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最後の晩餐で食すのはあら汁。

海の豊かさを次世代に繋ぐべく、魚のアラを活用した出汁開発プロジェクトを立ち上げて約1年。
https://camp-fire.jp/projects/view/534994)
先日、やっとプロトタイプが完成し、支援者の方々に配布することができました。一旦はフィードバックを集めて、更に改良を加えたのち、2023年中の一般流通を目指します。

大量の魚のアラの行方

われわれ鮮魚店では毎日大量の魚のアラが発生し、それらを捨てています。正確には業者さんに回収してもらっています。その行方はというと、工場に運ばれ、畜産飼料、養魚飼料、ペットフード、マーガリン原料、石鹸などに幅広く利用される魚粉(フィッシュミール)と魚油に加工されます。中には化粧品に生まれ変わる場合も。魚のアラをただ廃棄するのではなく、しっかりと他のものにアップサイクルしていることは大変素晴らしいことです。

ただ、私がひとつ問題定義したいのは、魚のアラの大半が食用ではない形で利活用されていること。
いや、もっというと、こんなにも旨くて栄養たっぷりの魚のアラを我々人類が食用として十分に利活用しきれていないことです。

魚のアラの素晴らしさ

未来をつくるSDGsマガジン「ソトコト」さんから取材を受けた際(https://sotokoto-online.jp/sustainability/15673)にも推薦させていただいていますが、まずはみなさんに小泉武夫先生の「粗談義」を読んでいただきたい。きっとアラへの向き合い方、いや、食への向き合い方が変わります。

「粗談義」から以下抜粋。

”粗の悟りとは、「美味なので捨てがたく、安いというよりもほとんどただという点で見逃せず、滋養に富むというところが手放したくなく、
野趣味と豪快さを満喫できるという点で生かしたい」”

なんとも素晴らしい一節。

ほかにも金言の数々。
「魚は概してアラの方がうまく、栄養価も高い」「小肴の骨をしゃぶる味がわからなくては、食味を談ずる資格はない」「肉食って粗食わぬ馬鹿」
「粗捨てる愚者、粗拾う賢者」「人の粗なんぞ探している暇があるなら今すぐに魚屋に走って粗を求めていらっしゃい」

独特な表現で魚のアラの尊さを表現する趣深い一冊です。

美味しい、そして栄養価が高い。そんな魚のアラを食用に活用しないのはもったいない、これが私の問題定義。国内の魚のアラの多くは、食用としてはそれほどまでに利活用されていないのが現状なのです。(魚醤などに活用する事例はありますがね)

特製あら汁をワンダーファームにて無料配布
特製あら汁を神白海岸にて投げ銭スタイルで配布
特製あら汁を潮目食堂にて無料配布


この1年の間に、特製あら汁を地域の方々にお配りする活動をしてきました。みなさん、目を見開いて「うまー!」と感動してくれます。私が作る特製あら汁には、相馬産のアオサが入ります。(隠し味)

最後の晩餐に何食べたい?と聞かれたらいつもこう答えます。

鯛の腹骨が入ったあら汁。

脂をたっぷりと蓄えたプリプリの鯛の腹肉のジューシーさと、アラから滲み出るあっさりした海鮮出汁のハーモニーは格別です。

魚のアラは旨いだけなく栄養価も豊富です。ママの母乳の中には「糖質」「脂質」「うま味成分」が入っています。これらの成分は脳に働きかけてドーパミンというホルモン物質を出し、また飲みたいと思うような本能の仕組みを作ります。赤ちゃんが母乳に飽きないようにするためでもありますが、それだけうま味が人間にとって重要な成分だということなのです。

商品化の難しさ

話を戻す。実際にアラを活用した出汁商品開発プロジェクトを立ち上げてみて痛感するのは難易度の高さです。およそ1年かけて出汁商品の開発に挑む中で、多くの課題にぶつかりました。魚のアラに含まれる油分が多すぎて乾燥に膨大な時間を食ってしまったり、そもそも魚のアラの乾燥を引き受けれくれる協力工場が見つからなかったり、魚のアラ由来の臭みが残ってしまったり、魚のアラが秘める豊かな風味を引き出し切れなかったり、などなど。(他にもまだある)

しかし、これらの課題は、弊社に在籍するベテランメンバーの知見を織り交ぜることで一個ずつ解決することができました。本当に奇跡だと思います。なんせ、専門家に相談しても解決できなかった課題が、何十年も魚と向き合ってきた古参メンバーの知見によってすんなりと解決できたのですから。

これは魚のアラを天日干ししている様子。とあるベテランメンバーの一声で、製造過程にこの天日干しの工程をいれることに。


現在はプロトタイプをクラウドファンディングの支援者にお配りしてフィードバックを集めています。それらを改善して、2023年中には一般流通を目指します。世界的にも珍しいであろう、魚のアラを活用した出汁、ぜひ味わっていただきたい。


この記事を読んで魚のアラに興味を持ってしまった方へ

まだまだアラ出汁のリリースに時間をいただきます。それまでの間に、魚のアラ(ヒラメ)から抽出した出汁を活用して開発した「金曜日の煮凝り」でも手に取っていただけたら。

新商品「金曜日の煮凝り」

▼購入はこちらから
https://www.onozaki100years.com/view/item/000000000006?category_page_id=ct8

それではみなさん、よいお年を〜。

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