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Guidebook’s guidebook
はじめまして、トラックメイカーのyuigotです。
今年の12月6日に1stアルバム Guidebookを出しました。
制作期間がそれなりに長引いたり、いろんな思いを込めすぎた結果なかなか変な構造のアルバムになっているという自覚があり、それをどこかで解説する機会があればいいな...と思いました。あまり言葉を扱うのは得意ではないのでご了承ください。
この文章が少しでもGuidebookを聴く際のガイドブックになったらいいなと思っています(ややこしいな)
そもそもぼくは、このアルバムを発表するまでに色々な形式(自分で言うのもめちゃくちゃ烏滸がましいですね)での音楽活動を行ってきていました。
楽曲提供、ボーカロイドを用いた楽曲制作、リミックス、BGMなどの裏方仕事、たまにギター演奏、パスタスタ等々、
それぞれの活動の方向性はバラバラに見えるようで、自分の中では常に一貫した何かを持ちながらやってきたつもりでした。
その一貫性の可視化をするために、自分を大きなワールドマップに例えて、各所に散らばったそれぞれのスタイルや技法をエリアごとに再配置し、それのウォークスルーをアルバムというかたちで表現したいなと思いました。
![](https://assets.st-note.com/img/1703923563594-9REkCBFDVA.jpg?width=1200)
https://www.pokemon.co.jp/ex/xy/story/01.html
・自分がこれまでやってきた様々なタイプの音楽の追体験のツアー、そしてそのガイドブック
・己のパーソナリティを説明するためのガイドライン
という意味を込めて、タイトルをGuidebookと名付けました。
〜〜
Guidebookは、僕が活動を通して出会った4人のボーカリストをフィーチャーした楽曲を軸に構成されています。
人選に関して、なるべくジャンルがバラバラな人を呼んでみようという気持ちがありました。
越境性 というマインドについて、近しいところだと僕の所属しているPAS TASTAというユニットが今年リリースした“GOOD POP”というアルバムがあります。
また両作品ともフィーチャリングボーカルの人選からなる文脈のようなものに重きを置いていますが、GOOD POPとGuidebookの大きな違いとしては、
前者が垣根を破壊するぞ!やったるぞ!という気概に溢れているのに対して、後者はあくまで僕個人レベルでの歩みの可視化の延長線上に過ぎないというのがあります。
どちらも大切な作品になりました。
楽曲解説
1:!play
インタールードその1
自分は音楽を聴くときにプレイヤーの再生ボタンを押すという行為がとても好きなので、このトラックをそういうスイッチのつもりで制作しました。
ボタンを押して音楽が流れる時、異なる世界にダイブするような感覚があります。
最後の声ネタは”just little things but they do make big difference”と言ってます。
なんとなくライブラリにあったロイヤリティフリーのサンプルのセリフに過ぎませんが、素敵な言葉だと思います。
2:Everywhere(Guidebook ver.) w/ぷにぷに電機
“Google Mapで世界旅行”というテーマで制作しました。
SoundCloud、Twitterなど数クリックで海の向こうにいる同じ志の人たちと音楽を通して交流できる環境はとても居心地がよかったです。
制作当時はコロナ禍だったこともあり、より逃避願望みたいなものが強くなった結果、そういったルーツのことを思い出しながら作りました。
スワイプで様々な世界が切り替わるアクセシビリティみたいなものを短い尺の中でコロコロ変わる展開に見立ててみました。
このアルバムの核になっている曲でもあります。
原曲は2年前にリリース済みだったのですが、アルバムリリースにあたり再度作り直してみました。
聴き比べると、ここ数年の僕の音の嗜好の変化が楽しめるかもしれません。
ぷにぷに電機さんというボーカリストは、本当に表現力の振れ幅が広い人だなと改めて実感しました。
同じ曲でもここまで違って聴こえるのは、ひとえにぷに電さんの歌のおかげです。
