見出し画像

汗かきとラーメン

昔、僕がまだ高校生の頃に港南中央駅の近くにラーメン屋さんがあったんですね。大通り沿いのカウンターしかない店だったと思います。それこそ男が一人で入るような、カップルで入るような店ではなく、高校生が一人で入るような店ではなかった。でも僕は入ったんですね。真夏のある日に。

そこは水を出さない店だったんです。今でもそういうお店あるのかな。店のよくわからんこだわりで水を出さない店。味が変わっちゃうからなのかわかんないですけど。水ごときでおかしくなるラーメンなんてそもそもが弱すぎるだろ。勉強し直せ。って話なんですけど。

まぁ、塾の行き帰りによくその店の前を通っていて気にはなってたんです。きっとこういう古めの佇まいの店のラーメンはきっと美味しいんだろうって。で、当時高校生だったけど意を決して入ったんです。今でこそ一人で知らないラーメン屋に入るなんて日常茶飯事ですけど当時はなかなか勇気の要ることでした。

気難しそうな感じの大将がカウンターの中にいたのかな? 記憶が曖昧ですけど。そんでラーメン頼んで。味なんて覚えてません。もう20年も前のことですから。永福町の大勝軒みたいな感じだったかもしれません。素直な僕はドア開けっぱなしで冷房も効いてない真夏の店内で汗だくになりながらラーメンを食べ始めました。しかし、やはり、暑い。熱い。それでも私こと大五郎はじっと我慢の子であった。やがて大五郎の尋常でない汗の量を見た店主はさすがに危険を感じたのか1杯のグラスに入った水をカウンターの上に差し出した。無言で。極めて、無言で。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?