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妄想庭園【春】植物を育てわかったこと/⑭憧れるが知りたくはない〜バラ

 一番好きな草花は、他の品種には申し訳なく、またベタなのだが「バラ」だ。大切な人や好きな人に愛を伝える時に一緒に贈るバラ。化粧品や食品の原料にもなったりするし、絵やイラスト、写真のモチーフに使われる。花といえば大抵の人が真っ先に思い浮かべるスター選手だ。

 5月の春と10月の秋には見頃になり、ちゃんとした施設のバラ園や、近くのフラワーパークのバラを見に訪れるのが毎年の通例だ。年に2回推しに会いに行く様な楽しみにしているイベントである。いろいろな品種のバラは大所帯のアイドルグループの様なものなので、鼻息を荒げながらめちゃくちゃ写真を撮る。もはやバラ推し活変態だ。

 家に招き入れる植物のチョイス基準は、偶然のその場のノリであったり、価格がリーズナブルであるかなど要は適当なのだが、バラだけは育ててみたい気持ちがあるものの、どうしても手が出せない。

 大体バラは苗木が高額である。小さな鉢で比較的廉価で売られているミニバラなどもあるが、せっかくなら木立性の大きなバラを育ててみたい。そして育てるのがとても難しそうなイメージだ。ちゃんと調べている訳では無いが、病害虫の被害が多そうだ。まず葉が病気にやられそうだし、毛虫が付きそう。そして茎に備えられた強靭な棘。育てられる事を拒んでいるとしか思えない。そんな大変な思いをして育てたとしても花の期間はさほど長くなさそうだ。バラ愛好家のガーデナーはどういう心持ちで日々バラと向き合っているのだろう。

 もし育てるとしたら、たくさんの種類があるバラの中からどれをチョイスすればいいのだろう。せっかく育てるならもちろんいい香りのするものに限る。花の形や色など、好みに合うもので病気や寒さに強いものがいい。そんな都合のいい話はあるのだろうか。ちょっと考えただけでもこのハードルの高さ。そして好きな割には全くバラに関して知識が無い。分からないことだらけだが調べたくもない。色々知るとハマってしまいそうで取り返しが付かなくなるのは想像が付く。

 バラは近寄り難くて気軽に話しかける事も出来ない、憧れの存在のままでいいのだ。その代わりシーズンになったら写真を撮りに行ったり、たまに代替品の切り花のバラを買ったりするくらいの距離感だ。育てるなんてもっての他だ。そのくらいでちょうどいいと言い聞かせる。

 でも、できる事なら…。ベランダに誇らしげに咲いたバラをこの手で摘み取り、花瓶に生けたかった。生命を断ち切られたバラは甘美な香りを漂わせながら、枯れるまでの一生をこの狭い部屋で終えるのだ。

バラのドライフラワー-1


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