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第1話~魚屋を継ぐ~

眠らない街、トウキョウ。昨夜就寝前の歯磨き粉の味がしっかりと口の中に残っているうちに目を覚ます。手短に湯種食パンにエシレバターを塗りながら今日のスケジュールを確認し、5時47分の中央線に乗り込む。夕方仕事が終わると、スターバックスでハウスブレンドを飲みながら、小一時間本を読む。そして僕は会食のために恵比寿の夜の街に早足で繰り出す。終電まで。そして、また歯磨き粉の味が残っているうちに目覚まし時計が大音量で鳴り響くのだ。

きっかけは、半年間の若き人材育成プロジェクト「福島復興塾」への参加だった。自分の社会的使命を追求するうちに、家業である魚屋おのざきを事業継承し、ふくしまの水産業を背負っていく覚悟が固まった。そして、東京で知り合った妻を連れ、家業の魚屋に入社した。小名浜の海が白い煙をくゆらせながら凍ってしまいそうな、それはそれは寒い日だった―2020年1月。

東京で経験したこと、いわきに移住して感じたこと、事業承継に関すること、魚のこと、なるべく具体的に筆を取ろうと思います。どうぞ3ヶ月間お付き合いくださいませ。     (いわき民報掲載)

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