漫画『同級生』を読んだ感想
1週間ぐらい前に『同級生』(中村明日美子 2008 茜新社)という漫画を買いまして、その翌日に感想を配信でお話ししたのですがうまくまとまらなかったところもあるので、改めてここで書こうと思います。
私はBL漫画を読んだことがなく、何か読んでみたいなと思っていたところリスナーの方々から『同級生』をおすすめしていただいたので読んでみたというのが今回の流れです。感想に関しても、そもそも私は恋愛をテーマにした作品に触れることすらないためもしかしたら邪道の楽しみ方をしているかもしれません。しかしそれは私の自由だ。
――『同級生』とは――
中村明日美子さんによるBL漫画です。
草壁(男子高校生)と佐条(男子高校生)と原(音楽教師・男)が主要人物で、基本は草壁と佐条のあれこれが描かれます。
あらすじはこれ以上説明しないので各自読んでください。ステマではないです。
ていうかむしろ皆さんはある程度読んでいるという想定で感想も述べていくので、ネタバレされたくないよという人はマジで『同級生』読んでからこの先スクロールしていってね!
ちなみにこの漫画を買おうとしてからなかなか店頭で出会えなくて、というか中村明日美子さんの他の作品はあるけど『同級生』だけ逆に置かれてない(既に売れてる)というパターンがあったりして、買うまでに割と苦労した。さっさとネットで買えばよかったと思う。
ちなみに続編の『卒業生』は2冊ともネットで買ったけど送り先を間違えたせいで親の元に届いてしまったのでまだ読めていません。年末年始で読みます。
それでは、思ったことをとりあえず箇条書きにしたので、時系列順に補足していきます。
・「このクラス、最高」
・「佐条、めちゃくちゃ頭良い」
・「上の句下の句言うの、いいね~」
・「草壁、告白したことないんだろうな~」
・「枕詞という単語が草壁の口から飛び出た理由」
・「ペットボトル、拾うや拾わざるや」
・「草壁、かなりエロい女性と付き合ってたのではないか?」
・「佐条、負けず嫌い」
いくぞ!
・「このクラス、最高」
この漫画の舞台は男子高ですがクラス対抗合唱祭があるようで(レアなのでは?)、その練習をするシーンから始まります。たぶん最初の練習ですね。そこで佐条は口パクをしていてそれに気づいた草壁が……という感じで展開していくのですがまあそれは置いといて、気になったのは草壁と佐条を含むA組の生徒達の練習態度です。
彼らは最初の練習では文句を言いながら歌います。おそらく別に上手いわけでもない。
そして後に再びクラス練習の様子が描かれるのですが、ここで合唱祭を目前にして彼らはバッチリ上手くなってるんですよね。つまり各自が練習を頑張ったというわけです。
こいつらめちゃくちゃ良いやつだな~~~!!!!!
と思いました。
合唱祭なんてダルくてしょうがなさそうなのになんで真面目に取り組んだのかは不思議でしたが、これは草壁らの影響が大きいと思います。
草壁らというのは、草壁および草壁とつるんでいる奴らのことです。彼らはバンドを組んだりタバコを吸ったりしていて、おそらくクラスの主導権を握っています。バンドを組む人と法を破る人はクラスの主導権を握ります。これは私のデータに基づく偏見です。
もし草壁らが単に法を破る人だけの集団だったら合唱に真面目に取り組むなんてことはなかったと思いますが、彼らはバンドをやっています。音楽が好きなのです。だから合唱をすることに抵抗がない。したがって練習も無意識のうちにちゃんと取り組み、結果としてクラス全体がまともに歌う流れになったのでしょう(全部憶測)。
あとはそういう流れを途切れさせなかった原先生の手腕もなかなかだと思います。生徒達もいつ目が覚めて「は?てか合唱だるくね?笑 練習サボってスタ練すんべ」となるか分かりませんでしたがそうはならなかったわけだから……。そうならなかったA組、そうさせなかった原先生、みんな良いやつ!
私は草壁らを嫌っているわけじゃないぞ!