歌詞も書いていただいたのですが、言語感覚が素晴らし過ぎてめっちゃ喰らってました。
3:Stage3~Broken radio by sea breeze
本来この作品はボーカル曲4つをまとめたEPとしてリリースする予定だったのですが、制作をサポートしてくださったtomadさんのアドバイスでアルバムとして出した方が良いかも…と思い急遽制作しました。
Future Bassというジャンルの領域や認識が広がりきった今、一番自分が好きなスタイルで1曲を作り上げることが大事なのではないかと思い制作しました。
タイトルの由来はマリオDSやカービィなどのRPGの海ステージのBGMです。海ステージって大体3面ぐらいにある気がするのは気のせいでしょうか。
ステージの横に副題みたいなものがついている理由は、制作期間中に鏡の大迷宮をたくさん遊んでいたからです。
4:Cloudsurf w/いよわ
異なるフィールドを飛び回る飛行機をイメージしてトラックを制作しました。
お仕事で楽曲を作る際に丁寧に音をまとめる癖みたいなものがついていたので、そこから脱却しようとこの曲に関してはあえてラフに好きな音をたくさん詰め込んでみました。
ハーフテンポのリズムの持つ開放感みたいなものが好きだったので、それを主軸にリズムを組みました。
また、自分は結構浮き沈みが激しい性格なので、それもアレンジにも出た気がします。
そろそろ落ち着きたいな…と思っている自分と、身体が動くうちに暴れ倒したいという気持ちの葛藤が感じられます。
こういう優柔不断なところが嫌いだったんですが、最近はそれが自分の性質だと受け入れられるようになりました。
自分はボーカロイドの調声というものを歌唱法の一つだと捉えていて、その上でボーカロイドならではの言葉のスピード感を自在に扱えるシンガーとして
いよわさんをフィーチャーしました。
今のところほんと歌詞マジで聴き取れんくて爆笑してる(してない)けどまあ概要欄に載せとくから許してくれや
— いよわ (@igusuri_please) June 26, 2020
↑昔みたこのツイートが大好きだったので、一切聞き取れないぐらいのスピードで音符と言葉を詰め込んでもらえてとても嬉しかったです。
アダラナを初めて聴いた時の衝撃は未だに忘れられません、お忙しいところ本当にありがとうございました…
5:Ventilation
インタールードその2 一旦リセット。
このアルバムは前半と後半でかなりテンションが違うので、その繋ぎ目になるようなトラックを制作しました。
僕はこういう機能的で曲未満みたいなトラックが大好きなので作れて嬉しかったです。
ずっと部屋に篭って作業をしている人にとって、換気は本当に大切なんです。
6:Framework w/Cwondo
Everywhereリリース以降、クライアントワーク以外での作曲をするタイミングが無かったので、果たして自分が本当に作りたい楽曲とはなんだ?という気持ちに陥った時、
それまでの自分のバイオグラフィやワークスなどとは関係なく、当時好きだった質感の曲を作りたい!!と思ってトラックを制作しました。
普段あまりやらない手法(アコギのカットアップとか)やジャンルに挑戦してみたこともあり、新鮮な気持ちでプロジェクトファイルに向かえたのが嬉しかったです。
ボーカルのCwondoさんとは以前一度PAS TASTAの楽曲でお世話になったのですが、掴めないようでキャッチーなメロディラインを制作する人だという印象があって、
このトラックのイメージにぴったりだと思いオファーさせていただきました。
音楽性、人柄ともに本当に尊敬するかっこいい人です。音楽の喜びを全身で表現し尽くすようなパフォーマンスは本当に素晴らしいと思っています。
7:夢をみる島(miniature)
原曲は2020年4月にYouTubeで公開しました。
コロナ禍に突入したてのタイミング、先の見えない閉塞感の中で逃避願望と向き合って制作した楽曲です。
はじめて歌を作れたという意識があります。
本来収録予定ではなかったのですが、あるタイミングで再度聴き直したところ自分の核のようなものを表現していた気がしたので収録しました。
剥き出しのまま歌を聴いてもらいたいという気持ちがあったので、アレンジは最小限に留めました。
イントロのうっすら聞こえるノイズは近所の海で録音しました。
ここ数年の自分の原風景のような曲です。
8:Obscure w/春野
Guidebookという一つの旅の終着点をイメージして制作しました。
