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雨の日のカエルはむぴょこぴょこ

雨が降り続けて午後になると、カエルの鳴き声が合唱になった。

「なんで、雨が降るとカエルは鳴くんだろうね〜?」

そんなの当たり前だ。
田んぼに水が張られる季節になれば、雨が降るとカエルの合唱が始まる。
日が暮れてきてもケロケロと、合唱が始まる。
…と、思った。

アレ?
当たり前?

返事をするのも忘れて頭の中でクエスチョンマークがいっぱいになった。

頭の中の地図を早回しで辿ってみる。
グルグル、グルグル。
半径5キロ、田んぼも畑もない。
家庭菜園の畑くらいありそうだけど、土地代が高くて、家庭菜園ができる庭付きの家なんかそんなになさそうだ。
公園だって近くにはない。

雨の日のカエルたちは、
一体どこで鳴いてるんだろう?

イメージの中の、
田んぼに張られた水に温泉みたいにつかりながら、
カエルがケロケロ鳴く場所なんかどこにもなかった。

コンクリートの割れ目に生えた草や、河原の草や、道路脇の植え込みや、
そんな小さな場所を確保しながら生きてるのかな?
なんか凄く窮屈だ。
そりゃあ、皮膚を潤す水がないから、雨が降ったら嬉しくて鳴いてしまうな。

あめ あめ 降れ 降れ

カエルを見たのはいつだろう?
全然、思いさせない。
オタマジャクシを見たのはいつだろう?
もっと思い出せない。

子供の時は、
田んぼでカエルの卵を取ってきて、水槽で育てたりした。
卵がオタマジャクシになって、手足が生えてきて、後は田んぼに返す。

田んぼでカエルの卵って、見たかな?

それより、近くに田んぼがない。

昔は
何に使われてるのかわからない原っぱで、草どうしを結んで罠を作って、
駆け回っているうちに、自分で作った罠に自分でハマって転んだり、
森の中に秘密基地を作って宝物をかくしたり、
川でザリガニを誰が一番取れるか競争したり…。

それらは全部、昔話になってしまった。

近くの田んぼも、
駆け回れる原っぱも、
秘密基地を作った森も、
ザリガニがいる川も、今はない。

近くの田んぼがなくなると、子供の時は、家の中にまで入って来て、
家の中で幻想的な光を放った蛍も消えた。
むせ返るほど、沢山いたのに。
あの時は、夏が来れば蛍は当たり前にやって来ると思っていた。

今は、雨が降ればカエルが鳴くけれど、
それは全く、当たり前ではなくて、
来年、カエルが鳴く声を聞くことはなくなるのかもしれない。

知らないうちに、
いろんなものが消えていた。
今は当たり前でも、
色んなものが簡単に消えていく。

雨が降れば、当たり前にカエルに鳴いてほしいな。

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雨の日をたのしく

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