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毎日超短話160「一歩」

恋人と別れた帰り道、誕生日にもらったネックレスを、泣きながら川に投げ入れた。涙とともに放物線を描いたそれは、スローモーションになり、思い出が次々と川の水に映し出された。まるで映画のようなそれを見ていると、自らも川に身を投げ入れたくなる。足が背伸びをしていることに気が付いたとき、ネックレスがカルガモの首にかかった。

せんぶ、水に流せよ。

カルガモはそう言った。
背伸びの足が地について、一歩、また一歩と前へと向かっていた。

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