見出し画像

近畿大学附属高校教諭によるオールイングリッシュ授業攻略セミナー備忘録(2)

さて、前回のブログでお話しした、前任校の同僚である大川稔和先生と古川英明先生のセミナーを受講した話の続きです。

現任校の先生が見つけてきたのがきっかけで昨日(2022年12月10日)受講しました。採点業務の傍らでメモを取っていたので、おかしいところがあればご指摘くださいね。

第三部:StagingとICQsとCCQsのワークショップ

ここから先は、モデレータの女性や視聴中の先生たちを巻き込んでのワークショップ形式。オンライン講座では結構とうとうと話す人がいらっしゃるのですが、それでActive Learningとか言われても説得力がありません。さすが、こういう研修をやり慣れておられるんだろうなあと感心しました。

Reading授業の流れ<Lead-in>

まず、講師が授業を始める2つのパターンを熱演されました。一つはとうとうと先生が語るパターン。もう一つは直感的に答えやすそうな問いを多くするパターン。どちらがいいか、なぜかを問います。

もちろん後者ですよね。問いを中心とした良い例を示したとのことでした。ここでのキーワードは'Elicit'です。つまり、生徒の知識からどれだけ引き出し、関心を持たせることができるかということ。Lead-inでは「本文に触れる」ことや、ともすれば盛り上がるからと「授業にはあまり関係ないが、とにかく生徒を楽しませる」活動をする例を私もよく目にしてきました。でも大事なのは「生徒の興味を引き出し、もっと知りたいという興味・関心を引き出す」とのこと。引き出すという技術は問いの質なので、ここを強化し、学習内容を間接的に引き出すことが大切だそうです。

さて、この授業のテーマは"A war against waste"です。写真を使って、短い問いを連発しながらのLead-inは印象的でした。

Reading授業の流れ<Staging: Pre-reading>

次にJamboardを使ってブレインストーミングです。問いは

Q:この後に、どのような授業の流れを作りますか?
What words can you imagine from the word, 'Recycling'?

古川先生の問い

ジャムボードにはたくさんの例が挙がり、一時はパンク寸前に。150人ほどの参加者があったということで、アツイ!その後、8つの実例を教えていただきました。さらに、それらをどのような順序にすると効果的かということも。なかなか面白かったので、書いてみます。

1)3人グループで'recycling'についてdiscussion:生徒一人一人のリサイクルについての感情や考えを引き出す
2)生徒たちの意見を聞く:理由や考えをより深く引き出し、全体に共有する
3)生徒たちの意見をホワイトボードで共有する:生徒たちの考えを可視化する
4)扱うトピックを伝える:テキストへの興味・関心を持たせる
5)タイトルからテキストの内容を推測する:予めイメージさせることで、よりテキストへの関心が高まる効果を期待
6)タイトルからテキストのタイプを推測する:上と同じ
7)テキストに出てくる語彙を教える:より理解しやすい仕掛けを作る
8)テキストの全体像を捉えるため本文を読む:自分の推測があっているかを確かめる

より広いところからテキストという狭いところに目を向けさせるというお話で、なるほどですね!

次にVocabularyの指導で、写真と文字で8つの単語がスライドに示されていました。ここも教師からの問いかけで、Meaning, Form, Pronunciationの確認です。特に印象に残ったのは'war'という単語。これを、"Scary or not scary?"と問うておられました。

・生徒がこれから何をするか分かっているかが上
・生徒が学習する概念を理解しているかの質問が下
減らしたいのはTTT = Teacher Talk timeであり、良いのはSSC = Simple Short Conciseな問い。長ったらしい質問にしないことがポイントで、“Scary or not scary?”で十分だという説明に納得です。

Reading授業の流れ<While-Reading Activities>

鍵となるのは
Skimming:どんな内容なのか概要を掴む(例えばHeadingsと各段落をマッチ)
Scanning:予測できる事柄について短時間で情報を掴む(例えばEarthshipとは何かを見つける、どんな材料でできている家なのかを探す)
Reading for detail:主要なポイントを詳細に理解する(文をいくつか抜いておき、どこに入るか考えさせる、Q&Aを作成させる)

実際に幾つかの事例を挙げてSkimmingなのかScanningなのかを聞いておられました。江藤も以前京都聖母学院でUncoverを使っていたので、この感覚はすごく分かります。懐かしい!Reading for detailsに関して、空所補充や選択肢、True/ False /No informationに変えるなどの'Scaffolding'によって、徐々にフルセンテンスでできるようサポートしていくとのことです。

自分に必要な情報を掴んでくるのがScanningで、じっくりと読んでいかないといけない情報を見つけるのであればReading for detailであり、そこには信条、主張なども含むというお話でした。While-Reading Activitiesを通して、生徒がどれくらい理解して読めているかを確認し、ひいてはActive Readers、つまり誰かに読まされるのではなく自発的に読む人を育成するというのは非常に納得が行きました。

Reading授業の流れ<Post-Reading Activities>

今受け持ったレベルのニーズやレベルを踏まえた時に、他に合う活動があるとすれば何ができるを考えます。ここではBloomのDigital Taxonomi Verbsについて触れておられました。このサイトにうまくまとまっています。

Bloomのタキソノミーは何と1956年のものですが、英語教育学ではAccuracyからFluencyへという観点になっています。いかに生徒がコンテンツやトピックを自分ごとにできるかにかかっているます。最近ではICT利用に絡めてよく話題に上がっていますね!

Post-Readingとしては、Creativityをくすぐるような問いとして"What would your ideal Earthship look like? Draw a picture and tell your partner about it."が紹介されました。また、実際にゴミや廃材を使って行えば教科横断型にもなるとのこと、どのような実践をされているのか非常に気になるところですね。

また、テキストタイプによってもやり方は変えるとのことで、いろんな人の意見が述べられているテキストならDiscussion、データに基づく数字が多ければA summarizing activity / table graph completion activityが良いとのことです。また、AccuracyベースよりもFluencyベースの方がよいというのも同感です。日本の教育では正確さが求められ、本文と全く同じ綴りや内容で答えることが多いのですが、思考を育てるのであればFluencyベースにするというのはもっと広まって欲しいです。

Reading-Stagingのまとめ

さて、あまりにも長くなってしまったのでここはサクッと。
Lead-inでは生徒の興味関心を引き出し、もっと知りたい!と思わせる
Pre-Readingではトピックに興味を持たせ、背景知識経験を引き出し、内容を推測させる
While-Readingではどれくらい理解して読めているか、そしてActive readersを育てる
Post-Readingではアウトプットをさせ、より深くテキストを理解させ、最終的に自分ごとにさせる

なんとこのメソッドを使っている授業を近大付属高校では英語特化コースから50クラスまで増やせたということです。私も同僚と見学に行こうと思います。

教員のマインドセットはCTT

CTTとはCollaborative Teaching Teamだそうです。学び続ける教員を巻き込むことの大切さを語っておられました。また、好きな言葉として、恩師の「学び続ける者にのみ、教える価値がある」を紹介されていました。少し厳しいのかなと思いましたが、学び続けることは大事な心がけだと思います。

さいごに

自分が退職してから、あまり顔は出していないのですが、実は今週近大付属高校の研修に若手二人と参加の予定をしています。今回はIBということで近大付属の先生のお話は残念ながら聞くことができないようですが、久しぶりに元同僚たちに会うのが楽しみです。またどんな様子だったかお知らせしようと思います!

いただいたサポートで参加者がハッピーになる仕掛けを増やします^^