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働き方改革で注目されるクリエイティブ・クラスとは?

2007年に発刊されて注目されたクリエイティブ・クラスの世紀という書籍

私が当時定期購読していた『Harvard Business Review』でも紹介され、ナレッジマネジメントや組織マネジメントの講師を担当したことから興奮しながら論文を読んだのを覚えています。

リチャード・フロリダは2002年、The Rise of the Creative Class.(邦訳『クリエイティブ資本論』ダイヤモンド社、2008年)を上梓した。同書では、米国のグローバルな優位性が失われつつある中、その再生には、日本の自動車企業が工場従業員一人ひとりの知識を活かして品質と生産性を継続的に改善しているように、従来の研究開発者やクリエイターに留まらず、製造業やサービス業をクリエイティブ・クラスに変革するような、米国の人的資本の育成に努めるべきであると主張した。なお、クリエイティブ・クラスは、HBR誌に、“Breakthrough Ideas for 2004: No Monopoly on Creativity,” HBR, February 2004.(邦訳「2004年:パワー・コンセプト20選」DHBR2004年6月号)として取り上げられた。

このクリエイティブ・クラスという考え方が、後に総務省の地域情報化アドバイザーの仕事などを通じて地方創生に必要だと感じて、デジタルシフトによる多拠点生活(ワーケーション )のススメや、自治体の移住定住・企業誘致・観光振興などの融合(デジタルシティプロモーション)などの考え方に繋がっています。デジタルシフトによる地方創生のベースとなる考え方は、3つのT(技術〔Technology〕、才能ある人物〔Talent〕、寛容性〔Tolerance〕)の三拍子がそろっているということになります。最初の2つのTについては、地域での次世代人材育成や都市部からのクリエーターやエンジニアの移住などでイメージできましたが、地域の方々の異質な人たちの受け入れの寛容性については苦労していました。それが、今回の新型コロナウイルスによる社会のデジタルシフトで一気に進みました。

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ゴールデンウィークなどの帰省はオンラインでの対応が推奨され、買い物はオンラインショップの活用、飲み会もオンライン、なかなか難しいと言われてきたオンライン診療についても検討が始まりました。それと、政府からも推進された在宅勤務です。社会全体のデジタルシフトが進むと、地方創生の考え方も変わってきます。前述した自治体の移住定住・企業誘致・観光振興などの融合(デジタルシティプロモーション)なども、急速に進みます。全国の観光業や飲食、小売業なども政府の緊急事態宣言による外出自粛で大打撃を受けて、一気にデジタルシフトが進みました。また、三密を避ける働き方を模索する都市部のクリエイティブ・クラスの方々の移住先として地方都市が検討されはじめ、クラスター感染が懸念される小中高などの学校や大学もオンラインで授業や講義をおこない始めました。

〔リチャード・フロリダが定義したクリエイティブ・クラス〕
科学者、エンジニア、芸術家、音楽家、建築家、経営者、執筆家、デザイナー、漫画家、イラストレーター、各専門家などの職業別カテゴリーに分類し、かなり詳細な関連データを収集している。(ただし、「技能者」という分類の取り扱いが、国によってさまざまであることには注意が必要)

2007年当時と比較すると新型コロナウイルスによるデジタルシフトが進んだ今は、上記のクリエイティブ・クラスの方々の働き方もアップデートされていると容易に想像できます。また、デジタル関係の専門家であるエンジニアやプログラマーの方々の存在感も増しています。小中学校でもプログラミング教育が必須化されて地域の地場産業のデジタルシフトに地元の子供たちが関わる時代の到来も遠くはないと思われます。

これまでは、仕事の区分けをブルーカラー、ホワイトカラーなどという言葉で行っている人もいましたが、社会のデジタルシフトで事務的なホワイトカラーの仕事は人工知能やRPAのようなソフトウェアロボットが担当して、ホワイトカラーとして働いていた人たちはクリエイティブ・クラスへのシフトを求められることになると思います。

