ビジネスパーソンが介護離職をしてはいけないこれだけの理由/酒井穣

ワークライフバランスの実現について、著者の講演を聴く機会を授かったので、事前に書籍を読んでおこうと思い、手に取りました。

現在勉強中のキャリアコンサルタントにおいても、仕事と介護の両立に関しては、クライエントの主訴としてよくある話です。介護についての知識を深め、よりクライエントにとって効果的な支援ができるようになりたいとも思い、いそいそと読み進めました。

以下、私なりに要約を箇条書きでしております。
特にⅢ章とⅥ章については仕事と介護の両立において必見です!
私も目から鱗でした!?


Ⅰ. 自立とは

・自立=依存先が複数に分散されており、特定の人・組織への「依存」「隷属」となっていない状況
→ より自分らしく生きられるようになる(自分の幸福を自分の意思で追求する自由がある=自己決定の原則)

💡 複数ある人生の役割をそれぞれ果たせる生き方がよい。ひとつの生き方に偏ると他の何かをないがしろにしていることがある。

★介護離職をする以外の選択肢に迫られないように主体的に備え・行動し、かつ周囲の援助を得ていく必要がある

Ⅱ. 育児と介護は違う!

①ある日いきなり突然やってくるため準備期間がない
:仕事との両立について考えている時間がない。自分が40-50代のときに始まることが多い。
②経験したことがない(無知)
:何がいつ必要になるかなどが分からない
③期間が定まっていない(いつ終わりになるか予想がつかない)
:少なくとも10年程度は続く。時間的・金銭的負担がまったく予測できない。
④相手(親)の健康状態が悪化していく
⑤お金がかかる
:親一人につき1,266~1,445万円
⑥人間関係が大人同士の関係
:育児とは異なる様々な心理が複雑に絡み合う。決してポジティブとは言えない感情。モチベが得づらい。
⑦誰もがいずれ直面する
⑧時間が経つにつれて負担が大きくなるように感じる
:仕事との両立がいつできなくなるかが分からず不安
⑨デイサービスなどの支援時間がフルタイムのビジネスパーソンには配慮されていないことが多い
⑩介護のカミングアウトがし辛い
:相談できる人もいない。本当の意味で同僚からの理解が得づらい。

Ⅲ. 介護のために親と自宅で同居したときのリスク

①親と同居すると介護離婚のリスクは高まる
②生活援助系のサービスが介護保険では使えなくなる(原則として同居家族がいると使えない)
③特別養護老人ホームに入りにくくなる(同居家族がいると優先順位が極端に落ちる)

④認知症のリスクが高まる(リロケーション・ダメージ:慣れ親しんだ生活の場が変わることによる悪影響)

Ⅳ. 仕事と介護の両立のための社会資源

~場所・人~
・介護セミナー(自治体)
・家族会(セルフケア・グループ)
・認知症サポーター(養成講座)
・介護サービスに詳しい人(介護のプロ)
・自治体の介護窓口
・地域包括支援センター

~制度~
・介護保険制度
・介護休業
93日を目一杯休んでしまうと、復帰が困難になり、介護離職の可能性が高くなるかも!?
・介護休暇
・生活保護制度

Ⅴ. 介護離職を避けるために企業のサポートが必要

・働く介護者のニーズを把握すること
・介護に関して相談できる職場の雰囲気を醸成すること
※自分が介護役割を担っている現実はカミングアウトしにくいことを理解する必要がある
・介護と両立しやすい職場の確立
 ①意思決定が分散されている職場(分権的な職場)
 ②自分の仕事をほとんど自分一人で完結することができて同僚の仕事とは独立している職場(相互依存性の低い職場)
 ③目標は与えられていたとしても、それを達成するための中身については自由にしてよい職場(職務自由度の高い職場)

Ⅵ. 仕事と介護を両立できている人のポイント

=介護離職を避けるためのポイント
①身体介護や家事を自分でやらない
★頻度の高い身体介護や家事は、できるだけ自分以外の介護のプロに任せる
★頻度の低い緊急時対応や金銭管理といった部分を、短期の休暇を取得して、自分でも対応する
②介護のことを事前に勉強する
③会社の制度があっても、なるべく長期の休みは取らない
④自治体の窓口などを活用する
⑤自分に合った家族会を見つけて参加する

Ⅶ. 要介護者が幸せに生きるために

・何らかの障害を抱えていても「普通」に生きられる社会を求めていく(ノーマライゼーション
・自分らしい人生を追い求める。目標のある人生を歩む。

~アナセンの3原則~
①生活継続の原則
・その人の生活は、できる限り、それまでの生活が継続されるべき
②自己決定の原則
・生き方や暮らし方については、あくまでも自分で決定すべき
③残存能力活用の原則
・「できないこと」をケアするのではなく、まだ「できること」を認め評価する


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