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輝く! 12月の短歌 el faro大賞

今年からなぜか始めた短歌、今では毎日のように詠むようになりました。せっかくなのでと、noteにもまとめを載せるようにしていたところ、フォロワーのel faroさんが12月の短歌110首の中から大賞を選んでくださいました。自選すると選びきれないので、選んでもらったそれを、el faro大賞として発表させて頂きます!

審査員のel faroさんのnoteはこちらです↓

以下、el faroさんのコメントです。

「選歌につきましては、10首単位ごとに1首を選び、選ばれた11首より天、地、人そして特別賞を選定いたしました。では、発表いたします」

【天の歌】

12番:大好きが閉まらないとき目元からこぼれるラメの美しさったら

選評 「大好きが閉まらない」という表現が秀逸。溢れ出るのを超えた気持ちがよく表されていると思います。「こぼれるラメ」その目の輝きを見た驚きを「美しさったら」としているところなどは、こちらが驚きです。

【地の歌】

26番:深海に沈んだ小石夢を見る浅瀬のころの星のゆらめき

選評 過去の自分を振り返って、その時の心模様を「星のゆらめき」と表現しているところが好きです。

【人の歌】

35番:ひまわりの種を食べてるリスの子の膨らむほっぺそこだけ真夏

選評 冬に向けて食料を蓄えようと口いっぱいに夏の象徴とも言うべきひまわりの種を頬張る子リスをユーモラスに表現されているところが好きです。

【特別賞】 83番
染色体1本多く持ってきた君が手渡す優しい世界

以上、4首選んで頂きました!
自分でも気に入っている4首なので、自選してもいいくらいでした。

特別賞については、息子にはダウン症があるのですが、ダウン症というのは本来2つで一組になっている染色体の21番めが3本あることで、正式には21トリソミーと呼ばれます。1本多いのは、この世界を優しく見るためなのかもしれないと思うことがあります。そんな一首を選んでくださりありがとうございました!

ということで、2023年はこちらの記事でおしまいとなります。今年も一年ありがとうございました。元旦からも「毎日超短話」から始めさせていただきます。

みなさま、よいお年を!


