が直接受ける報酬や罰の他、他者の同じ行動に与えられる報酬や罰(=代理強化)や自分自身による自己強化などが影響する。

(2)自己効力感
・行動の先行要因としての予期は結果予期と効力予期の2つに分類できる
 - 結果予期:自分の行動がどのような結果をもたらすか
 - 効力予期:自分が適切な行動をうまくできるかどうか=自己効力

・自己効力の大きさは、大きさ、強さ、一般性の3次元に沿って変化
大きさ…課題を難易度順に並べたときに自分がどこまで解決可能であるかという予期レベル
強さ…各課題をどのくらい確実にできそうかという確信の程度
一般性…ある特定の課題に対する自己効力がどのくらいまで一般化できるかの程度

・自己効力は主要な4つの情報源に基づく
①遂行行動の達成:自分で必要な行動を実際に達成することができたという経験。成功体験
②代理経験:モデルを通じて自分にもできそうだという効力予期を形成
③言語的説得:言葉による説得を反復して用いることにより、自己効力が高まる。自身に対する勇気付け。
④情動喚起:生理的な状態によって効力予期が影響を受ける。ワクワク・ドキドキなどの気分の変調。


(1)キャリア意思決定における社会的学習理論SLTCDM
・キャリア選択がどのように行われるのか、を社会的学習理論の立場から説明したもの
・個人のキャリア意思決定に影響を与える要因として、4つのカテゴリー(①遺伝的な特性・特別な能力、②環境的状況・環境的出来事、③学習経験、④課題接近スキル)をあげている

①遺伝的特性・特別な能力
・職業的な好みやスキルを獲得するための能力に影響を与える
②環境的状況・環境的出来事
・個人のコントロールを超えている出来事であり、社会的力・政治的力・経済的力といったもの
③学習経験
・キャリア・パスの選択は様々な学習経験の結果
・道具的学習と連合学習の2つのタイプに分類される
■ 道具的学習
・直接経験による学習と同意。行動の直後に生ずる結果によって強化されることで獲得・維持される学習。
■連合学習
・中性的な刺激とある反応が関連付けられることによる学習
・感情的に中立的だった出来事が特定の感情と結びついたときに起こり、プラス、マイナスの影響を受ける
・レスポンデント条件づけと観察学習の両方が含まれる
④課題接近スキル
・学習経験と遺伝的特性と環境的影響力(①②③)の相互作用の結果

⇒ ①~④の4要因が複雑に影響し合って、信念・スキル・行動が結果として生まれる

(a)信念
・自分自身に関する信念(自己観察般化)と仕事に関する信念(世界観般化)の2つの信念が存在
■自己観察般化:自分自身のパフォーマンスを評価したり、自分自身の興味や価値観を査定したりする自己記述(言語化)
■世界観般化:自分をとりまく環境についての一般化した言語化
・双方の信念ともに、個々人の学習経験によって形成されるものであるために、その正確さはまちまちであり、学習経験が多ければ多いほど正確な言述が形成される

(b)課題接近スキル
・課題や活動に対して適応するためのスキル
・4要因の1つでもあるが、これらの相互作用を通じてさらなる課題接近スキルが形成される
・キャリア意思決定においては、6つのスキルを含む
①重要な状況を認識する
②課題を現実的に定義する
③自己観察般化や世界観般化を検証し、正確に査定する
④広範囲の代替案を作る
⑤代替案に関する情報を収集する
⑥代替案を絞っていく

(c)行動
・学習経験やその結果として生み出された信念やスキルによって、自分のキャリアに向けての様々な行動を取るようになってくる

(2)キャリア・カウンセリングにおける学習理論(LTCC)
・キャリア・カウンセラーがどのようにクライアントを援助するかについての理論

【クライアントが対処しなければならない現代社会の動向】
①自分の能力や興味を広げていく必要がある
②変化し続ける仕事に対して準備をしなければならない
③行動を起こすように勇気づけられる必要がある
④カウンセラーは職業選択だけでなくキャリア問題全般を扱う上での援助において主たる役割を担う必要がある

