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「熱海のスーパースターになりたい」から始まった Lunch#78 あつこさん

お笑い芸人のあつこさんと新宿でランチをしてきました。

健康ゾンビというコンビで活動されているのですが、それ以外にもユーチューブをやったり、ツイッター上で大喜利をやったり、いろんな活動をされております。

モットーは、好きでもないことに時間を使いたくない、とのことですが。
このありふれた言葉を、あつこさんが使うとき、その意味合いは少しだけ変わります。

そんなあつこさんのポイントはこちらです!

・熱海のスーパースターになりたい
・いつ死ぬかわからない
・自分がいなくなった世界を想像してみる


まずは、熱海のスーパースターになりたい、です。


熱海出身のあつこさんは、目標の1つに、熱海のスーパースターを掲げています。ツイッターのアカウント名にも入れているくらいなので、その本気度が伺えますね。

さて、あつこさんは現在芸歴2年目の若手芸人さんですが、もちろん2年前は、吉吉本の芸人養成所に通う研究生でした。

その養成所の卒業ライブでは、120組の卒業生が漫才やコントなどを披露するそれは大きなイベントなのですが、その場所は同時にオーディションのようなものも兼ねていました。

そして、そのライブでは毎年上位8組が発表されることが通例となっていました。
健康ゾンビももちろんこのライブに出場し、上位8組を目指しました。

この最後のライブイベントで、有終の美を飾ることはできず、そこからは、ムゲンダイホールという吉本の劇場のトライアル研究生という扱いになるのでした。そこには、先輩も含めて、400−500組近くの芸人さんが所属していて、それはもう厳しい競争でした。

そこでライブやイベントに細々と出演していたのですが、このままじゃどうしようもない。

そう考えたあつこさんは、自分から仕事を取りに行くことを決意します。

そこで、まずはフェイスブックに、投稿をします。
熱海のスーパースターになりたい!仕事ください!と。

そして、運よくこの投稿を見た、あるお祭りの関係者から連絡がきます。魚市場のお祭りのMCをしてほしい、と。

卒業ライブから、どうしようか悩んでいたところに差したひとすじの光でした。
もちろん、二つ返事でその仕事を引き受けたあつこさんでした。

しかし、そのお祭りの5日前に、あつこさんは肺炎で入院をしてしまいます。
しかも肺炎が悪化し、膿胸という病状にまで進展してしまいます。

結局、MCの仕事はそのまま流れてしまったのでした。


次は、いつ死ぬかわからない、です。


この肺炎から膿胸という病気は、かなり大変な病気であったのですが、実は、あつこさんが病院にお世話になったのは、この時だけではないのです。

0歳の生まれてすぐの時には、口蓋裂という、唇が裂けた状態になり、それを手術したり、5歳の時には、漏斗胸の手術をしていたり。

そのほかにも、中学1年生の時には、気胸を患ったり。大学浪人している時には、センター試験の3日前に、肺に穴が空いてしまったり。

それでも、センター試験は、そんなボロボロの体ながらちゃんと受験をしたのだそうです。

そんなことできるのかとも思いましたが、受験中は、空気を送り込むためのボンベを、机の横に置いていたらしいです。その時に、あつこさんの病気について知らない試験官が、ボンベをしまいなさいと注意してしまったのです。

その時は、状況を説明して、納得してもらったらしいですが、受験生に肺に穴が空いている学生がいるなんて、試験官も驚いたでしょうね。

さらには、3年前には、心臓の大動脈の手術をしてるなど、かなりの頻度であつこさんは大きな病気や手術を経験しているのですが、実はこれらはあつこさんの体質に関係があったのです。

それが、難病認定もされている、「マルファン症候群」という細胞の変異です。

あつこさんの説明では、細胞の組織が薄く伸びやすいのだそうです。それが原因で、肺に穴があきやすかったり、心臓の大動脈が伸びてしまったり、あと身長や手足がすらっと長かったり、そんな特異体質なんだそうです。

この病気について、あつこさんが自覚したのは、小学4年生の時でした。

病院で診察をしてもらった時に、そこのお医者さんに、何の脈絡もなく、
「いつ死ぬかわからない。」

そう言われたのです。これは、10歳前後のあつこさんの心をぶち抜くには十分すぎる一言でした。

その一言を受けたあつこさんは、それ以来、死ぬかもしれないんだ、と強い実感を持って生きるようになるのでした。


最後は、自分がいなくなった世界を想像してみる、です。


いつ死ぬかわからない、という条件は、よくよく考えてみたら、全ての人に当てはまるのですが、ほとんどの人はそんなことも考えずに、毎日生きています。

そしてその分、好きでもないことに時間を使うこともままあります。

それに対して、あつこさんは、いつ死ぬかわからない、という言葉をそれはもう実感を持って受け止めているます。

そんなあつこさんですから、その時に強く誓ったのでした。
好きでもないことに時間を使いたくない、と。

それは何もしたくない、ではなく。
本当に楽しいと思えること、好きだと思えることに自分の限られた時間を使いたい、という思いでした。

そして、その自分の時間を好きなことだけで過ごしている中で、もう1つ思っていることがあります。

それが、自分が死んだ後の世界への想像、です。

先にも書いた通り、あつこさんは、定期的に(およそ2年に1度ほど)手術や入院を繰り返してきました。その病院にいる時間は、仲の良い友人や同級生達から離れてしまうものでした。

その時間に対して猛烈な寂しさを感じるのだそうです。

例えば、幼稚園の時にも、1ヶ月ほど休んだことがありました。しかし、あつこさんがいなくなっても、当たり前ですが、幼稚園ではいつもの生活が繰り返されます。

もちろん、応援の手紙やお見舞いなどはしてもらえるのですが、それでも、自分がいなくてもなんとかなる世界、というものをあつこさんは、その時に強く感じてしまったのです。

それ以来、あつこさんは、自分がいなくなってしまった時の、その衝撃の度合いを想像するようになるのでした。入院や手術でいなくなった時に、自分がいなくてはどうにもならない、そんな状況が生まれたら、そう考えながら。

今、自分が死んだら。

その想像はとても残酷で、切ない想像になってしまいます。なってしまいますが、それと同時に、あつこさんの強い動機にもなっています。

自分がいなきゃいけない世界にする。そんな感覚でしょうか。

あつこさんのyoutubeチームのランチューズには、あつこさんが必要で、健康ゾンビにはあつこさんが必要です。

そして、近いうちにこう言われうようになるのかもしれません。
熱海には、熱海のスーパースターが必要、と。


2019.12.11 あつこさん
新宿にて

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