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45.おれかオレ以外か

人は、神経回路のネットワークによって、自己を認識していると言えます。

しかし、その「自分」とは果たして何なのでしょうか?
身体の一部である細胞や腸内細菌といった微小な存在から、意識と主観を持つ私たちまで、自己の概念は多様であり生物により異なります。

私たちは進化の過程でいつ自己を身につけたのでしょうか。

原始的な生物である細菌や単細胞生物であっても明確に個を自覚しています。
自分に危険が迫るとそれに対し抵抗し安全を確保します。
しかしそこに我々のような意識は存在していないように思えます。
熱いものを触った時に手を引っ込めるような反射的なシステムを使い存在を認識しています。

そこからさらに進化して魚や陸に上がった爬虫類などになると感情が出現します。
私たちのように種類が豊富ではないですが、恐怖や群れをつくるときに必要な仲間意識などが出現し自己を感じるようになります。

私たち人間になると理性が出現し感情のコントロールができるようになります。
悲しいけど笑うことができたり、嬉しいけど怒るなどといった複雑な行動が可能になります。

それが出来るのも私たちの膨大な神経細胞が成しえる機能のおかげです。
この神経細胞同士が結びつき、情報を伝達し、私たちの思考や感情を形作っています。

しかし、原始的な時代では感覚と運動を結びつける存在であった神経が複雑化することで「自分」という存在を見つけることが困難になってしまう場合があります。

神経回路の中で、どの結びつきが「私」を形成しているのか、科学者たちは今も探求し続けています。


ヒドラら自分のコピーを作り続けることで永遠の命を得ることができます。
しかし、そのコピーは果たして「自分」として認識されるのでしょうか?
コピーが増えれば増えるほど、自己意識は希薄になるのか、それとも逆なのか。この問いは哲学者や科学者を悩ませています。

私たちの身体を構成する細胞よりも腸内細菌の方が多いという事実があります。
これら微生物は私たちの健康に影響を与え、さまざまな機能を担っています。しかし、腸内細菌が「自分」の一部として認識されることはありません。

「自分」という感覚は儚くて脆いものです。病気や老化、外部からの刺激によって、私たちの自己意識は揺らぎます。
一つひとつの細胞や腸内細菌が個を感じている事を考えると私たちの自己意識は様々な個の塊によって形成されている可能性が考えられます。


自分をつくるのは自分以外なのかもしれません。

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