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兵は水のように

皆さまこんばんは、弓削彼方です。
今回は「兵は水のように」と言うお話です。
これは兵の運用を水に例えたもので、兵法では非常に重要な考え方になりますので、詳しく解説していきます。

時間の暇を見つけて、ぜひ分かりやすい解説動画もご覧ください。


原文と訳文を見て行きましょう。

原文
「夫れ兵の形は水に象る。
 水の形は高きを避けて下きに趨く。兵の形は実を避けて虚を撃つ」

現代語訳
軍の態勢とは水のようなものである
 水は高い所を避けて低い方に流れて行く。軍の態勢も、敵の充実している所を避けて虚を衝くのである」

訳文をそのまま解説すると、軍の態勢とその動きは、水と同じように決まった形を持たず、動きも柔軟であった方が良いと言うことです。
軍を指揮する時は、敵の態勢に応じて柔軟に味方の態勢を変える必要があります。
この水が入れ物に合わせて自由に形を変えるを理想とし、軍もその様にあるべきだと言うことです。
また水は、必ず高い所から低い所に流れて行きます。
これは不変の法則であり、例外と言うものはありません。
それと同じように、軍も戦いの時には必ず敵の実の部分を避けて、敵の虚の部分を攻めるようにします。
水が必ず高い所を避けて流れるように、軍の動きも必ず敵の実の部分を避けて動くべきだと言うことです。
このように、水とは軍の理想とする柔軟性と法則を持っています。
一軍を指揮する者であれば、この水の動きを理想として兵を動かすべきだと言うことを言っているのです。

もう一つ、水には面白い特性があります。
川の流れを見て貰えば分かりますが、普段は水がスムーズに流れていて落ち着いています。
しかし水量の少ない小さな川でも、上流で一度せき止めて、その後に堰を切って一気に流すとどうなるでしょうか?
普段の静かな流れとは違い、大量の水が一気に押し寄せて土を削り、周辺の物を押し流し、大木でさえも漂うほどの激しい流れとなります。
軍と言うものも普段は整然としていても、水をせき止めるのと同じように力を溜めさせ、ある時に一気にその力を解放させれば、敵の陣地を破壊し、敵軍を押し流す激流と化します
軍の指揮する時は、このような水の性質を真似るべきなのです。

このような水の柔軟性、水の流れる法則、そして水の勢い、これらを軍の運用に重ね合わせて、「軍は水のようにあるべきだ」と言われるのです
これは軍を運用する上での当然の前提です。
今後兵法を学んでいく上では、この考え方が常について回ると言うこと心の片隅に置いて下さい。

本日の解説はここまでです。
非常に抽象的な内容で分かりにくかったと思いますが、兵法の本質とは微妙なものを理解して、それを使いこなすことです。
この言葉では言い表せない、機微と言うものを少しずつ理解して行けば、兵法の本質に辿り着くことができるでしょう
それではまた、次回の講義でお会い致しましょう。

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