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362: 心の中でリフレインするあの日の空の雲の色

森の奥深く
あなたが知っている
あるいは知らない場所にある色屋の話。

空を見上げると、夕暮れの光に染まる雲が
色鮮やかに浮かんでいた。
あの空の色を描くのを得意としていた
画家がいたよな…そう思い出しながら
家路を進む俺。

学生時代に行ったあの展覧会…
夕暮れ、あるいは朝焼けの雲が,
日の光を浴びて赤や薄桃色、橙に染まるのに
気付かされた絵だったんだよな…
雲が染まっているのを見ていたはずなのに、
雲は白やグレーだろうと決めてかかっていた。
それを、夕暮れに進む鮮やかな藍色の空に
橙に染まった雲を描き込んでいたあの絵を見て、ハッと目が覚めたような気がしたんだった。

今日の空の雲も美しく染まっている。
あの空を超えた先に桃源郷があると言われても
納得する。そんな色だ。
真っ赤な縁取りから始まり、徐々に橙、
薄黄色に変化し、ある部分は薄桃色に、
その影の部分は柔らかいグレーに、
それぞれの色で雲の形を縁取っている。

何度今日のような雲を見るとあの絵が浮かび、
何度も桃源郷の存在を考え、
いつかあの色を捕まえようと思う。

…そんなあの日の色が詰まった瓶が、
色屋の棚にひっそりと置かれています。

あなたもあの日の色が欲しいならば、
色屋を訪れてみてください。
きっと置いてあるはずです。
あなたの訪れを待って…



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