見出し画像

レベニューマネジメントは旅館でも使える販売手法。

今年の5月くらいから少しずつ旅行需要が回復してきている。
県民割や隣県割も影響も効果絶大で、
今やGOTOトラベル以上の安定感を示している。

そんな中でもコロナの感染者は、一定以上はあるものの、
弱毒化していることもあり、世間一般の人々にとっての脅威感は薄れている。
語弊があるかもしれないが、これは良いことだと思う。

ホテルマーケットも盛り上がってきている。
ホテルの新規開業やリブランドオープンなど、
都市部だけでなく、中核都市でもどんどんホテル件数は増え続けている。
円安が進行していることもあり、特に外資の投機としてはグッドタイミングだ。
我々のところにも宿泊施設の運営の相談や売却案件の相談が増えてきている。

需要が高まることは嬉しいことだが、供給ペースもそれ以上に増えている中で、各ホテルともに熾烈な凌ぎあいになっているのは事実だ。
利用者側の視点で見ると、アッパークラスのホテルでも比較的安く利用できて、コスパも高く満足度も高い。

ただ、価格は需要に合わせて変動するので、
リピートする可能性は高いとは断言できない。
1度きりの利用となる場合も多い。
リピート対策はどのホテルでも課題の一つではあるが、
以前よりも難しい課題になっている。これも事実だ。

需要に合わせて、タイミングを計り、価格を変動させて、
顧客を獲得する「レベニューマネジメント」は、
今はどのホテルでも基本となっている。

大抵は支配人や予約のマネージャーなどが
レベニューマネージャーの役割を兼務しているケースがほとんどだが、
大手のホテル、チェーンホテルなどは、
専門のレベニューマネージャーがいて、独自の管理手法で
圧倒的なシェア獲得に専念している。

ホテルの場合、客室売りがベースになるので、
価格を変動させることのリスクは、1泊2食型の旅館よりも低い。
指標となるのは、
「販売客室単価/ADR」と「稼働率/OCC」の2つがメインになる。

ADRとOCCは相反する数値のため、ADRを上げると、
一般的にOCCは下がり、ADRを下げると、一般的にOCCは上がる。
そのため、ADR×OCCの数値であるRevPARという単価が
レベニューマネジメントで公平に評価をする指標となる。

旅館では1泊2食型での商品販売が主体となるが、
構成としては(一般的に)、食事代(6割~7割)、
客室室料(4割~3割)と食事代のほうが室料よりも
ウエイトが高い場合もあるので、ホテルでの販売管理手法である
レベニューマネジメントは適用が難しいと言われてきた。

旅館とホテルでは全体の収益率(%)が異なるので
(一般的に収益率はホテルが高く、旅館は低い)、
単純に安易に、価格を変動させると、収益率がさらに悪化してしまう。
円安&戦争の影響で、輸入商品だけなく、
国内仕入れの料金も上がっている中で価格の変動はかなりリスキーである。

旅館はホテルと違い、需要の変動が規則的なのが特徴だ。
休前日・祝前日が一番の繁忙日で、次に金曜・日曜の需要が高い。
また、年末年始・GW・お盆・夏休みなどの期間は需要が高い。
ビジネスホテルで需要が高い平日は、旅館にとっては閑散日となる。

少数でのオペレーションができるビジネスホテルと違い、
旅館の場合は、多くの人手が必要になる。
フロント以外に、仲居さん、調理、清掃、修繕、総務経理など。
アウトソーシングが難しいエリアにあることもあり、
内製化することでの運用を維持できている。

では、旅館ではレベニューマネジメントの手法は取り入れられないのか?

私は可能、取り入れることでのメリットは高いと考えている。
もともとホテル出身で、旅館運営に長く携わってきたものとしては、
今はホテルの良いところを旅館も取り入れる時代だと思っている。
逆もしかりだ。

どこに注力するかというと、
需要の変動が激しいところを利用するのが一番のセオリーだ。
休前日の「旅館版RevPAR」をまず上げることを考えることがポイントだ。
平日も「旅館版RevPAR」を上げることはできると思うが、
課題である労務問題を解消するために、1つの案になるが、
平日は思いきって休館日を出来れば毎週連休で取り入れて、
旅館の課題である全体の収益率改善に取り組む方がベターだと私は思う。

レベニューマネジメントを成功させるための重要な要素の中の
一つである「需要予測」は、
生活必需ではない「レジャー目的の旅行」は需要予測が難しい。
しかし、休前日や連休、夏休み、年末年始・GWなどの
特日などは需要予測がしやすい。
まずは、上記の需要予測がしやすい日を確実に高稼働・できれば満室にするための販売・販促に注力する。

旅館版ADRの定義を私なりの解釈をした場合、
1泊2食付などのPKG(パッケージ)
     +
滞在時の消費単価(飲料+売店+付帯サービス)
  =旅館版ADRとなる。

「旅館版RevPAR」=旅館版ADR×定員稼働率 となる。
上記の最大化を行うことが、
しいては旅館の収益率最大化につながると考えている。

旅館やリゾート系ホテルについては、
需要の平準化が過去から続く永遠の課題であるが、
需要の変動の波が、通年のシーズナリティだけでなく、
week内でもあるので、
その特性・課題性をいかに把握し、
いかに解決に向けてベストを見つけるかがとても重要である。

抑えるポイントが多岐にわたり、ロジックが複雑であり、
実行の難易度が高いからこそ、AIでは解決することが難しいのが
旅館のレベニューマネジメントだ。

であるからこそ、旅館にはポテンシャルがたくさん秘められている。
私はそのまだ潜在的なポテンシャルを掘り起こしながら、
サステナブルな旅館の経営・地域の発展に寄与するミッションに
大きな期待感をもっている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?