弓削彼方

兵法の専門家である軍師の弓削彼方です。戦を無くす為には、戦の事を知って貰う必要がある。…

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兵法の専門家である軍師の弓削彼方です。戦を無くす為には、戦の事を知って貰う必要がある。 その想いで兵法を解説する「兵法講座」の動画投稿を中心に、兵法・軍事の知識を広める活動をしています。

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三略講釈【中略-1】

皆さまこんばんは、軍師の弓削彼方です。 ここからは中略編の講釈を進めて参ります。 中略は上略と少し毛色が違いますが、まずは読み進めてみてください。 本文現代語訳 「三皇が治めていた時代には、わざわざ命令を出したり法令を作らなくても、彼らの人徳は天下に広まった。だから人々は、それが誰の功績であるかを知る者は居なかった。  次の五帝の時代には、天や地の自然の道理に則り、命令を出したり法令を整えたので、天下は治まっていた。君主と臣下はお互いに功績を譲り合い、その徳は天下に広まっ

    • 三略講釈【上略-24】

      皆さまこんばんは、軍師の弓削彼方です。 今回が上略編の最後となります。 本文現代語訳 「軍讖には、『腹黒い者達がお互いに褒め合って、主君の目をくらまそうとする。また、必要以上に他人を貶めたり褒めたたえたりして、主君の耳を塞ごうとする。自分に都合のいいことだけを報告して気に入られ、心から忠誠を誓う者を主君から遠ざけようとする。そこで君主が、彼らの意見がおかしいと言うことに気付けば、腹黒い者達の企みを暴くことができる。そして清廉潔癖な賢者を登用すれば、腹黒い者達は自然と居なく

      • 三略講釈【上略-23】

        皆さまこんばんは、軍師の弓削彼方です。 三略の解説を進めていきます。 本文現代語訳 「軍讖には、『口だけは上手い無能な家臣が高い地位に居れば、全軍が不満を訴えるようになる。そのような者は、君主の威光を借りて勝手な振る舞いをするくせに、実際には兵士と一緒に行動をしない。戦場でも進むわけでも退くわけでもなく、一時しのぎの策でごまかそうとする。そのくせに自己評価だけは高く、小さな手柄を一つ立てれば大手柄を立てたかのように誇る。立派な人物を誹謗中傷し、凡庸な人物を引き立てる。善悪

        • 三略講釈【上略-22】

          皆さまこんばんは、軍師の弓削彼方です。 上略編の解説も間もなく終わりますので、もうひと踏ん張りお願いします。 本文現代語訳 「軍讖には、『世の中には悪事を企んで、県の役人を押しのけて権力を奪う者が居る。そして何かをするたびに賄賂を要求し、法律を自分の都合がいいように解釈して好き勝手をする。このような者は君主の身に危険を及ぼす。これを国賊と言うのである』と書かれている。  軍讖の中には『役人が多いわりに民衆が少なく、尊い者と卑しい者の区別がはっきりしない。強者と弱者がお互い

        三略講釈【中略-1】

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          三略講釈【上略-21】

          皆さまこんばんは、軍師の弓削彼方です。 ここからは、君主の下で働く家臣や役人についての話になります。 本文現代語訳 「軍讖の中に、『上の者が暴虐であれば、下の者は疲弊してしまう。税金が重く、しかも何度も取り立てられ、刑罰が厳し過ぎるほど適用されれば、民衆は道理を失い互いに奪い合うようになる。このような状態を亡国と言うのである』と書かれている。  軍讖には、『貪欲と言える醜さを内に秘めながら外からは清廉潔白に見え、ありもしない名誉を作り上げて名声を得る者が居る。公費での仕事

          三略講釈【上略-21】

          三略講釈【上略-20】

          皆さまこんばんは、軍師の弓削彼方です。 少し飽きてくる頃かもしれませんが、頑張って学んでいきましょう。 本文現代語訳 「軍讖には、『軍を動かすときには、まずは必ず敵の内情を調べ、特に倉庫をよく確認せよ。倉庫の食料の備蓄具合を調べて、敵が強いか弱いかを判断せよ。敵地の天候や地形を調べて、相手の隙がある場所を狙え』と書かれている。  もし敵国が戦争中でもないのに、食料を運び込んでいるようなら、その国は食料不足なのである。民衆の顔色が悪いのなら、これもまた食料不足の証拠である。

          三略講釈【上略-20】

          三略講釈【上略-19】

          皆さまこんばんは、軍師の弓削彼方です。 今回も軍讖からの引用の話です。 本文現代語訳 「軍讖には、『軍に資金がなければ、人材は集まらない。軍に褒賞が無ければ、人材はやって来ない』と書かれている。また軍讖には、『美味い餌の所には、必ず魚が集まって来る。十分な恩賞のある所には、必ず勇敢な兵士が集まる』と書かれている。そこで礼を尽くせば優秀な人材が集まり、十分な恩賞があれば命を懸けて働く人材が集まる。だから礼を尽くして招いて、十分な恩賞を約束すれば、求めている人材が集まるのであ

          三略講釈【上略-19】

          三略講釈【上略-18】

          皆さまこんばんは、軍師の弓削彼方です。 今回は少し長めの内容ですが、早速講釈を進めていきましょう。 本文現代語訳 「軍讖には、『将軍の戦争計画は機密事項として、外部に漏れないようにしなければならない。将兵の心は一つにまとまるようにしなければならない。敵を攻めるときには、疾風のように素早く行動しなければならない』と書かれている。  将軍の計画が外部に漏れなければ、その情報を手土産にして敵に寝返ろうとする者は居なくなる。将兵の心が一つにまとまっていれば、全軍の団結力はより強く