【キャリア・カウンセリングの目標】
・クライアントがキャリア問題において混乱している場合の多くは、直面している問題がこれまでのスキルや興味を越えているために起こる
→ クライアントの「新しい学習」を促す役割を担う
= 現在クライアントが有している興味・価値・能力にマッチした職業を見つけることではなく、変化し続ける仕事環境において満足のいく人生をクライアントが作りだしていけるようにスキル・興味・信念・価値・職業習慣、個人特性に関する学習を促進させる
・アセスメントはマッチングのためではなく、「新しい学習」を作り出すために用いられるべき

【キャリア・カウンセリングの介入方法】
①発達的・予防的介入
・多くの人がキャリア問題に直面しそうなタイミングにおいて、教育プログラムや予防プログラムを提供
②治療的介入
・ある個人に特定のあつらえられた介入で、認知的介入行動的介入の2つがある
■認知的介入:目標の明確化、認知再構成、問題のある信念への直面化、認知リハーサル、ナラティブ分析、読書療法など
■行動的介入:ロール・プレイング、脱感作など

(3)計画された偶発性理論
・LTCCを改訂したもので、従来のカウンセリング理論では望ましくないと考えられてきた「未決定」を望ましい状態と考え、クライアントが偶然の出来事を作り出し、認識し、自分のキャリア発達に組み入れていけるように支援することがキャリア・カウンセリングの目標

【キャリア・カウンセラーへの5点のアドバイス(抜粋)】
③想定外の出来事を利用する方法をクライアントに教えなさい
④将来、有益な想定外の出来事が起こりやすくなるように行動を始めることをクライアントに教えなさい

【ハップンスタンス学習理論】
~4つの命題(抜粋)~
②キャリア・アセスメントは個人の特性と職業の特性をマッチングするために用いるのではなく、学習を促すために用いられる
③クライアントは有益な想定外の出来事を作り出す方法として、探索的な行動に携わることを学習する

6.エドガー・シャイン

出所)エドガー・シャインポータルサイト
https://www.edgarschein.jp/20140916/45.html

(1)3つのサイクルとその段階
・人が生きている領域(役割が存在するという意味での領域)を大きく3つのサイクルに分け、それぞれのサイクルに階段を設けた
「生物学的・社会的(自己発達)」「家族関係」「仕事・キャリア」の3つのサイクルが相互に影響し合って、人が存在している
・キャリアの問題を考えるにあたっても、他のサイクルで何が起こっているかも考えなければならない

【「仕事・キャリア」サイクル】
・キャリアを捉えるときは、「外的キャリア」「内的キャリア」の2つの軸から捉えることができる
■外的キャリア
・仕事の内容や実績、組織内での地位
①階層次元:「垂直的」キャリア成長。地位の向上。
②職能ないし技術次元:「水平的」キャリア成長。職務の広がり。
③円あるいは核へ向かう動き:メンバーシップの増大(=役割の重要性の増加)により組織の核へ向かう行動

http://blog.livedoor.jp/pellow413-jcda/archives/3225531.html

■内的キャリア
・仕事に対する動機や意味づけ、価値観
・個人がキャリアにおいて主観的に遭遇し、経験する段階と課題
・外的キャリア、すなわち実際の職務におけるステージがどの段階であろうと、誰もが自分の仕事人生の中でどこに進んでいるのか、どのような役割を担っているのかについての主観的な感覚を有している

(2)キャリア・アンカー
・仕事を進める上で何に価値をおいているか、についての自分自身の認識
※内的キャリアと関連
・会社の価値に個人が染まるのではなく、個人が独自のキャリアを歩む
・自分自身のキャリア、職業上のセルフイメージがある方が、それが判断の基準となり、落ち着いてキャリアを構築していける
・教育や実際の仕事経験の積み重ねに基づいて形作られ、今現在のキャリアや人生における判断基準になるとともに、制約(何かしっくりこなければその錨に引き戻される)にもなる

【8つのキャリア・アンカー】
①特定専門分野/機能別のコンピテンス:ある特定の業界・職種・分野にこだわる。専門性の追求を目指す。
②全般管理コンピテンス:総合的な管理職位を目指す
③自律/独立(自由):制限や規則に縛られず、自律的に職務が進められることを重要とする。
④保障/安定:生活の保障、安定を第一とする
⑤起業家的創造性:新規に自らのアイデアで起業・創業することを望む
⑥純粋な挑戦:チャレンジングなこと、誰もしたことがないことに取り組むことを求める
⑦奉仕/社会献身:仕事の上で人の役に立っているという感覚を大切にする
⑧生活様式:仕事生活とその他の生活との調和/バランスを保つことを重要視する

