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辰年の女と愛と平和

私、年女らしい。
2000年生の24歳、気づいたら干支を2周したようだ。
辰ってなんかかっこいい。干支で唯一の架空の動物でもある。辰年、気に入っている。
そんな訳で私が人生で初めて入れたタトゥーは実はタツノオトシゴである。

いや待て待て。と思ったそこのあなた。そう。辰は龍ではあれど決してタツノオトシゴではないし、タツノオトシゴは実在する生物である。辰年だからってタツノオトシゴを彫るのは、酉年だからってペンギンを彫るくらい意味がわからない。いやペンギンは鳥だからそっちのほうがまだわかる。あれ、ペンギンって鳥だよね?

とにかく私は辰年にインスパイアされてタツノオトシゴに興味を持った訳だけど、それだけでタツノオトシゴを体に刻んだわけではない。

そもそもタツノオトシゴとはヨウジウオ目ヨウジウオ科タツノオトシゴ属に属する魚の一種で、日本では青森県以南に分布している。

この生物の生態に興味がある人なんていないかもしれないけれど、面白いので騙されたと思って聞いてほしい。

タツノオトシゴはオスが出産する。

というのも、タツノオトシゴはオスに育児嚢という袋があって、メスはオスのその袋に卵を産みつける。オスは卵を受け取って受精させ、出産までぱんぱんになったお腹を抱えて過ごす。

数週間後、オスは数百匹の稚魚を出産する。明確にいうと稚魚を体外に放出するということなんだけれど、つまりは出産だと思う。しかも卵を抱えている最中、オスは卵に栄養を与えているらしく、これは妊娠と言っても過言ではない気がする。

メスが卵を産み、オスが出産するなんて。私はこのタツノオトシゴの分業に感銘を受けた。人間の世界では産みの苦しみは女性にしかわからないとかよく言うけれど、二人で分かち合おうよ!みたいなタツノオトシゴの生態に愛着が湧いた。

しかもタツノオトシゴは平和の象徴でもある。縄張りを持たない生物なので基本的に喧嘩もない。そういうところも好きだ。

そんなこんなで辰年の私はタツノオトシゴを体に刻むことになった。ちょっと飛躍がある気はするけれどそうなったものはそうなってしまったのでそういうことにしておいてほしい。

すると不思議なことが起こった。タツノオトシゴを獲得してから約半年後に訪れたメキシコのプエルト・バヤルタという港町。

そこのシンボルがタツノオトシゴだったのである。次々と現れるタツノオトシゴのオブジェ。そして、それ以上に街に溢れているものがある。

レインボーフラッグだ。

プエルト・バヤルタはゲイフレンドリーの街として有名で、そこかしこにレインボーフラッグがぶらさがっている。
平和のシンボル、LGBTQ+フレンドリー、賑わうゲイバー、穏やかな人々の笑い声。

ノープランの一人旅。偶然が重なったこの街での滞在は、タツノオトシゴが引き寄せてくれたと思わずにはいられない。タツノオトシゴがくれた、ハッピーな出会いだった。

今日は札幌高裁が同性婚を認めない規定への違憲判決を出した日。

性指向と性についてはマジョリティの私だけど、だからこそ地元札幌がもっと賑やかで、平和で、楽しい、メキシコのあの街のようになってほしい。

もし男性を好きになる女性がマイノリティだったなら、私は生きるのが怖い。もし自分がマイノリティでも安心して生きていける、そういう土壌のある世界をどんどん広げていきたい。私が彼らの立場になったとしても、安全だと思えるか、みんながそれを考えてみれば、世界はもうちょっと優しくなると思う。

子どもを産む男性がいたって、子供を産まない女性がいたって、だれがだれを好きだって、なんだって良いじゃない。平和にいこう。

タツノオトシゴのように。

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