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創作に対する妄想力(その5)

第5章 花ひらく妄想力

以上がデザインの全て……と、思われるかもしれませんが最後にもう一つ、欠かせない要素があります。
それが、製造工程を知りどのように作るかまでイメージすること。
デザインをするということはモノを作るということです。実際に作る工程を分かっていると製造現場とも非常に現実的な会話ができます。今は製作現場が動画で見られる時代なので、自動車製造から伝統工芸まで幅広く見ています。分野が違う現場は面白いですし、非常に為になる情報がたくさん潜んでいます。

よく目にするものでも、実際どうやって作っているのか知らない事って多いのではないでしょうか。
例えば金属加工の「ヘラ絞り」。名前すらご存じの方は少ないのではないでしょうか。この加工法を初めて知ったときは正直びっくりしました。平らな板から立体になるまでの工程はついつい見入ってしまいます。
または、「成形合板」。薄くスライスした木材を一枚ずつ重ねて接着し、熱を加えながら型にはめ曲面状に形作った木工技術のことを言います。主に椅子に用いられる技術で、ゆがみや反りが出にくい製造方法です。
このように、物性、生産性、製造方法などの特徴を頭に入れておくだけでいろんなひらめきに繋がります。

“デザイン”と聞くと華やかで楽しい感じがするかもしれませんが、実際にはこれまでに述べてきたように、案外、地道なことの繰り返しと積み重ねばかりです。それでも、見たことのないものにワクワクし、新しいものを生み出すことが好きだからこそ、今でも変わらずにコツコツ続けていられていますし、アイデアが尽きないのだと感じています。分析し収集しアウトプットを繰り返すことで作り上げた引き出しの中の情報は、単なる思い付きの軽々しいものではありません。自信をもって相手に提案できる武器なのです。自分はこれまでに、取引先からさまざまな相談を受けてきましたが、ほとんど持ち帰ることなくその場で提案し、次のステップに移ることができてきました。お互いの時間を短縮し、コストを圧縮できるだけでなく、相談相手も上司に良い報告ができると喜んでくれるので良いことばかりです。以上にお話ししたことは、デザイン以外にも当てはめることができます。インプットから得た知識とアウトプットを通じた経験に基づく妄想は、現実における様々なことを良い方向へ変化させる可能性を持っています。豊富な知識と個性的な発想力。それが妄想という名で花開くとき、何気ない日常に彩りを添えてくれるのかもしれません。

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