・「佐条、めちゃくちゃ頭良い」
高2秋の進路面談にて、志望校(京都大学)に関して原先生から「このままの成績でいけば問題ない」というコメントをもらっているけど、これめちゃくちゃすごい。そこそこの進学校でも余裕でトップ層だと思います。佐条、マジで頭いいんだねえ。
もしかしたら原先生の見積もりが甘いのでは?とも思ってしまいましたが流石にそこまで無責任ではないと思いますし、佐条なら余計に焦らせても良い効果は無いだろうと判断した上での「このままの成績でいけば問題ない」なんだろうねえ。こういう先生いいねえ。そして佐条、マジで頭いいんだねえ(2回目)。
・「上の句下の句言うの、いいねえ」
百人一首の第一首「秋の田のかりほの庵の苫をあらみ 我が衣手は露にぬれつつ」の上の句を草壁が言って、下の句が思い出せないところを佐条が教えてくれるシーン。これいいねえ。こっぱずかしくなるほどアツアツなやりとりだねえ。
以下余談です。佐条は「下の句の方が有名な歌なのに……」と言っていますが、私は草壁と同じで上の句の方が印象強いです。あと私は「かりほ」ではなく「かりお」の読み方で覚えさせられました。マジの余談でしたね。
・「草壁、告白したことないんだろうな~」
告白シーンの言いよどむ感じ、今まで自分からは告白してこなかったということが感じられていいですね。
はい。
・「枕詞という単語が草壁の口から飛び出た理由」
第3話【はじめての人】冒頭で草壁が「なんスかそれどーいう枕詞?」というセリフを放つのですが、正直この漫画を読んでいてここが一番驚きました。
草壁、枕詞なんて単語知ってんの!?っていう。仮に知っていたとしても日常会話の中でそんなさらっと適切な形で使えるワードか!?っていう。
最初は正直すごく違和感を覚えましたが、背景を考えてみたら可能性が2パターン浮かんだので書きます。
①佐条と勉強会をした
第2話【秋】の終盤で上の句下の句を言い合うやつをやりましたが、その流れで草壁が佐条に国語の勉強会を持ちかけて、そこで覚えたのかな、というパターン。しかしこれは想像しづらいです。なぜならこの行動は草壁の軽やかさに全くそぐわないから。密かに興味を持っていた友人との接点が急に生まれて、過剰に反応してしまうやつ。付き合っている上にバンドやってる人間が国語の授業をきっかけに放課後の予定を組むわけないだろう!(笑)(泣)
なぜ私が笑ったり泣いたりしているかというと、この文章を打ちながら自分自身にめちゃくちゃ刺さっているからです。私は中学のとき同級生に軽いノリで「なんかCDを貸してほしい」と言われ、計5枚、アルバムごとに解説をびっしり手書きした紙を貼り付けて渡したことがあるよ!(笑)(泣)みんなもこういう経験あるよね!(笑)(泣)アーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!
というわけで①のパターンは無いです。ちなみに私にはバンドマンを憎む気持ちは一切ありません。
②国語の授業中に暇になっちゃった
第2話【秋】冒頭で、国語の授業を受けながら草壁と佐条は見つめ合っています。その様子は他のクラスメイトにも指摘されるほどがっつり見つめ合っていたらしいですが、さすがに授業の最初から最後まで見つめ合っていたというわけではないと思います。そんなことしてたらもはやギャグ漫画になっちゃうからね。
つまり目を合わせている途中でどちらかが先に視線を外すわけですが、これはおそらく佐条でしょう。関係性的にもそう思われますし、佐条の方が席の位置が前方にあるためそもそも見つめ合うための姿勢がかなり不自然なものです。(えっ、じゃあ見つめ合いのスタートはどうなってたんだ?佐条は草壁の視線に気づいて振り返ったのか?それともふいに振り返ったら草壁が見ていたのか?)