【アンカーと職業】
・同一の職業においても、人それぞれでどこに価値をおくかは様々であるため、アンカーと職業とを一対一で結びつけてはいけない。個人の内的キャリアの描写が不可欠。

【アンカーを確かめるために有効な問い】
・才能と能力について「何が得意か」
・動機と欲求について「何をやりたいのか」
・意味と価値について「何をやっている自分が充実しているのか」
→ キャリア・アンカーは、自己イメージのパターンであって、外部からは定めることができず、自ら語らせ、認識することが重要

(3)キャリア・サバイバル
・アンカーと仕事がマッチングするか否かを決定するために、職務・役割側の要件を明らかにする必要がある
・いくら自分らしい、セルフイメージにあうキャリアを追求しても(キャリア・アンカー)、それが仕事として現実に実現できなければ、仕事としては成立しない
★キャリア・アンカーを現実に実現していくこと=キャリア・サバイバル

7.ダグラス・ホール

出所)note「これからの時代に必要なキャリアを身に着ける方法【プロティアンキャリア】」/りょう@キャリアコンサルタント
https://note.com/ryo_pastok/n/n3c413dc8f011

(1)プロティアン・キャリア
・個人と組織間の心理的契約は、従来の長期にわたる関係的な契約とは異なり、貢献と利益による短期的な契約に変わった
・組織内キャリアから個人の仕事における心理的成功を目指す自己志向的なキャリアに変化した
= キャリアは組織によってではなく、個人によって管理される
・キャリアにおける成功や失敗はキャリアを歩んでいる本人によって評価されるのであって、他者に評価される訳ではない

■プロティアン・キャリア
・組織によってではなく個人によって形成されるものであり、キャリアを営むその人の欲求に見合うようにそのつど方向転換されるキャリア
・移り変わる環境に対して、自己志向的に変幻自在に対応していくキャリア

出所)学歴と年収の研究室|面接官のホンネ 
https://saiyopro.com/career-2/798/

(2)プロティアン・キャリアに必要な2つのメタ・コンピテンシー
(a)アイデンティティ

・2つの構成要素(①自分の価値観・興味・能力・計画に気付いている程度/②過去と現在と将来の自己概念が統合されている程度)から成り立つ
・変化の激しい時代に変幻自在に自らのキャリアを合わせていくことを求められるプロティアン・キャリアにおいては、今まで以上に自らの価値観や興味に気付いていること、過去の自分、現在の自分、未来の自分が連続しているという自信が必要。そうでなければ、ただ変化に自分を合わせるだけになってしまい、本当の意味での心理的成功を体験することはできなくなる。


■アイデンティティ by エリクソン
・自我同一性。「これが自分である」という感覚。
斉一性と連続性の2つの特徴を持つ
 - 斉一性:自分が固有な存在である、という感覚。「私は他の誰とも違う自分自身であり、私は1人しかいない」という自信。
 - 連続性:過去の自分と今の自分を同じ自分として捉えられること。「今までの私もずっと私であり、今の私もそしてこれからの私もずっと私であり続ける」という確信。


(b)アダプタビリティ
・アダプタビリティ=適応コンピテンス×適応モチベーション
■適応コンピテンス

①アイデンティティの探索、②反応学習、③統合力の3要素から成り立つ
①アイデンティティの探索:アイデンティティを変えたり、維持したりするための潜在能力を発達させるために自己に関する完全かつ正確な知識を得ようとする継続的な努力
②反応学習:環境からのサインに気付き、様々な役割行動を発達させたり、最新のものにすることによって、変化し続ける環境からの要求に効率的に反応したり、環境に影響を及ぼすこと
③統合力:変化し続ける環境からの要求に適切に応えるための行動と自分のアイデンティティの一致を保つこと
■適応モチベーション
・適応コンピテンシーを発達させたり、所与の状況に対して適応コンピテンシーを応用しようとする意思

