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海外の映画

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愛とは、息苦しくて狂おしい:グザヴィエ・ドラン監督作【前編】

ドラマ好きの友人がいる。好きな日本ドラマや韓国ドラマについて語る時の彼女が、私は好きだ。 彼女は、日本だと北川悦吏子のドラマ及び北川さんという女性を崇拝していて、『愛していると言ってくれ』『ビューティフルライフ』『オレンジデイズ』をビデオが擦り切れる程に見たという(さすがにビデオじゃないか)。 韓国ドラマで言えば、最近はやはり『愛の不時着』にハマって、既に10回近くリピートして見ているとか。 そんな彼女に、同じく韓国ドラマの『よくおごってくれる綺麗なお姉さん』を薦めてみ

大人になりたいと願った時こそ、子どもらしさを手放したくない:映画『ビッグ』

おとなになりたい。 子ども時代、子どもならば、一度はそう願ったことがあるだろう。 小学5年生当時、私のクラス担任は、今で言えばコンプライアンス違反も甚だしい問題教師だったのだが、その教師主導で、阪田寛夫の「おとなマーチ」という詩(大中恩作曲とあるので、歌もあるらしい)を群読したことがある。 なりたい なりたい なりたい なりたい おとなになりたい たい おとなになったら コーヒーをのんじゃう ガッポ ガッポ のんじゃう ぎゅうにゅうなんか いれないでさ ぎゅうにゅうなん

男と女って、どうしてこうなんだろう:映画『男と女』

「恋愛映画」というジャンルの中に、「許されざる恋」というカテゴリーがあり、その中に「不倫もの」という一大巨頭が君臨する。 この、不倫もの、が、私は大好きである。 不倫が好きなわけではなくて、「不倫もの」が好きなのだ。 何ゆえ不倫ものが好きなのかと言えば、そこに「純」を見るからである。 もちろん、不倫ものと一口に言っても、そこから更に分派しており、不倫を貫いて駆け落ち or 心中してしまう系・泣く泣くさよならして家庭に戻る系・にっちもさっちも行かなくなって、作者がどちら

これぞ、本物のカーセックス:映画『デス・プルーフ in グラインドハウス』

私の父は、その昔、愛車を乗り回していた。 乗り回していたと言っても、一人でドライブに繰り出すわけではなく、家族を乗せての車移動が多かったに過ぎないが。 父は、運転が上手だった。 しかし、安全運転とは程遠いもので、びゅんっびゅんに飛ばしていた。 当時私は小学生で、小学生の頃の記憶なんて断片的にしか抱えていないけれど、家族一同を乗せたトヨタのハリアーのメーターが160km/hを指していたことを、私たち家族は克明に覚えている。 愛する妻と愛しい3人の我が子を乗せながら、法

あの頃、私たちは無敵だった:映画『サニー』

1992年生まれの私が「女子高生」だったのは、2008年4月から2011年3月までのことだ。高校を卒業してから、間もなく10年が経過しようとしている。 私の女子高生時代には、男の影なんてものは一瞬も姿を見せなかった。でも、今思い返せば、幾つかの心当たりがなくもない。 たとえば。入試本番、同じグループで模擬討論をした(私の母校の入試内容は、内申・面接・グループ討論だった)男の子とイイ感じになりそうだった(試験後は、2人きりで電車に乗り込み、隣同士に座って仲睦まじく帰り、合格

夢を追う若者への人間賛歌:ラ・ラ・ランド in コンサート

愛して止まない映画『ラ・ラ・ランド』を「ラ・ラ・ランド in コンサート」@東京国際フォーラムにて、再々鑑賞。 スクリーンに映画本編を映しながら、それに合わせて東京フィルハーモニー交響楽団による生オーケストラが劇伴を奏でるというシネマコンサートの『ラ・ラ・ランド』版(演者の声や歌声は映画の録音が流れるので、これにぴたりと合わせるプロの技には驚嘆)。 これまで『スターウォーズ』や『ハリーポッター』シリーズ、『ティファニーで朝食を』や『ゴッドファーザー』等が、このシネマコンサ