モノづくり日本が、価値づくり(目に見えないものに価値を付ける)日本に産業シフトする中でクリエイティブ・クラスの方々への期待は大きく、地方都市の産品や地場産業をデジタルシフトで再生するプロセスにも関わってもらいたい人材となります。

クリエイティブ・クラスとして次世代を切り拓く人材の育成は急務で、大学などの起業家育成プログラムにも導入してもらいたいですし、社会課題解決のためのプロセスが事業化されることで地方創生にも新しい芽が生まれてきます。

冒頭で述べたデジタルを活用した地方創生には3つのT(技術〔Technology〕、才能ある人物〔Talent〕、寛容性〔Tolerance〕)の三拍子がそろっていることが重要だという考え方ですが、地域での次世代人材育成や企業誘致・移住定住支援、地域の課題解決を実現する持続可能な事業創造支援につながります。

企業誘致は工場誘致型の取り組みからアップデートできていない自治体が多いので、脱工業化を考えた場合にはクリエイティブ・クラスと呼ばれる人材の多拠点生活のベースとなる拠点の立ち上げが急務になります。それについては、ワーケーションなどの拠点として地域のコワーキングスペースや公民館的な施設の活用という形でも対応できると思います。ただ、必要なのは都市部のワーケーションを推進する企業へのPRなので、そこについては自治体の連携や民間の連携で新しい働き方を模索していくべきだと考えています。政府は近隣自治体と連携したマイクロツーリズムの推進による観光業の再生やテレワークの推進による故郷の地域課題解決に関わりやすい環境整備なども検討しています。(ふるさとプロボノ活動を推進するテレワーク活用)

リチャード・フロリダによると、クリエイティブ・クラスは寛容性〔Tolerance〕の高い地域に惹きつけられるとあります。

寛容性〔Tolerance〕が高い地域をどのような形で探し出すのか?というと、現在の日本においては新しい取り組みを積極的に行っている自治体ということになるのではないでしょうか。新型コロナウイルス対策としてオンラインで柔軟な対応を行っている地域などもそれにあたると考えられます。

今まで規制などで難しいと言われていた地方議会や学校の授業、医療などの分野で柔軟な対応をしている自治体が存在感を増していますし、都市部のメディアなどでも積極的に取り上げられています。

また、新しい働き方や仕事つくりに対して積極的に取り組んできた自治体などは総務省や内閣官房のシェアリングエコノミー推進プロジェクトで可視化されています。寛容性が高い地域というのは、伝統などの既成概念と柔軟性をもって共生できる地域や新しい考え方への好奇心からまず一歩が踏み出せる地域のことをいうのではないかと感じています。

寛容性が高い地域では、コロナウイルス対応と同じでコロナと共生するための対応がスピーディに行われ、アフターコロナと言われる次世代をイメージして、コロナウイルスが蔓延する前からの地域課題(高齢化、過疎化、地場産業の硬直化など)の解決のために積極的にデジタル化に取り組んでいます。地域の伝統文化など後世にも残すべき価値もデジタルで保存して、よそ者に対しての寛容性を高めるために地域外の方々との関係性もオンラインなどで構築するなどの取り組みが始まっています。

働き方のデジタルシフトでクリエイティブ・クラスと呼ばれる人たちの動向が注目されています。彼らは都市部にとどまるのか、地方都市との多拠点生活に舵をとるのか、一気に移住・定住からのテレワークとなるのか。欧州ではテレワークスタイルを標準していこうという動きも出てきています。

クリエイティブ・クラスは、企業という枠を超えて活動します。クリエイティブ・クラスは、地域という枠を超えて活動します。クリエイティブ・クラスは、常識という枠を超えて活動します。そして、その活動で確実に利益を出して、事業の持続可能性を維持していきます。その活動のベースになっているのは、デジタルの力です。

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社会のデジタルシフトによる、学び方改革、働き方改革、デジタル地方創生から目が離せません。

デジタルシフトで前より良くなります!

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