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もしかしたら、毎日が自由研究かもしれない Lunch#66 西野誠さん

原宿のWeWorkというシェアオフィスで、歯列矯正にまつわる新しいサービスの開発・運営をしている西野さんに会ってきました。

物の見方がとても鋭い人で、話をしていてとても楽しかったです。
そんな西野さんのポイントはこちら。

・マジックを販売する小学6年生
・疑問を解決するのが楽しくて
・常識をちょっと壊してみよう


まずは、マジックを販売する小学6年生、です。


小さい頃の西野さんの夢の1つが、マジシャンになることでした。

最初はタネの仕込まれたマジックを披露しては楽しんでいたのですが、そのうちに、タネも仕掛けもないマジックに面白みを覚えていきます。

トランプマジックやコインマジックのトリックを本で調べては、それを練習するようになったのでした。

それと同時に、西野さんがずっと興味を持っていたのがパソコンでした。西野さんのお父さんは、自分で起業して仕事をされている方で、その仕事の関係上に、家におさがりのパソコンがあったんだそうです。

そのパソコンを触るのが大好きだったのですが、お母さんはパソコンを触ることに大反対でした。あまりにも西野さんがパソコンをしすぎるあまりに、キーボードを隠されたこともあるほど。

それでも、西野さんはパソコンを触りたくて、母親にバレないように、朝4時に起きて、パソコンを触って、しまいには小学3年生ながらホームページを作成していたそうです。


パソコンとマジック、この二つが混じり合ったのが、マジックのタネをネット販売するという考えでした。

西野さん曰く、マジックには古典と言われるネタ・手法が存在し、それがまとめられた辞典のような本が存在するのだそうです。

世間的によく見られるマジックの本は、文字や写真が大きく、その時代の有名なタレントの名前が使われたりしていました。そういった本はわかりやすく、キャッチーなのですが、西野さんが注目したのは、古典と言われる本でした。

その本は、ほとんどが文字だけで構成されていて、読み解くにもなかなか苦労するものでした。その本を図書館の本棚から引っ張り出してきて、そのたくさん載っているトリックの中でも、人に売れそうなネタを探し、それを自分で実演して写真に収めていったのでした。

過去のいいものを、写真など新しい技術を使って、復活させて、それを販売していたのだそうです。考えてみると、この発想にたどり着いた小学6年生とは、末恐ろしいものです。


次は、疑問を解決するのが楽しくて、です。

マジックとパソコン、とあともう一つ、西野さんが得意なものがありました。
それが自由研究でした。

小学6年生の時に、2つ上の姉の自由研究を手伝ったことがありました。
その時のテーマが、中華スープはなぜ冷めないのか。

コーヒーや紅茶はすぐに冷めてしまうのに、中華スープは食事が終わった後でもほのかに温かいのはなんでだろう。そんな疑問から、トライした自由研究でした。

結論は、中華スープの中のトロミが、保温効果となっているのだそうです。この保温効果と地球温暖化のイメージを結びつけた自由研究が、表彰を受けてしまったのだそうです。

西野さんにしてみれば、手伝っただけだったものの、表彰されたものだから、もっと頑張りたい、そんな思いが湧いてくるのも仕方のないところ。

その翌年、中学に入学した西野さんは、去年の自由研究の続編をやったのですが、先生からしたら姉の自由研究をパクっただけにしか見えず、ただただ怒られてしまったのでした。

そこで2年生の時には、完全オリジナルに挑戦します。それが、子ヤギをどうやったら鳴き止ませられるか、という課題。

というのも、空き地を管理していた父親が、雑草対策で子ヤギを飼い始めたのですが、このヤギは人が見えなくなるとずっと鳴き続けて、近所迷惑だったのだそうです。

そこで、子ヤギを鳴きやませる方法を試行錯誤していくのです。子ヤギが、飼い主のどこまで認識しているのか、何で飼い主だと判断しているのか、という動物の視覚を深く考察するものとなったのでした。

たとえば、ただのカカシでは鳴き止まないので、カカシの服装を似せたほうがいいのか、大きさを似せたほうがいいのか、などなど。

この自由研究は、科学アカデミー賞を受賞したのでした。

さらに、3年生の時には、なぜ市販の牛乳はチーズやバターにならないのか、でした。この作品は、日本学生科学賞を受賞。

このように、自由研究が評価されたことで、西野さんは、理数科の有名な高校に誘われて進学することとなるのでした。

ただ、入学して理数の勉強をして気づいたことは、理数系の勉強が好きなわけではないし、周りの同級生ほど頭がいいわけでもないということでした。そして、それよりも、ふとした疑問を考えて、調べて解決することが好きということでした。


その嗜好は大学に行っても変わらず、強みとして発揮されました。

1年生の時には、鉄道会社のインターンに参加して、商品企画やPRについて考えたり、3年生のときには大手システム会社のインターンに挑戦し、システムを0から作るという課題に挑戦したり、積極的に活動していました。


最後は、常識をちょっと壊してみよう、です。


大学卒業と同時に、3年生の時にインターンをしていた会社に入社し、2年ほど働いた後に、退職します。

この会社で働いていた2年間は、赤坂に住み、赤坂で働き、IT系企業で働いている人らしい生活をしていたのですが、西野さんはこの生活に2年で飽きてしまいました。

そして、そんな時に、ADDressというサービスに出会います。
このサービスは、月額4万円で、全国のどこにでも住み放題というサービスです。

詳しく説明すると、北は北海道から、南は九州まで、このサービスに登録されている家であれば、どこでも泊まることができるというものです。そして1拠点には7日以上連続で滞在することができないため、ずっと同じ場所に住むことができません。

このサービスにこの4月末から登録している西野さんは、このサービスとともに家を解約してしまいます。そしていろんな場所を住み歩いているわけです。

たとえば、鎌倉や南房総など、絶対に住む予定のなかった場所に、訪れて住んでみる経験。その経験を一度してみると、やみつきになるそうです。

それは、旅行でもなく、定住でもない。近来、家や職場という固定された点から生活圏が決まっていたものが、家が他拠点になるところで、生活も流動的になり、経験も移動し続けるという、新しい住み方の考え方。

そんな住み方、生き方を楽しんでいるのです。


そして、また現在西野さんが進めている新しいサービスも、近来の常識をちょっと壊すようなものです。

それは、歯列矯正のサービスで、たとえば3Dプリンターを使った矯正器具など、新しいテクノロジーの登場により、今までできなかったことができるようになるそうです。

実は、歯科体験は、1990年代からあまり変わってないそうです。予約が取りにくかったり、待ち時間が長かったり、正確な情報を与えてもらえなかったり。全てでは無いにしても、不親切な歯科医師は存在するそうで。

そんな中、西野さんの新サービスは、独自開発の先進ソフトウェアを活用し、新しい歯科体験を実現しようとしているのだとか。


家についても、歯列矯正にしても、自由研究にしても、西野さんはいつも日常のふとした疑問を、研究してみて解決しようとする、そんな試みを続けているのかもしれません。

そんな自由な発想がとても面白く、素敵な人でした。

2019.8.20 西野誠さん
原宿にて



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