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41.慢性痛と記憶

記憶は、私たちの日常に深く影響を及ぼすものです。

慢性痛に苦しむ方々は、その痛みを「痛い私」として自己同一化し、日々の生活に持ち込んでいることがあります。

しかし、この痛みを過去の経験として処理できるかどうかが重要なポイントだと感じています。

例えば1ヶ月前の食事を覚えているでしょうか?

ほとんどの方が覚えていないと思います。
私も覚えていません。

食事という過去の出来事を記憶から切り離し、あたかも今の私には一ヶ月前の食事など何も影響していないかのように生活しています。

テセウスの船という話があります。 

ある物体において、それを構成するパーツが全て置き換えられたとき、過去のそれと現在のそれは「同じそれ」だと言えるのか否か、という話です。

これと同じように何年も前に経験した痛みや経験は現在の私にどれほど影響を与えているのでしょうか。

科学的な視点から考えてみましょう。

痛みは神経系を通じて伝えられ、脳はその情報を解釈します。

過去の痛みは、神経経路を形成し、脳の回路に刻み込まれています。
この結びつきは、身体の状態や感情に影響を及ぼします。

神経可塑性というものがあります。
これは、脳が絶えず変化し、新たな経験に適応する能力を指します。

過去の痛みが神経回路に刻み込まれている一方で、新たな経験などによって神経結合が変化することもあります。
この可塑性は、痛みの感じ方や身体の反応に影響を与えます。

そうすると、神経内や神経外、また神経と神経で情報交換をする間に新たな回路をつくり出し侵害受容に反応できるよう適応していく事が知られています。

また、心理的側面も重要です。
痛みはストレスや不安と密接に関連しています。
過去の痛みが心の中で「痛い私」として存在する限り、身体もそれに反応し続けることがあります。心理的なアプローチや認知行動療法は、この結びつきを解除する手段となります。

痛みに苦しむ方々は、過去の経験にとらわれず、新たな方法やアプローチを試すことで、痛みとの結びつきを和らげることができるかもしれません。

その為にはいかに自分の気持ちが和らぐ方向や高まる方、総じていい気分になるものを選択出来るかだと感じています。

何をすると気分が良くなるのか、自分が何を感じているのか。

痛みは私たちの人生に深く刻まれるものですが、その結びつきを柔軟に捉え、新たな可能性を探求することで、身体のシステムが循環し出すのだと思います。

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