音楽が鳴り止んだとき、夢は覚めて、また地に足をつけて歩き始める…という流れをビートの変化で表現してみました。
頭の中にある曖昧なものを曖昧なまま表現できることも、音楽というフォーマットの好きな部分です。
夢をみる島を作っていたころに春野さんのアルバムをずっと聴いていました。
この機会に一緒に作品を作ることができてとても嬉しかったです。
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アートワークの話
![](https://assets.st-note.com/img/1703921660247-AExLymMp4j.jpg?width=1200)
アルバム自体がいろんなジャンルの詰め合わせみたいなコンセプトだったので、視覚面でも様々な方面からアプローチしてみたいなと思い、
写真家、イラストレーター、デザイナーの3人に協力してもらって制作しました。
風通しのよい一枚になった気がします。
真夏日に公演を自転車で爆走したのがいい思い出になりました。
コラージュ、落書きといった手法はすごくワクワクします。
Guidebookジャケ撮影時の思い出(CMみたいな構図の448さん) pic.twitter.com/8pesCav2iT
— yuigot (@ygt_jpn) December 2, 2023
また、アーティスト写真もその際に更新しました。
![](https://assets.st-note.com/img/1703921690613-8VudjUbXWF.jpg?width=1200)
自分のアイデンティティを示す際に、1つだけのアバターでは説明不足だという感覚があったので、
生身の自分に加えてこれまでのアイコンのキャラクターと犬を追加しました。
自分の領域を拡張できた感覚があってとても嬉しいです。
ティザーは岡本太玖斗さん作。(携帯で見るといい感じです)
ARを取り入れたいというアイデアを伝えたところ、この作品のためだけにいくつかのARエフェクトを制作していただきました。
岡本さんは同い年のクリエイターとして、本当に尊敬しております。
撮影は千葉県某所で行いました。自分の散歩ルートを順に追って撮ったからか、完成品が上がった際とても腑に落ちる感覚がありました。
縮図感があって本当に好きな映像です。
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このアルバムは本当にたくさんの人の協力のおかげで完成させることができました。
聴いてくれているあなたたちも含めて、僕のくだらない自分語りについてきてくれてありがとうございました。
このアルバムは、僕が僕自身のために作った作品ではありますが、もし誰かに何らかの勇気を与えることができていたとしたら、これほど嬉しいことはないです。
おまけ1:制作期間中にたくさん聴いていた曲のプレイリスト
たくさん勇気をもらいました。
特にCornelius-Fantasma,
BUMP OF CHICKEN-ユグドラシル,
People In The Box-Weather Reportとかは聴くとめっちゃ元気が出ました。
おまけ2:頻出プラグイン
Operator:全編で使用 最近一番好きなシンセです サブベースとかPluck系とかいい感じでした
Vital:無料版を使用しています これで作ったサイン波っぽいパッドは心なしか元気に聴こえます デチューンの処理の問題とかなんでしょうかね...
Cloudsurf(サビ)、Frameworkなどで使用
Drumtree:プリセットの音が総じて良いのと、ベロシティで細かいニュアンスをつけた時の表現力が素晴らしい 決してくどくないのが却ってリアルだと思いました 主にCloudsurf、Obscure(アウトロ)などで使用
Massive:おもちゃみたいな音がして好き なんだかんだ初めて買ったシンセかも Cloudsurfのピコピコした音、EverywhereやObscureのフィルター掛かったリードなどで使用
Grand Marimba:マリンバで使用
昨年Grynpyretたちと遊んだ際にPCに入っていたのを確認し、即購入 本当に音が良くて嬉しい
!play、Stage3~などで使用
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