          三略講釈【上略-18】

          三略講釈【上略-17】

          皆さまこんばんは、軍師の弓削彼方です。 続きの講釈を進めてまいりましょう。 本文現代語訳 「そこで、『賢者の智謀、聖人の思慮、民衆の言葉、政治的な意向と、歴史的な国の興亡の原理については、将軍はよくよく耳を傾けなければいけない。将軍が兵士のことを、喉が渇いた者が水を切望するように必死に思ってやれば、兵士も将軍の策に従うであろう』と言われるのである。  将軍が諫言を拒むようであれば、英雄と呼ばれるほどの人材も逃げて行ってしまう。せっかく良い策を考えてもそれが取り入れられなけ

          三略講釈【上略-17】

          三略講釈【上略-16】

          皆さまこんばんは、軍師の弓削彼方です。 今回も三略を学んでいきましょう。 本文現代語訳 「軍讖の中には、『将軍は清廉潔白で何事にも冷静であり、公平であって私心を持ってはならない。人からの注意を素直に受け入れ、部下からの提案には耳を傾けなければならない。優秀な人材の登用に力を入れ、彼らの意見を取り入れなければならない。その国の風俗を理解し、山や川などの地形を把握しなければならない。そして地の利を活用し、軍権をしっかりと握るのである』と書かれている」 解説 将軍たる者の心

          三略講釈【上略-16】

          三略講釈【上略-15】

          皆さまこんばんは、軍師の弓削彼方です。 三略の講釈を進めていきます。 本文現代語訳 「軍讖には、『賢者が進む所に、その行く手を遮る敵は居ない』と書かれている。それ故に、君主であっても将軍に任じた賢者に対しては、驕ることなく謙虚に接しなければならない。将軍が仕事に専念できるようにして、不安な気持ちにさせてはならない。将軍が立てた作戦は慎重に検討はするが、その成功を疑ってはいけない。  もし君主が将軍に驕った態度で接すれば、部下達も将軍に従わなくなる。そんな状態で将軍が不安な

          三略講釈【上略-15】

          三略講釈【上略-14】

          皆さまこんばんは、軍師の弓削彼方です。 まだまだ先は長いので、どんどん講釈を進めていきます。 本文現代語訳 「軍讖には、『名将が一軍を統率する時は、まずは自分が思いやりを持って人と接する』と書かれている。思いやりをもって兵士に恩恵を与えてやれば、兵士の士気は日に日に高まっていく。その状態で戦えば、疾風のように動き、敵を攻めるときは決壊した河の水のような勢いで襲い掛かる。だから敵はあえて戦おうとせず、実際に戦闘になることもないだろう。敵は降伏するしかなく、勝とうとすら思わな

          三略講釈【上略-14】

          三略講釈【上略-13】

          皆さまこんばんは、軍師の弓削彼方です。 今回は少し長めの話になります。 本文現代語訳 「一軍を統率してその勢いを保つのが将軍の役目であり、敵を打ち破り勝利を得るのは兵士の役目である。だからこそ、乱暴な者を将軍にして一軍を任せてはいけないし、統率の取れていない兵士を敵と戦わせてはいけないのである。城を攻めたのに落とすことができず、村を包囲しても奪い取ることができない。どちらでも結果が出なければ、兵士は疲れるだけで士気が低下してしまう。兵士が疲れて士気が下がれば将軍は孤立して

          三略講釈【上略-13】

          一度出した命令は変更してはいけないのか?

          皆さまこんばんは、軍師の弓削彼方です。 今回は先の三略講釈【上略-12】でお話しした、「一度出した命令は変更してはいけないのか?」と言う疑問に対して、少し考えてみたいと思います。 三略講釈【上略-12】 皆さまは軍事の専門家ではないので、話を単純にして考えていきましょう。 「明日はあそこに見える敵と決戦である。敵の数は我が軍の半数ほどであるから、左翼と中央は前進して正面から敵を攻撃し、右翼は敵の背後に回るように移動してから攻撃せよ」と言う命令が出されたとします。 左翼と

          一度出した命令は変更してはいけないのか?

          三略講釈【上略-12】

          皆さまこんばんは、軍師の弓削彼方です。 今回も進めてまいりましょう。 本文現代語訳 「軍讖には、『将軍が威厳を保つことができるのは、号令が的確だからである。戦いに毎回勝利するのは、軍隊の組織管理が適切だからである。兵士が戦いを恐れないのは、命令が正しいと信じるからである』とある。だからこそ将軍は、簡単に命令を取り消すようなことはせず、賞罰の取り決めは必ず天と地の巡りのように公正に行い、誰もがその結果を信頼できるようにしてから将兵を扱うのである。  そうすることで兵士達に命

          三略講釈【上略-12】

          三略講釈【上略-11】

          皆さまこんばんは、軍師の弓削彼方です。 今回は前回の話と特に繋がりがある内容となります。 本文現代語訳 「軍讖の中に、『まだ井戸から水が出ていないのなら、将軍は喉が渇いたと言ってはならない。まだ天幕が張り終わらず休憩場所が出来ていないなら、将軍は疲れたと言ってはならない。まだ食事の用意が整っていないなら、将軍は腹が空いたと言ってはならない。冬でも外套は身に付けず、夏でも扇を使うようなことはせず、雨が降っていても傘をさしたりしない。これが将軍の弁えるべき礼儀である』と書かれ

          三略講釈【上略-11】