12月の全短歌110首、長いので暇なときにどうぞ。

1
帰り道飛び越えてみた水たまり今朝は凍ってトリプルアクセル

2
古本にアンダーライン引いてあり問い合わせたい「気が合いますね」と

3
この雨がミネストローネになったときふたりでペンネを買いに行こうよ

4
電線の五線譜並ぶ鳥たちが誰がラの音鳴らすか会議

5
マフラーに残る香りに包まれてこのまま死んでもいいかもしれない

6
本になるほどの人生ではないと君は言うけど僕は読みたい

7
1000ピースパズルの最後一枚が足りなくなっても返してあげない

8
あのへんでゆらゆらしているのわかる?11月の置き手紙だよ

9
トゲトゲが胸の中にあるけれどこぼれた息は白くて綺麗

10
いかさまと呼ぶならわたくしもたこさまと呼べと八本の足

11
泣きはらしわめいていたのに食卓に座れば君は晴れた顔する

12
大好きが閉まらないとき目元からこぼれるラメの美しさったら

13
ちいさな手つないで歩くその一歩君にとっての偉大な一歩

14
「わたしいまひとりでいたい気分なの」「ぼくもそうだよ、両思いだね」

15
ほんとうは先に着いていたけれど待ってる顔を見たかったから

16
早足で過ぎる季節を遅らせる君の歩みを僕が見守る

17
それだけをリセットしたいためだけに尊い今を差し出せません

18
夏までは溶けないつもりだったのにあなたがわたしの気候を変える

19
置き忘れの傘があるじを探すようにわたしの心がわたしを探す

20
帰り道君が何かを言いかけて目を閉じている変電所らへん

21
12月32日にこの場所でまた会おうねって離れていく手

22
リフトから降りずにまわる何周も終わる覚悟のできない恋だ

23
絶対に食べ切れぬ量のポップコーンひとり泣いてる映画館で

24
墨田区で生まれた母が東北で生まれた父と交わした契

25
続々と吸い込まれていく改札の人々が無事帰って来ますよう

26
深海に沈んだ小石夢を見る浅瀬のころの星のゆらめき

27
脳内に貼られた付箋カラフルで眠れないから一枚ずつ剥がす

28
コンパスで描いたみたいにまんまるな心はたくさん転がったから

29
知り合いの知り合いのまた知り合いと言われてそれはたぶん俺です

30
僕がもし雨粒ならば泣いている君の頬触れ愛してると言う

31
手のうちをあっさり明かすマジシャンのような嘘つくあどけない君

32
人々がおつかれさまと言うたびに空が優しく萌えていきます

33
鮭くわえ木彫りの熊が言うことにゃそろそろ別の魚が食べたい

34
海鳴りのように飛び立つ飛行機が、ごらん朝だよと明星を指す

35
ひまわりの種を食べてるリスの子の膨らむほっぺそこだけ真夏

36
どの道を選んでもまたこの場所に来るけど見える景色は変わる

37
「降ります」のボタン押すか押さないか迷うふたりはバスごと感電

38
片側で交互通行してるから一つの言葉一つで返す

39
短針と長針重なる一分間まるで逢瀬を楽しむように

40
立ち上がる姿がミーアキャットみたい見張ってるんだねそうなんだね

41
妻の姓選んだだけで婿なのと聞かれる世の中そろそろ終われ

42
よろこびとかなしみの川の真ん中はたぶん宇宙と繫がっている

43
満月の真ん中雲のもやかかり輪っかになった恋ヶ窪の空

44
風が吹くだけで泣きたくなるような恋をしているあなたに触れて

45
「きらきら」と辞書で引いたら君の顔出てきたという嘘が愛しい

46
形のないあたたかいもの世の中に置き配してる神様たちが

47
間違えて乗り換えた汽車楽しくて今のすべてが正解になる

48
淋しさが1ダースあるから今夜だけ半分あげる半分だけだよ

49
あの道はなんにもないように見えるけど地上1センチは虫の散歩道

50
食卓にお皿が一つ増えるたび笑顔も増えるなんでもない日

51
鯛焼きに家族の名前つけてから優しい順に並べて食べる

52
すっぴんの月が浮かんでいる朝に世界の秘密を知った気になる

53
冬の音がらんららんらと聞こえてる完璧な日なのにあなたがいない

54
公園にコックピットが落ちていて「燃える」のほうに捨てるか迷う

55
平熱のときの優しさ見逃して病んでるときだけ甘えてごめん

56
募金みたいチルド室へと送られる機嫌損ねたとき用チョコレート

57
貝殻を割るのにちょうどいい石を探す旅出るラッコの家族

58
枯れ葉さん、ひとりで落ちていくことは淋しくないかい、怖くはないかい

59
南極で暮らす仕様のペンギンも寒さをしのぐおしくらまんじゅう

60
生活に彩り与える商いをしている木こり幸運の森にて

61
砂浜に愛の言葉が書いてあり流れるまではわたしのものとする

62
柊のギザギザ撫でて馳せてみるあの子の痛み少しくらいは

63
神棚と戯れている幼子はぼくが神様だという顔で

64
押入れに出せなかったラブレター出さなくてよかった本当によかった

65
王様と殿様首脳会談に遅れて来たのは皇帝ペンギン

66
あの日たぶん二人を別れさせたのは最低な神の最高なはからい

67
こっちだよって天使か悪魔がささやいて初めて曲がる左折可の道

68
朝焼けと間違えられた夕焼けが今から仕事の人たち染める

69
流氷に寝転びながらシロクマが溶けゆく空に手を伸ばしてる

70
ここからは海だと知ってるお魚に自分の居場所を教えてもらう

71
みてごらん触ってごらん撫でてごらん目を閉じてごらん愛されてごらん

72
スーパーで一度だけ見た「しあわせの素」が我が家の食卓にある

73
本日はコーヒー豆に飛び込んだハートを見つめて大人になる日

74
君の目が淋しさばかり映すから映写係の僕は退屈

75
この部屋で君が笑い転げてるだけの平和が目からあふれる

76
太陽と月のあいだの人々はふたりをつなぐ中継地点

77
速さ×時間の公式使えない寄り道たくさんしているもので

78
魚とか鳥とか猫とか花とかもクリスマスだと気付いてるかも

79
散らかったおもちゃの海の面積が徐々に広がりコタツの中まで

80
気に召さぬ音楽会で不機嫌な吾子はそれでも律儀に拍手

81
この家でいちばん小さな君だけどいちばん大きな心を持ってる

82
何号か聞かずに図れる方法を探り合ってる彼らの指先

83
染色体1本多く持ってきた君が手渡す優しい世界

84
くださいと言ってないのにやってくる朝を毎日もらえるなんて

85
いつの日かたんぽぽとして咲く日までわた毛の行方見守り続ける

86
通学路にマクドナルドのある人生だったら何かが違ったんだろう

87
特別なことなど何もないようで心が旅に出かけてる夜

88
変化するために生きるというような雲の流れに身を任せたら

89
となりから君の寝息が聞こえれば温暖化する私の心

90
誕生日前夜からもうお祝いをしてあげたくなる天使が寝てる

91
「好き」以外言えなくなったら終了のルールで始まる恋の時間

92
この道が正解なのかわからずに家には帰る帰宅部のエース

93
同じとこえくぼあるのに気付くのは君がたくさん笑っているから

94
つまりそのお腹が減っただけなので喧嘩はおしまい何か食べよう

95
見たことがなくても気配がするのならサンタクロースはいるのだろう

96
泣くことを選んで泣ける今日の日を抱きしめているあなたの光

97
いつまでも変わらず好きな色があるような感じで好きな人がいる

98
今、何か言いかけたの?と聞きながら微笑む君と歩調を合わせる

99
人生の片隅あるいは真ん中でブルハが歌う「終わらない歌」

100
争いを止めるのならば毎日がクリスマスだったらいいのになあ

101
ドレミファが空に逃げていきました捜してくださいソラシドエア

102
持っているカードの中でいちばんの優しいやつをあなたにあげる

103
もうちょっともうちょっとって言いながら気付けば生きて気付けば幸せ

104
終点に着いた電車が折り返し来たときと違う風景になる

105
断捨離で別れることになる本がありがとうと言う箱の中から

106
冬眠をするタイプだったらきっとまだ指の温度に気付かなかった

107
無作為に取ったみかんに葉っぱついていたから今年は大丈夫

108
どうでもいいことじゃないので泣いている明日は晴れの予報なので

109
一日のすべてを味わい力尽く君の寝息に合わせて眠る

110
ゆっくりと落ちる葉っぱが人生を振り返り今、カピバラの上

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