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シーズンスポーツのトレーニングにおいて、週末vs半年後をどう考え実施するか

本日の現場からは、
【シーズンスポーツのトレーニングにおいて、週末vs半年後をどう考え実施するか】と題してお話します。
 
S&Cといったストレングスやコンディショニングを担う専門家にとって、トレーニングプログラムを作ることはメインの仕事の一つです。
 
それらについて知識を有している訳なので、作成できて当然と言えば当然だし、ピリオダイゼーションに応じて作成するので、簡単に出来そうなイメージはありますが、実際に現場でメニューを処方し、選手に実施してもらうのはそう簡単でもない部分もあると感じています。

社会人野球や高校野球のように、年に2回ほど大きな大会がありそこで結果を求められるスポーツであれば比較的調整しやすいと思いますが、約8ヶ月ほどの長いシーズンを戦うプロ野球やBリーグではココといポイントがなく、シーズンを通して安定的にパフォーマンスを発揮する(コンディションの波を出来るだけ小さくする)ことが求められます。

そういった事を踏まえてトレーニングプログラムを作成すると、週末に試合があるのにこんなトレーニングをするんですか!?と選手から声が上がることもあるかもしれません。
 
そんな現場のリアルな部分について、押えておきたい事柄と私の考えを書きたいと思います。
 
この記事を読み進めていくと、表題の答えが見つかる訳ではありませんが、答えを考えるヒントにはなると思います。
特に、目次の最後のテーマは大切だと思っています。


【トレーニングの原理原則】


トレーニングには3つの原理と5つの原則があります。
これは大昔から言われていることで、今でも変わらず大切な考え方とされています。
まずは、この3つの原理と5つの原則について簡単に説明します。
 


過負荷の原理:ある程度の負荷(過負荷)を体に与えなければ、効果が得られ難くなる
可逆性の原理:トレーニングを中断すると、得た効果が失われていく
特異性の原理:トレーニングの種類や内容に応じた効果が得られる
 

トレーニングの原理


全面性の原則:特定の部位や体力要素だけでなく、全体全面的に負荷を与える
漸進性の原則:いつまでも同じ負荷ではなく、体力の向上に伴って負荷を徐々に上げていく
反復性の原則:継続して行うことで、効果が現れ、テクニックも向上していく
個別性の原則:個々の身体的特徴など様々な変数を考慮する
意識性の原則:トレーニングの意味や目的を理解して取り組むことで効果が現れやすい

トレーニングの原則

【トレーニングによる適応】


人間の体には〝適応〟と言われる反応があります。
 
適応とは、生活している環境などに体が慣れてくることを言います。
熱中症対策として大切と言われる暑熱順化は有名な適応の一つです。
 
ランニングが苦手で2km走るのがやっとの人でも、ランニングを続けていると、次第に体力が向上し2kmを以前よりも楽に走れるようになります。
簡単に言うと、これをトレーニングによる適応と言います。
(慣れ≒体力の向上)
 
このトレーニングによる適応には2つの側面があります。
 

トレーニングの初期はキツいが、継続的に実施することで、徐々に初期のキツさはなく実施できるようになる。(フォームの習得やコツを掴む、神経伝達の影響が大きい)

1つ目

継続して実施していると、あるタイミングからは体に対して負荷が足りなくなってきます。(体力の向上よる影響が大きい)

2つ目

2つ目の適応時に同じ負荷をかけても、それ以上の体力の向上はそれほど期待出来ません。(漸進性の原則)

トレーニングメニューを処方する際は、この2つの適応を理解しておくことが必要です。
 
適応というのは人間が備えているとても大切な能力の一つです。
その能力を理解し、適切なタイミングで適切な負荷をかけていくことが重要です。

【フィットネス-疲労理論】


これまで?は、疲労などを考える上で〝超回復理論〟という考え方が主流だったと思いますが、数年前からは〝フィットネス-疲労理論〟という考え方が専門家の中では主流となっています。
 

筋(筋力)のみにフォーカスした理論で、トレーニングで筋に負荷が加わると、筋繊維がダメージを受けて一時的に筋力が低下し、48-72時間程度で修復され、回復期が終わると以前より少し強くなっているという考え方

超回復理論

その名の通り、フィットネス(≒体力)と疲労の二つの要素を考慮した理論で、トレーニングをすると、
①体力が向上する(プラス要素)
②疲労が溜まる(マイナス要素)
の2つの相反する反応が起こります。実感としては容易にイメージ出来ると思います。
このプラスとマイナスの合計によって、その時点での発揮可能な体力レベルが決まるという考え方

フィットネスー疲労理論

今起きているコンディション不良は、単に疲労によるものなのか?それとも、フィットネスレベルが不足しているからなのか?これまでのワークロードはどうか?
 
様々な要素を考えると、ただ闇雲にトレーニングの量や頻度を減らすだけではなくなってきます。
 
シーズンスポーツでコンディションの維持、体力の向上を行う上ではフィットネスー疲労理論をベースに考えるとヒントが多いと思っています。

【高重量を扱う事のメリット/デメリット】


トレーニングの目的や時期、習熟度にもよりますが、高重量のトレーニングは筋力を向上させる上では大切だと考えています。(漸進性の原則)
 
漸進的に負荷をかけることができるし〝サイズの原理〟の例外である高閾値の運動単位を動員することができます。
 

筋力発揮の際に小さな運動単位から動員され、必要とされる筋力の大きさに伴ってより大きな運動単位が動員されること

サイズの原理

しかし、一方で高重量を扱う際のデメリットも考慮しておく必要があります。
 
最もよくみられるのはフォームの崩れです。

筋力の向上を目的にトレーニングを行なっている場合は、狙っている筋に対して適切に負荷を与える必要があります。
しかし、高重量を待つことにより、フォームが崩れてしまうと、狙っている筋に対して想定している負荷がかからなくなります。
 
そして、その分他の想定していない部位に負荷がかかってしまいます。
この場合、怪我のリスクが増えてしまいます。
 
重さを指標して進める場合は当然ながら重さに対する意識は持って欲しいものの、選手が重さに対して過剰に意識してしまうと、フォームの崩れや行き過ぎた過負荷になってしまうので、その辺りは専門家が適切に指導、監督する必要があります。

【実際に選手とどう向き合うか】

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