読書の記録 #8『植民地のあとに残ったもの』
“あの大佐は変態だ。まるでここがすべて自分のものであるかのようにああだこうだと偉そうな口を利きながらホテルのなかを歩き回り、齢五十をとうに過ぎた老年にしては目の前に女性がいると襲いかかる方法を考えずにはいられないのだ。”
野蛮でグロテスクで強烈な書き出しから始まるその物語は、ページにすればたかだか15頁を経て、こんなにも切なく幻想的で、美しい一節で幕を閉じる。
“彼は手すりに身をのり出し手を振って別れを告げていた。しかしあの距離で逆光とあっては、その別れが私に向けられてい