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俳優を続けるためにソムリエになったらソムリエ役を演じることになった

こんにちは。細川唯です。
私は普段、映画やドラマ、CMなど映像中心に俳優のお仕事をしています。

先日「俳優を続けるためにソムリエになった。」というnoteを書きました。

20代から俳優業と並行して飲食店でアルバイトをしていたのもあり、ワインに触れる機会が多く、その魅力にどんどん吸い込まれて行きました。

勤務実績などソムリエ試験を受けるための条件は満たしていたけど、なかなか勇気が出なくて、本屋でソムリエ試験の本を買っては、あまりの情報量に圧倒されて「まだ受けられない。でもいつかは。」と先延ばしにしていました。
それに、私は俳優なのだから、アルバイトの仕事にそこまで本気にならなくても…というか、なっちゃいけないのでは?!とまで思っていました。
俳優の仕事に集中するためアルバイト禁止の事務所もあるくらい、俳優がアルバイトを一生懸命やることはなんとなくタブーのようにされていたように感じます。初めて入った事務所では「アルバイトをするのはいい。でもアルバイトばかりにならないように。」と念を押されました。この言葉には多分

・「アルバイトがあるのでオーディション行けません」っていうのは本末転倒だよ、バイトはバイトなのだから、俳優の仕事で早く食べていけるようになりなさい。

・バイトばかりしていると俳優としてのプライドや覚悟がなくなってオーラが消える。だからあまりやらないでほしい。俳優の仕事で食えるようになれ。

大きくこの2つの意味があったのではと思います。
で、いつになったら私は俳優の仕事だけで食べていけるようになるんだろう?事務所に所属はしてたけど約3年の間でオーディションは2回しか受けさせてもらえなかったし3年間のお仕事で頂いたギャラは全部合わせても10万円ちょっとだった。3年間の東京での家賃光熱費食費を、到底賄えません。なのでアルバイトを一生懸命やるしかありませんでした。

でもアルバイトを一生懸命やったおかけで、ゲストにワインをお薦めすることに責任を感じたし、もっと勉強しなければと思えました。どんなふうにお薦めしたら、この食事の時間がもっと美味しく、楽しくなるかなと日々試行錯誤しました。

何年も飲食店で過ごす中で時々、ソムリエになった自分のことを想像しては焦りました。それはすごくカッコよかったし、堂々としていました。でもその頃の自分は何もかもに自信を無くしていて、受かるはずない、挑戦して落ちたら二度と立ち直れない。と、なりたい自分の像に近づかないように、かっこいい理想の自分にならないようにならないようにしていました。わたしはここでこうしているのがお似合いなのだと、わたしのことを蔑ろにする人たちのコミュニティに身を置いて、なぜか安心していました。(この自信ないループから抜け出せた魔法についてはまた後日書きます。)

そんな中で一つの不安が生まれました。
今思えばかなりピンポイントな、確率の低い不安だったのですが

「もし今、ソムリエ役のオーディションが来たらどうしよう」

いままでに感じたことのない大きな不安を感じました。こんなにワインが好きで、日々触れていて、ソムリエ試験を受けるか受けないかで迷っているときに、もしオーディションがあって、自分がソムリエじゃなくて、それで別の人にキャスティングされたら…

でもまあ、ソムリエ役なんてしょっちゅうはないし、年齢や性別も考えるとキャスティングの対象になるなんてかなり確率低いので、そんなに急がなくても^^
と心がざわつく度にそうやって自分を落ち着かせていました。それにソムリエの役をやるにあたり、本当にソムリエである必要なんて全然ないのです。採血も注射もできないけど観察と想像力で看護師役をやるのと同じように。

なんやかんやでこっそり受験の決意をしたのが去年の4月、こっそり勉強しながら8月の筆記試験を心臓バクバクで合格し、やっと現事務所のマネージャーにソムリエ試験を受けていることを打ち明けました。ソムリエ試験は三次試験まであるので、そのスケジュールも確保したくて、ここでやっと話せました。
ダンスや英語など、俳優にとって重要度の高い技能ってわけじゃないから、それに時間を割くのにあまりいい顔されないかもな…とドキドキしながら。でもそれは杞憂に終わり、事務所からは、OKだよ〜んみたいな割と応援の気持ち多めのお返事がもらえてスッと気持ちが楽になり、これは頑張りたいな、頑張らなきゃな。もしかしたらいつか、ソムリエ役の話が来るかもしれないしな、と気合で2次、3次と合格し、2021年12月に晴れて私は本物のソムリエになることができたのでした。わたしの俳優のプロフィール欄に「ソムリエ」の肩書きが増えました。


まあ、俳優の仕事に活かせるチャンスが来るかはわからないけど。
永遠に来ないかもしれないけど。
でもとにかく、自分は目標のためにこれだけ頑張れる人間なんだって自信にはなりました。


それから約2ヶ月後。

マネージャー「細川さん、ソムリエ役に決まったよ✌️」


私「へ?」


小日向文世さん主演のテレビ東京土曜8時のドラマ
「嫌われ監察官 音無一六」第三話に、
ソムリエール・福田蒼子役で出演します。





絶対見てね!

あなたのおかげで生きているのかもしれません。