お互いに緩やかに繋がって_ヘッダー画像_

【連載】お互いに緩やかに繋がって 第34回

 打ち上げはいつもの形相のまま、ほとんど流れるようにして解散していった。誰かが終わりの音頭を取ることもなく、かといって、勝手に帰ってしまう人がいた訳でもなく、私たちはただなんとなく、夜が深まったことによる帰省本能が働いたかのように、各々がその場から立ち去ろうとした。中にはカラオケに行く人や、ボーリングに行く人もいるようだったけど、私は家に帰ることにした。
「えー美由紀ちゃん行かないの?」
と仲の良かった友達は言ってくれたけど、「うん、なんだかちょっと疲れちゃって」とだけ言って、静かにその場からフェードアウトした。
 夜の道は少し不安でもあったけれど、考えてみればまだそんなに遅い時間でもなかった。ただなんというか、毎日当たり前に会っていた人たちと、今後”何かしらの事情”と作らないと会えないというのは、少し寂しくも思えた。そしてその寂しさが、不安を助長しているようにも思えた。
 こうして一人で帰っていると、やたらと高校の時の思い出が頭の中に過ってきたりして、”大した思い出もない”と思っていた高校生活も、今となってみればかけがえのないものだったりして、と、人間の心というものは随分と調子よく出来ているのだと、ふと関心する。
「よっ」
自転車を漕いでいた私の隣に並走するように、自転車が付いた。一瞬ドキリと心臓を鳴らしたけれど、それが斗真だと知ってふーっと大きなため息が漏れた。
「なんだ、斗真か」
彼は私の顔を見て、にっこりと笑った。私はずっと思っているのだけど、彼は笑顔があまり似合う方ではない。

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