というわけで草壁は佐条に視線を外されてしまい、暇になる。またこっち向かないかな~などと思うがなかなか向かない。「つまらん」と思って寝ようとするが、なんかもやもやして眠れない。だから仕方なく授業に耳を傾ける、という流れになったんじゃないかと予想します。おそらく普段そんなにちゃんと授業を聞いてないと思うので、内容も逆に新鮮に感じたのではないでしょうか。
そこで!なんとなく聞いていた百人一首の解説の中で「枕詞」という表現技術を知り、それが少し面白く感じてしまったため記憶として定着し、佐条との会話においても飛び出てきたんじゃないか、というのが私の見立てです。
さらに興味深いのは、草壁と佐条が見つめ合っていた時にはまだ国語の先生は第一首の説明を始めたばかりなのですが、第一首には枕詞は存在しないんですよね。順番通りだと枕詞が最初に登場するのは第二首なので、草壁は少なくともその時まで割としっかり授業を聞いてしまったのではないでしょうか。
以上が②のパターンの内容です。私はこっちの筋が見えてから草壁の枕詞発言がめちゃくちゃ腑に落ちました。「因果」がそこに見えた。
そして間接的にではあるが草壁に授業を聞かせる佐条、いいね。もう本当にすべて憶測ですが。憶測すぎるので皆さん真に受けないでね。そもそも草壁の普段の授業中の態度を知らないし。
でも私は今回『同級生』を読んでいてここが一番楽しかった。
・「ペットボトル、拾うや拾わざるや」
初キスの時は、佐条がうっかり落としたペットボトルを2人が拾おうとして手が重なり、その接触が草壁に火をつけ突発的に唇を奪うという暴挙を引き起こしました。
一方、第4話【ばかと大馬鹿】では2人が喧嘩をし、草壁は怒りにまかせてペットボトルを地面に投げつけます。転がるペットボトルは佐条も拾おうとせず、立ち去っていく草壁……。
対比~~~!!!!!
・「草壁、かなりエロい女性と付き合ってたのではないか?」
草壁はバイクの免許合宿にて友達から次のように言われています。
「いやオマエってさ あんまこー…… 女のコの話とかのってこないじゃん つきあうのとかもなんつーか…… 来る者拒まず去る者追わずてゆうかさ」
つまり、これまで女性との交際経験はありながらもそこにはあまり草壁の積極性がなかったことがうかがえます。
しかし草壁! 佐条とのキス等あらゆるやりとりにおいて動作がめちゃくちゃ自然じゃないか!? その技術どこで磨いたんだ!? 天性のものなのか!?
私は、草壁がかつてエロい女性と交際していた際に身につけたテクニックだと考えます。
雑な考えなのでこれ以上は語りません。
・「佐条、負けず嫌い」
勉強ができる人は大抵負けず嫌いです。これも私のデータに基づく偏見です。
というわけで佐条は負けず嫌いなんだろうな~と思っていましたが、それが顕著に出たのが模試会場前でのキスだと思います。
このキスの前まで、草壁がひたすら格好良いんです。話の流れとしては、
模試に向かう佐条が電車内で倒れる→草壁が奇跡的に駆けつけて助ける→「今から電車に乗っても模試の開始に間に合わない」と佐条パニクる→草壁が佐条をバイクに乗せて模試会場へ向かう→道中で草壁が未来への前向きな気持ちを語る→無事、開始時間前に模試会場に着く!
という感じです。草壁かっけ~!!!
この格好良さはバイクに乗せられていた佐条も感じていたことでしょう。そこで佐条の負けず嫌いが発動したのではないかと私は考えます。
草壁かっこよぎないか?あと俺かっこわるくないか?負けてらんねえな、と。
そこでたどり着いたのは模試会場、いわば佐条の主戦場。
ここでは佐条だけが戦士なんですよね。草壁は応援することしかできず、これまでのかっこよさコンボに隙が生まれます。
その瞬間!佐条は初めて自分から草壁にキスをする!手綱を握る!
お前だけに良い格好させてらんねえ、俺だってやる時はやるんだよ、っていうね!(そんなことは言っていないが)
佐条かっけ~!!!!!!
考えすぎか?
ここは一番アツくなったシーンですね。私は闘う人が好きだ。
はい!以上が感想でした。他にもいろいろ思ったことはあったけどそれらはこまごましていて書きづらいので書きません。
改めて言うけど恋愛系の作品って普段全然読まないので新鮮でした。それゆえに変な視点で読んでしまったかもしれない。そんな私の感想を最後まで読んでくれてありがとうございました。私は楽しかった!
あと推測みたいなことが多くなった気がするけどこれは本当に私の個人的な意見、憶測なので、正解として押しつけるつもりなど一切ないし間違ったものもたくさんあると思います。だからまあ受け流してください。
ともあれ長文お読みいただき感謝!
『卒業生』読んだらまた配信で話すと思うのでぜひご視聴くださいまし。