(3)キャリア意思決定
①日々の選択

・キャリア上の意思決定は、もはや人生一度きりの選択や大きな選択を意味するのではなく、日々の選択を意味するようになってきている
・毎日の生活の中で、アイデンティティに関する情報を自己評価しながら、適応し続けることが必要
②サブ・アイデンティティの選択
・キャリア役割を選択するだけでなく、キャリアを通じて発達するであろう自己の側面をも選択する
■サブ・アイデンティティ
・人が社会の中で担っている多様な役割における役割期待に呼応する自己認知のこと。周囲から期待されている役割を果たしていくことで発達していく自己の一面。
③適切なキャリア選択に必要なもの:自尊心
④人間関係の影響
■関係性アプローチ
・相互依存的な人間関係において互いに学び合っていくなかでキャリアは発達していく、とする考え方
・人間関係のなかでのやりとりによって、両者がキャリアの段階に関係なく相互に学び合うことができる
💡誰からでも学べることはあると考えられる人が組織に増えると、心理的安全性も醸成され、共創が進み、価値を生み出せる
■発達的関係
・相互学習を可能にし、キャリア発達を促す人間関係
→ 組織においては、いかに発達的関係を提供していけるか、が個人のキャリア発達支援においては重要な意味を持つ

(4)キャリア成功の使命モデル
・キャリアにおける使命と自信が互いに影響し合い、それらが目的を達成するための努力を導き、心理的成功をもたらす
・そして、その経験によりアイデンティティの変化が起こり、それがまた使命と自信に影響をもたらすという循環
(※)使命…これこそが自分がやるべき仕事である、といった目的意識
「自分が人生の中でやるべき仕事は何か」という目的意識に人が強く動機づけられ、そのために努力をし、結果として心理的成功、客観的成功を得る

💡自分が他者に与えたい利他的な価値は何か、を悟ってから人生で初めて自発的な努力を継続して行えるようになった。初めのころは自信がなく、行動を起こす度に恐れも感じていたが、使命感や休職中に身につけたストレスマネジメントを用いて、新しい挑戦をすることにも慣れてきた。その慣れが使命感とそれを実現できるという自信をさらに磨いている感覚は共感できる。そして、明らかに休職&自己理解前よりも心理的に充実している。

8.ナンシィ・シュロスバーグ

出所)Make Career
https://www.make-career.site/career-counsellor-shlossberg-n-k/

(1)トランジション(転機)へのアプローチ:転機の識別、転機のプロセス


■トランジション(シュロスバーグの定義)
人生上の出来事視点から見たトランジション
・結婚、離婚、転職、引っ越し、失業、本人や家族の病気など
・それぞれの個人におけるその人独自の出来事として捉える
・それらの出来事のいくつかは、その人の人生において大きな転機となる
・自分の役割、人間関係、日常生活、考え方を変えてしまうような人生途上のある出来事
・人それぞれがその人独自の転機を経験している
→ カウンセリングにおいても、各年代に訪れる共通した発達課題を見出していくよりも個々の人々がそれぞれに経験している出来事に注目していくことの方が、クライアントの状況を知り、援助していくためには重要

💡リワーク施設で学んだ「ライフイベント」と同義に感じる。そして、自分の場合は、本人の病気(メンタルヘルス悪化による休職)がトランジションとなり、日常生活(時間管理の仕方)、考え方(キャリア)がよい意味で好転した。

cf. 発達課題の移行期としてのトランジション
・スーパーの言うところのトランジション(移行)
・発達論的視点、つまり成人の各年代や発達段階には共通したある発達課題や移行期があるという見方
・移行期において自分の人生の転換点となる出来事を意味することもある

💡サビカスの言うところのトランジション(移行)は発達論的視点と人生の出来事視点の両方が含まれている気がする


①転機の識別(転機のタイプ)
・転機は、その人がある出来事を転機と考えることによってはじめて転機となる
・転機は3つのタイプに分けられる
(a)予測していた転機
(b)予測していなかった転機
(c)期待していたものが起こらなかった転機

②転機のプロセス
・1つの転機に終わりがあるわけではなく、1つの転機が新たな転機を生み出していく
・転機のプロセスは永続的に続く
・それぞれの転機は次第に生活の一部に統合され続けていく

出所)フレンチブルドッグ:ファブとあものブログ
https://ameblo.jp/cthreecareer/entry-12527604296.html

(2)対処のための資源を活用する(4Sシステム)
・4つのSが個人の転機を乗り越える能力に影響を及ぼす
・それぞれのSの内容を吟味していくことで対処に活用できる資源と脆弱な資源を明らかにすることができる
★出来事そのものではなく、それをどう受け取るか、それにどう対処していくかが重要
情動中心の対処と、問題中心の対処という2つのレパートリーがある

①Situation(状況)
c)コントロール(転機のうち自分でコントロールできるものはどの部分か)
d)役割の変化(転機は個人の役割変化を引き起こすものか)
h)アセスメント(その状況を前向きに捉えているか、後ろ向きか、都合が良いと考えているか)

💡コントロールはアドラー心理学の「課題の分離」に通じる。アセスメントはトランジションに対する自分なりの意味づけができているかを問われていると感じた。

②Self(自己)
・自分自身の資源は人によって様々なであり、一人として同じものはない
a)変化への対処に関係する個人的、個人の身上的・人口統計的な特徴
・社会経済的地位、性、年齢と人生段階、健康状態、民族性
b)変化対処に関係ある心理的資源
・自我発達段階、物の見方-楽観主義・自己効力感、コミットメントおよび価値観、精神性および回復力
💡セルフコーチングや影響の輪(『7つの習慣』)、トランジションへの意味づけ、レジリエンスが関連しているように感じる

③Support(周囲の援助)
a)転機を乗り越えるために望んでいる好意、肯定、助力を受けられているか
b)広い範囲で援助を受けられるか
💡「社会資源(フォーマル・インフォーマル)」に該当する
c)転機によって失ったり、弱体化されるサポート資源はあるか
d)サポート資源が転機に対処するために有効と感じているか、不足と感じているか

④Strategies(戦略)
・ストレス対処の3つのタイプ(by パーリン&スクーラー)を活用
a)状況を修正するように働きかける
b)問題の持っている意味を変える
c)ストレスをマネジメントできるよう対応する

💡キャリア自律を1つのトランジションと考えると、4Sシステムに提唱されるコーピングはそのトランジションを乗り越えるために必要である。キャリア自律支援をしていきたいと思う私とって、休職中に学んだストレスマネジメントとの関連性も高く、その点においても休職で得たものは大きい。
実際に自分自身がキャリア自律というトランジションを経験している今このときにおいては新たな挑戦をする機会が多く、ストレスマネジメントのスキルが都度襲いかかる恐れに向き合い、乗り越えることに役立っている。

9.サニィ・ハンセン

出所)なべけんブログ
https://tnbkn.com/hansen_theory

(1)ILP:統合的人生設計
・人生やキャリア設計への包括的なアプローチ
・仕事をほかの生活上の役割との関係のなかで、または人生のなかで捉える
・クライアントがより包括的な生活(バランスのとれた人生)を実現し、その選択や決定を通して社会に積極的な変化をもたらす人となるようにカウンセラーが手助けすることを提案
・個々人は、各自の決定が人類や環境全体にもたらす影響を考慮すべき
・「個と社会全体の相互作用」に注目し、個のキャリアを社会全体をよくしていくプロセスの1つとして位置づけ
・クライアントが世界全体との関わりに気付き、各自が社会に貢献できる場所を見つけることの手助けが必要

【キャリア発達と変化するライフ・パターンのための重要課題】
①グローバルな状況を変化させるためになすべき仕事を探す
・地域や地球規模で我々が直面している多くの問題を解決するために、創造性を発揮してなすべき仕事に取り組む
②人生を意味ある全体像のなかに織り込む
・キャリア設計においては、仕事や職場での役割だけではなく、人間の他の役割や発達(社会性、知性、肉体、精神、感情など)にも焦点を当て、男女ともにその人生に自己充足や結びつきを感じられるようにすることが大切
💡『7つの習慣』でいうところの「人生の調和」
③家族と仕事の間を結ぶ
・男女が平等のパートナーとして協力し合う
④多元性と包括性を大切にする
・様々な視点からものを見ることができるようになること
💡D&Iに関連
⑤個人の転機と組織の変化にともに対処する
⑥精神性、人生の目的、意味を探究する


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?